第零章 ー はじまり ー
ダークバトル物の連載にしようと思ったら頭だけでだいぶ長くなってしまったのとこれから本題ってところで切りが良くなってしまったので零章としました。
「消えてなくなれ。」
「絶対に、、お前らをっ、許さない!!!!!」
「誰かがやらなきゃいけないんだ。」
「俺が復讐してやる!!」
「あははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ーーー俺は...すべてを壊す...人間も、この世界も―――――
***
ドタドタドタッ!
「おっきろーーーー!」
「うっげぇ!!! なんだ!? 何が起きた!?!? ってまたお前か、照喜!」
「兄ちゃんが全然起きないからいけないんだよ〜!! ほら、早くご飯食べて、そんでゲームしよ!」
寝起きが最悪過ぎて朝食の気分でもゲームの気分でもないのだが、断れない。何故なら我が愚弟はすぐ泣いて、それはもうめんどくさいからだ。
「わかったよ。」
「よっしゃー! じゃあぼくは先に食べてるからね!早く来てよー?」
「おう。って、もういねえ。」
ゆっくりベットから身体を起こし窓の外を見る。もう4月末とはいえ桜が殆ど散ってしまっていてなんだか少し勿体ない。
スマホには無数の通知が溜まっているが見ない。見たところでいい気持ちにならないし、そもそも何もできやしない。
階段を降りて行くと違和感のある臭いが鼻腔を刺激する。
「そっか、今日の朝ごはん作ってるのって、」
「遅かったわね。ほら、アンタの分は私が作っといたよ。」
「やっぱりか〜。」
「ほら、これでもお姉ちゃん前より上手くなったでしょ?それに意外と美味しいわよ?」
そこには強引に卵焼きのような形に圧縮されたスクランブルエッグと凶器になりそうなほど鋭く固い茶色く焦げた分厚いベーコン、そしてトースト2枚。唯一の救いといえばこのトーストぐらいだ。
「父さんと母さんは?また職場で泊まり?」
「そうみたいね。ここ最近はなんだか忙しいみたい。折角私が料理作ってあげたのに!」
「いや、それは不幸中の幸いってやつだよ、まき姉ちゃん。」
我が愚弟の次はこの姉、橘花麻希である。歳は俺よりも2歳上の大学1年生で、最近の趣味というかブームが料理らしい。彼女曰く本気らしいのだがその事実が尚更恐ろしい。
「初、そういえば、あんた。高校でなんかあった?」
「え、、なんで、、、?」
「いや、なんか最近顔が暗いからさ。なんかあったのかと思って。」
「別に、、何も、ないよ。」
「そ。ならよかった。 じゃあさっさと食べて!照喜が待ってるよ。」
「う、うん。」
その時の姉の顔はいつもの笑顔とは少し違う感じがした。
「ごちそうさまでした!」
朝食を済ませ食器を洗いリビングで俺を待つ弟の元へ行き、20分ほどゲームを一緒にして学校へ向かった。弟の照喜が通う小学校とは方向が逆の為、両親が不在の時は姉に途中まで付き添ってもらっている。
「おはよう。初。」
「お、おう!おはよう、柊。」
校門近くで話しかけてきたのは、|轟柊。中学の頃から仲良くしてる男友達だ。
「どうしたんだよ、朝からそんなしょぼくれた顔して。こんなに空も晴れて清々しい朝だってのにもったいないよ。ほら、笑え〜!」
「いたっ痛いって! 分かったから、ごめん!ほら、笑ってるだろ?」
「よし。それでいい!!」
「柊って見かけに合わずたまに強引なとこあるよな。」
「そうかな。僕は至って普通だと思うけど?」
「ぱっと見、そんな実力行使するようなタイプじゃないじゃん、お前。どっちかっていうと、頭脳はというか。」
「そうかな〜。ん〜、そうかも!」
「ははは、どっちなんだよ!」
「あはは!」
「でもさ、世の中笑えないことの方が多いよ。柊だって知ってるじゃないか。」
「ああ。確かにあいつらのやってる事は度が過ぎている。でも、そんな時こそ笑って前を向いて行かなきゃだめなんだよ。それに、ぼくには秘策がある。まかせといて!
、、、もうみんなの曇った顔なんか見たくないから。」
「お、おう、、、。」
そう言って柊は早めに行ってやることがあると言って先に行ってしまった。いつもはテキトーな感じの柊だが、今日のあいつはどこか違う、何か覚悟を決めた目をしていたような気がした。
学校に着き自分のクラスへと向かうのだがその足取りが重い。恐る恐る教室のドアを開けると、やはりそうだった。今日の犠牲者は学級委員長の国枝さんだ。彼女の机は何か固い鈍器か何かでボコボコにされて転がっており、私物が廊下にまで撒き散らされている。そして当の本人は何もない自分の席だった場所にただ呆然と立ち尽くしていたのだった。
「ひでえ。」
「あそこまでしなくても。」
「おい、誰か拾ってやれよ。」
みんな口には出すが誰も動かない。何故なら、
「おーい。だぁれか、ここって机29しかねえよなぁ? なあ、おい!! 答えろやあっ!!」
ボコボコになった30個目である国枝の机を蹴りながら入って来た大男、風間隆。彼が怖くて動けないのだ。あいつを含めた4人組は入学当時から噂になっており、その悪行は日に日にエスカレートしていった。最初はカツアゲやパシリなどだったがいつからかクラスメートを無作為に1人選んでボコボコにするというゲームを始めた。選ばれた人間はクラスメイト全員に通知される。それが大体その前夜なのだ。
「はぁい、国枝ちゃん。今日もちゃんと全員出席してるよ〜。みんな偉いですね〜拍手拍手〜。」
その場にいるクラスメイト全員が急いで引きつった笑みを浮かべて拍手をするその光景はまさに地獄であり、それを作り上げた風間はまるで悪魔のように見えた。
これだけのことをして教師側が黙るわけがないと思っていたのだが、担任の佐々山は何もしようとはしない。敢えて何も見てないかのように振る舞う。それは他の教員たちもそうだ。どうやら風間率いる4人組は教員側にも何かしらの圧力をかけているらしく、頼みの綱だった生徒指導担当の教師は風間に返り討ちにされ今は入院中なのだ。このような理由でやつらはこの学校を実質支配しており、その代表格がうちのクラスメイト、風間隆なのだ。
そんな地獄絵図の中ホームルームが終わろうとする中、突然廊下から勢いよく教室に入ってくる影があった。
「すみません、遅くなりました!!」
轟柊だ。
「なんだ、轟ぃ。随分遅いご登場じゃねえの。今の今まで何してた?? え?! ほら、委員長がこんなに困ってるぞ〜!」
「や、やめ、やめてくだ、さい、、、。」
無理矢理頭を掴んで人形のように弄ぶ風間に満身創痍で抵抗しようとする国枝。俺も含めここにいる人間いや、多分世界中の人間でも誰も何もできないとそう思った時、
「その手を離すんだ、風間。」
「はあ?何わけわかんねえこといってんだよ、なあ、委員長?」
「分からないなら教えてやるよ。その手を離せと言ってるんだ、風間っ!!」
「ぐふぁっ!!!」
誰もが目を疑った。そこには床に倒れ伏した風間の姿と風間を殴り飛ばし国枝を介抱している轟柊の姿があった。
「うっ、うそ、だろ、、、。轟が、勝ったのか!?」
「マジかよ!!! すげええええええ!!!」
教室中が湧いた。それもそうだ。誰も出来なかった事を彼は成し遂げたのだ。
しかし、
「っ、轟ぃっ! てめえ、何したか分かってんだろうなああ?!」
一瞬で教室中のざわめきは止んだ。それほどまでにあの男の恐怖はみんなの脳裏にこべりついているのだ。
「ああ、分かってるさ。お前がやってはいけないことをしていたから僕が罰した。」
「へ、へへへ。へえ、罰したねえ。やっぱりお前分かってねえよ。一体っ!いつからっ!お前がっ!罰する立場になったんだよっ!!!!そんな奴はいねえ。 俺が絶対だ!!!」
「たしかに、そうだったかもね、今までは。でも今日からは違う!!」
「なに、、、」
「君が先生たちを強請ってるのは知ってた。しかも校長含め学校の運営に関わる人たちに不利になることだってのも調べてるうちに分かった。」
「お前どこでそれを、、。まあなんだっていい。ああ、そうだよ!ここを建てた時の金が実は黒い金でその返済が終わってねえから色んなとこから金集めてるって話だろ?!それがバレると人生が詰んじまうよなあ!はははっ!だから脅した。そしたら、すんなり俺の下僕になったっ!!笑っちまうよな、大の大人がこんなガキに人生掴まれてやんの!はははははっ!!!!あー、それで?その事実を知ったからどうだっていうんだよ?!」
「だから、僕がこの学校を買った。」
「....っ、は、はぁ?」
「だから、僕が買ったって言ったんだよ。返済額含めてね。」
「いやいや、待て、なにを、」
「僕の家は日本でも有数の財閥の家系だ。それで父に相談して金を動かしてもらったんだ。まあ、かなり強引な手ではあったが上手くいったよ。その契約書はここにある。」
「馬鹿な、そんなふざけたことあるわけねえ、、、。」
「あったんだよ。残念なことにね。さて次期に警察も来る。これで君の支配も終わりだ。」
「そ、そんな、俺はっ、俺の、ものっ、、、」
「今まで君たちに傷つけられた人たちに一生謝り続けろ!!!!」
「うおおおおおお!!!!轟!!!!!」
「ありがとう!!!轟くんっ!!!」
「マジすげえって!英雄だ!!!」
「ぐるじかったよ〜〜〜〜〜!!!!」
今度こそ教室中が歓喜の声で埋め尽くされた。喜んでその場でガッツポーズを取る者、泣き崩れる者。みんな形は違うが心の底から喜んでいた。
「柊!!お前、秘策ってこのことかよ!!ハンパねえな!!!」
「ああ、僕もだいぶ賭けに出た。なんたって財閥の金を動かすってことは日本経済に深刻なダメージを与えかねないって事だからね。父に何度説教されたことか。でもようやく重い腰を上げてくれた。今日まで動けなくて悪かった。」
「何言ってんだよ。確かに経済とかよく分かんないし危なそうな話だけど、みんなお前に救われたんだ!それは何にも変えがたい事実じゃねえか!!」
「そうだね。ありがとう。、、、はぁ、、、この日が来る事を何度願ったか。
初、今はちゃんと笑えてる?」
「あ、当たり前だろっ!!!」
笑ってるのか泣いてるのかよく分からないほどぐちゃぐちゃな顔で俺はそう答えた。
この歴史的快挙とも言える出来事はすぐに学校中に知れ渡り、それは轟柊という英雄が生まれた瞬間でもあった。首謀者である風間含めた4人はその後到着した警察に連行され、これでようやく本当の平和が訪れたかのように思われた。
しかし、その平和はほんの一瞬の出来事でしかなかったと当時の俺たちは誰も思ってもいなかった。これがこれから起こる惨劇の始まりであり、”本物の悪魔“が現代に君臨する話の始まりであり、それこそが、橘花初にとっての序章なのだということを。
これ実は3年前ぐらいに設定だけ考えてボツにして放置してたんですけど、なんか改めて読むと意外と面白くできそうな感じがしたので復刻させました。とりあえずラストまで書き切ります!