宇宙列車で逃げて
5つ目
二人は雨の中ホームにたどり着く。男女の二人組だ。
「やっとついた」
「間に合ったね。でも誰もいないね」
ホームに出るが人影一つ無い。宇宙列車だけが止まっていた。
「急ぐよ、敵がもうそこまできてる」
「うん、でも私たちしかたどりつかなかったのね」
悲しそうにつぶやく年下の少女。
世界は帝国にほぼ征服されてしまった。彼らの国の住人は人ではない。もう逃げ場は宇宙の果てにあるという最後の砦だけになった、彼らが入ってこれない空域があり、そこに最果ての砦というものがあるという。
行くには特別な列車に乗りチケットをもち宇宙へ旅立たねばならない。その列車があるのがこの場所なのだった。
出発の時間がきた。列車は宇宙へむかって旅だつ。しかし敵はホームの場所は知らなかったが浮上した列車に気づき向かってくる。
「やつらが追ってくるわ」
「いそいで、もっとスピードをあげるよ」
この列車は無人だ。二人がなんとか操作して動いていた。すごいスピードで宇宙の線路を走り抜ける。全力で最速で走りつづける。敵はもう見えない。どれだけ時間がたったのかわからなくなったあるときぽつりと年下の少女がつぶやく。
「ねえ?なんか線路を走ってないようなきがしない?」
「そんなわけないよ、それに今は全力で前へ」
「そうよね」
余裕のないふたりはそのまま全力ですすむ。宇宙のはてへ。
ある朝ホームに二人の男女が折り重なるように死んでいるのが見つかった。見たこともないチケットをもって。必死の形相だ。
この平和な世界でいったい何を見たらこのような顔をするのだろうか?駅員はそう思った。その二人の、いやそれは二匹の犬だった。
「かわいそうに」
二人は何から逃げていたのか、亡者となり今も宇宙のはてを目指してさまよっているのかもしれない。
二人の正体がびみょう。