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農家な俺は大農園ならぬ大悩艶~召喚されてチートなのは俺ではなく野菜の苗だった~  作者: 喰寝丸太


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第95話 飛行魔道具

 今日はみんなで湖までピクニック。

 久しぶりに来た気がする。


 俺達大人はお弁当を食べ、子供達は離乳食だ。


「あれっ」


 食事を終えた子供が指差したのは元大亀の魔獣のギガラだ。


「のるっ」

「危ないから大人になったらな」


「ぶー、や」

「じゃ、ちょっとだけだぞ」


 子供を肩車してギガラの甲羅に登る。


「きゃは」


 こどもはきゃいきゃい笑って喜んでいる。

 そうだ、国境に見張り塔を作ろう。

 でも、ただの農家に高層建築なんて出来ない。

 セメントは出せるけども俺には無理だ。


「あきちゃ」

「飽きたのか。じゃあ降りような」

「もっと」


「ええ、もっと高い所に行きたいのか。仕方ないな」


 俺は子供を抱っこして、魔法を使い空を飛んだ。

 子供が大はしゃぎする。

 そうだよな。

 見張り塔なんか要らない。

 魔法で空を飛べば良いんだ。


 相手が攻めて来ても空からの攻撃なら、損害が出にくいな。

 魔道具で魔法を使った飛行機を作るにしても、俺に航空力学みたいな物は無理だ。

 ピピデの民の職人にも無理だろう。

 ロケットとパラシュートなら何とかなるかもな。


 魔法でロケットみたいに飛ばすのはわけない。

 だが、敵軍の真っただ中に落ちる可能性もある。


「あきちゃ」

「じゃあ、降りようか」


 地面に降りて考える。

 航空戦力は欲しいが技術力が伴わない。

 ドローンを地球から仕入れてくるか。

 だが、攻撃に使えるようなのは売ってない。


 攻撃と偵察の両方を兼ね備えようとするから無理があるんだ。

 偵察だけなら、双眼鏡で事足りる。

 航空戦力はロマンだが、現実的ではないな。


「難しい顔をしてどうしたの」


 エーヴリンが俺を心配そうに見つめる。


「いや、なに空から攻撃出来ないかなと思って」

「飛んだら良いですの」

「それが出来たらな。職人に形を伝えるのが難しい」


「鳥を真似たら良いですの」

「なるほどな。難しく考えすぎか。空気の塊で鳥の形を作れと職人に言うのか」

「魔道具に出来るですの」

「重量のバランスとか細かい調整はあるだろうけど、作る事は可能だな。助かったよ」


 パラシュートの魔道具は飛行機ほど難しくはないだろう。

 なんとかなるはずだ。


 そして。

 滑空する鳥を模した飛行魔道具が完成した。

 落ちる可能性もあるので、俺がテストパイロットを務める。


 椅子型の魔道具に座り起動すると、空気で作った翼が展開された。

 空気を噴出するボタンを押す。

 ガクンとGが加わって加速し始めた。

 速度は増してどんどん浮かび上がる。


 初めてにしては上出来だな。

 あれっ、方向転換が出来ない。

 鳥の形だから垂直尾翼がないのでラダーもない。

 結局は飛行機の形になるのか。


 地面に降りて職人を呼んだ。


「垂直尾翼とラダーとフラップを付けたらいい」


 俺はそれらを図に描いた。


「ふむ、しかし鳥にはこんな物ありませんな」

「それは、鳥は翼を自由に動かせるからだよ」

「なるほど。これぐらいならすぐに出来るでしょう。鳥を模して空を飛ぶなんて事を、考えたのは凄いですな。さすがシゲル神です」


 地球では先人がさんざんやってきた事だからな。


「照れくさいな。こんなの知恵でも何でもない」

「空を飛ぶ魔道具を作ったんだってな」


 ランドルフがやって来て言った。


「空に浮かぶだけで、自由に飛んだとは言い難い」

「改良すれば何とかなるんだろ」

「そうだと思う」


「空から爆発する魔道具を落としたら無敵だな。だが、対抗策はある」

「それ何だよな。敵が真似してこないかが心配だ」


「真似されるだろう。鳥を模したと職人に聞いたが、すぐに思いつく発想だ。投入はここぞという時にした方が良いな」


 俺もそうだと思う。

 イタチごっこになるのはしょうがない。

 地球でもそうだ。

 新兵器が出るともっと凄い物が出る。


 多少、不便でもいいから、戦争につながる技術が無い方が良いと思う。

 飛行機を開発した者がそう思うのは、矛盾だろうか。

 この技術も平和利用されると良いな。


 結局の所、飛行魔道具は当分の間、お蔵入りになりそうだ。

 完成したら、エリザの所に持って行ってやろう。

 きっと喜ぶに違いない。


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