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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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超真面目ホラー

暗い子

作者: 七宝

 こんな話を聞いた。


 職場の後輩のSさんが中学生の頃、クラスにいた子の話だ。


『ニキビっていうか(うみ)っていうか、そういうのだらけで⋯⋯』


 その子はまるでスポンジのような顔をしていて、顔中にあるその(あな)からはいつも白や黄色の汁が出ていた。


『かなり暗い子だったんですけど、クラスのマドンナのMちゃんと一緒にいることが多くて、みんな「なんでだろ」って話してたんです』


 なんでもMちゃんは学年一可愛く、成績も学年トップの常連だったそうだ。


『両親が学校の先生らしくて、98点でも叱られるって言ってましたね』


 そんな容姿端麗、成績優秀のMちゃんといつも一緒にいるその子は、「釣り合わない」としていつしか女子生徒たちからいじめを受けるようになった。


 暴力こそなかったが、机に落書きをしたり、物を隠したりという陰湿な嫌がらせがしばらく続いた。


 そんな中声を上げたのがMちゃんだった。

 Mちゃんは当時学級委員だったため、ホームルームでしばしば話す機会があったのだが、そのタイミングでその子についてのいじめを告発したのだ。


 その甲斐あっていじめはなくなり、いつも通りのクラスに戻った。


『でも、そんな平和もすぐに終わっちゃって』


 ある日、その子が左目に眼帯をつけてきた。


『今度は男子たちがその子をからかい始めたんです』


 その子に対して「腐女子」「中二病」「キモい」などの言葉を集団で投げかけたのだという。


『それで、1人の男子がその子の眼帯を無理やり取っちゃったんです』


 男子生徒数名で必死に目を覆うその子の手を無理やり引き剥がし、茶化すような言葉を吐きながら皆でその子の目を見た。


 全員が固まった。


『その子の目、白目も黒目も(あな)だらけだったんです』


 それからすぐに騒ぎが起きた。


『パニックになった1人の男子がその子を突き飛ばして怪我させちゃって、Mちゃんが保健室に連れていきました』


 恐怖からか、罪悪感からか、彼らは大人しくなったという。


『それから数日後のことなんですけど、宿題のプリントを教室に忘れちゃって、放課後に取りに行ったんです』


 Sさんが教室の前に着くと、中からなにやら声がした。

 扉の前で立ち止まって耳を澄ますと、「あっ⋯⋯」という吐息混じりの女の子の声が聞こえたという。


『もしかしてこの中で男女が!? ってドキドキしちゃって、少しだけ開けて覗いてみたんです。そしたら⋯⋯』


 Mちゃんとあの子がいた。

 なにをしているのか気になったSさんは、よく目を凝らして見てみた。


『Mちゃんが針みたいなのでその子の顔を刺してたんです。ぷす、ぷす、って、何度も刺したり抜いたりしてて。私、怖くなっちゃって、気づいたらプリントのことなんて忘れて走って逃げてました』


 Sさんがそれを見たのはその日だけで、年月が経つにつれて「夢だったのではないか」と思うこともあったそうだ。


『どうしてもその子の名前が思い出せないんですよね。3年に上がってすぐ転校しちゃったから卒業アルバムにも載ってなくて。だからこの前同窓会でMちゃんに会った時に聞いてみたんです。ずっと一緒にいた、仲の良かった子いたよねって。


Mちゃんは「いたよ」って言いました。やっぱり夢じゃなかったんだってちょっと安心して、次にその子の名前を聞いてみました。


そしたらMちゃん、「知らない」って言うんです。「気にしたこともない」って。Mちゃんからしたらその子はその程度の存在だったのかって、少し悲しくなっちゃいました』

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― 新着の感想 ―
 針治療? 素人がやっちゃダメでしょう。  で、結局は忘れてしまった。  まあ、過去なんてそんなものなのかも。人間は現在に生きるものですしね……。  ……酷い。
[良い点] Mちゃんはその子を捌け口や引き立て役のように利用していたのかもしれませんが… 名前すら憶えていないというのはあまりにも悲しいですね。
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