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第98話 魔力インク

 カデンの制作現場にお邪魔した。

 職人が無言で魔法陣を書く。

 しばらく見ていたが飽きたので、休憩室に行く。


「ご苦労様」

「どうも」


「疑問に思ったんだけど、魔力インクって高いんだよね」

「はい、そうですが。何か」

「いや、作れないかと思って」


「材料は魔獣の中にまれに出来る魔石を粉にして、顔料を混ぜてます」

「なるほど、魔石が高いのか」

「はい、そうです」


 魔石の代替品か。

 きっとなんかあるはずだ。


 地球でネット通販を使い石のサンプルを取り寄せる。

 クズ石や人工宝石なら安いので、大抵3000円ぐらいで手に入る。


 異世界に持ち込んだが、魔石の代わりは見つからない。

 宝石が余ったな。


「みんな、俺からのプレゼントだ」


 妻達に宝石をあげる事にした。


「嬉しいですの」

「なかなか良い心遣いや」

「ふん、今度は茶葉をもって来なさいよ。でもこれも貰っておくわ」

「ありがと」

「高かったんじゃないですか」


「いいや、安いな。作り物だから」

「ありがたく頂いておこう。これも一種の大地の恵みだからな」

「とっても嬉しいですわ。指輪にしようかしら」

「ありがとね」

「超うれしい」


「しかし、なんでまたこないな事を?」

「実は魔石の代わりを探したんだけど」


「聞いた事がありますの。樹の涙が魔石の代わりになるですの」


 エーヴリンがそう言い出した。


「樹の涙って樹液の事か」

「ちゃう、琥珀や」


 ステイニーが正解をくれた。

 琥珀か。

 取り寄せてみるか。

 クズ石なら簡単に買える。


 地球で琥珀を買って持ち帰った。


「どうだ」

「良いですな。魔力の通りも良い」


 80グラムで1万円か。

 クズ石でもそれなりにはするな。

 ふと思った。

 クヌギなんかに傷をつけて、樹液を採取して使ったらどうだろう

 子供がカブトムシを採るのに樹を傷つけていたので、樹液を貰う。


 やってみたが、品質の悪い魔力インクしかできない。


「懇願力よ。樹液を琥珀にしろ」


 今度はどうだ。


「素晴らしいですな。これなら一級品が出来ます」


 樹液の採取なんてどうしよう。

 人の山の樹をみだりに傷つけたりは出来ない。


 異世界にクヌギを植えるか。

 その方が早い。

 ペットの餌用どんぐりを買って異世界に植えた。

 そして、精霊力で成長。


 これなら琥珀が作り放題だ。

 カデンはピピデ産とサバル産が市場を独占した。

 エリーズ国の奴は締め出される事になった。

 なったが、黒デンチは相変わらず出荷されている。


 黒デンチの供給を止めたい。

 止めたいが打つ手がない。

 おまけ作戦はやってはいるが、黒デンチの根絶にはいたらない。

 何も悪い事が起きなきゃ良いのだが。


Side:サバル国の国民


「最近のカデンの進化は目を見張る物があるな」


 俺は王都暮らしのどこにでもいる普通の従業員だ。


「ああ、そうだな」


 同僚が頷く。

 俺達は今、ライバル店の視察に来ている。


「ピピデ産とサバル産が席巻か。エリーズ産は見ないな」

「価格と性能で競争できなくなったからな」


「石デンチは相変わらずか」

「その石デンチだが、気になる噂を聞いた。使っていると体調が優れないし、ゴーストが出たらしい」


「それは上手くない噂だな。在庫が山とあるぞ。それに、返品騒ぎになったら、誰かの首が飛ぶ」

「石と木の違いだけでそんなに違うかな」


「木は高級そうだが、それだけじゃない気がする」

「秘密が何かあると」


「ひとつ、研究所に持ち込んでみるか」

「それは良いな。詳しい性能比較は、商品を売る時の参考になる」


 俺は石デンチを研究所に持ち込んだ。

 驚くべき結果が出た。

 木デンチは清浄な魔力で、石デンチは負の魔力が使われている。

 負の魔力が溜まると病気になるという噂がある。

 体調が優れないのはこの為か。

 この事だけでも返品の理由になる。

 よし、石デンチをまとめて他所に売ってしまおう。


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