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第61話 石化毒

 なんでこんなに大精霊の商品開発熱が強いんだろう。

 調べてみたら子供の物を買うためだった。

 そういえば、俺ってお金を渡してないや。

 ピピデの民が必要な物を持って来てくれるので、お金の存在を半ば忘れてた。


 ええと、ピピデの民は貢物を持って来てくれるけど悪い気がする。

 なるほどね。

 農家は物々交換の文化が残っているんだよ。

 野菜がお米に化けたり、お菓子に化けたりする。

 そういう事もあって俺は悪い気なぞ少しもない。

 野菜をやってお礼を貰う。

 実に良い文化だと思っている。

 大精霊も畑の植物を成長させているのだから、気兼ねなんかしなくていいのに。


「もう、なんで私が出遅れているんですの」

「ジョセアラか。商品開発したいって言うんだろ」

「分かっているのなら、来なさいよ」


「ジョセアラはもう農薬を売っているだろ」

「それはそれ。これはこれですわ」

「よし、ちゃちゃっとやるぞ」

「酷いですわ。いい加減にやったら承知しません」

「ジョセアラは毒魔法か。普通に考えたら、毒だが。今回は逆に行ってみよう。薬だ」

「そうなると、どうなるのよ。早く言いなさいよ」

「まずはウィルスを殺す毒。人体に害がないのができれば良い」

「そんなの簡単よ。ポイズンウォーター。できたわ。ざっとこんな物よ」

「次は虫下しだ」

「ポイズンウォーター。簡単すぎて手ごたえがないわ」


 うーん、これは物凄い有用だが、面白みにかける。

 それに薬師の仕事を奪う所業だ。

 俺のせいで薬師が減ったらちょっとな。


「この薬はピピデの民の薬師にしか、売らない事にする」

「なんでよ」

「簡単に言うと薬師を失業させない為だな」

「そう、仕方ないわね」


 少し納得の行かない様子のジョセアラ。

 別の案を考えれば良いんだろ。

 薬が駄目だとすると、やはり毒だな。


「悪人を痺れさせる毒なんてどうだ」

「ヴェネッサの血魔法と組み合わせれば。いいえ無理ね。悔しいわ。もっと簡単なお題を出しなさいよ」

「うん、懇願力の出番だな。判別を懇願力に頼ろう」

「痺れ薬だなんて、簡単すぎるわ。なんでこう極端なお題しか出せないのよ。やってみるけど、ポイズンウォーター」

「懇願力よ、効果を悪人だけに及ぼしたまえ。よし出来た」


 でもこれはバカ売れはしないな。

 世界が平和になる毒薬だけど、使用する場所が限られる。

 ランドルフあたりは喜んで使いそうだな。

 毒薬って難しいな。


 懇願力を使えば老いを殺す薬ができたりして、そんなの作らんけど。


「もっとなにか。可愛いのが出来ないの」

「可愛いのねぇ。花を石化させて殺す毒なんて需要がありそうだ」

「なんて事を言うの。花を殺すなんて。私達は植物から生まれたのよ」

「ごめん、考えが足りなかった」


 ジョセアラの機嫌が悪くなった。

 挽回しないと。

 切り花を枯れなくするのは毒では難しそうだな。

 可愛いのか。

 そうか石化は花でなくてもいいな。

 粘土をガラス化する毒とか良さそうだ。

 可愛い置物も作り放題だ。


「粘土をガラス化する毒が作れないか」

「何で難しいのばかり言うのよ。石化の応用で作れるけど、動植物もガラス化してしまうと思うわ」

「そこは懇願力の出番だな」


「やってみるわ。ポイズンウォーター。どんなもんよ」

「懇願力よ、毒薬の効力を粘土だけにしたまえ」


 よし出来た。

 後は試すだけだ。

 粘土を毒薬で捏ねる。

 パンダを作ったつもりだったが、不細工な狸が出来上がった。


 ジョセアラを見るとバラを作っていた。

 なるほど、粘土を薄くのばして、花びらの形に切ってまとめるのか。

 作っているそばからガラス化は進んでいく。

 効果が出るのをもっと遅らせないと。


 でも、出来たな。


「これ、もらっても良い」


 俺が作った不細工な置物に視線をやってジョセアラが言った。


「こんなので良かったら」

「そう、嬉しくなんてないけれど、もらってあげるわ」


 ジョセアラの機嫌が直った。

 さてと、ガラスのバラはいかほどで売れるかな。


「こんなのを作りましたが」

「ほほう、ガラスのバラですか。見事な物です」

「どれぐらいで引き取れます」

「そうですね。銀貨1枚とちょっとですね」

「量産してみます」

「ガラスの花瓶とか器とかは作られないので。それと色彩が豊かだともっとよろしいかと」


 花瓶とか器は職人なら作成できるだろう。

 問題は透明なガラスだと価値がでないか。

 色か、どうやって付けよう。

 単色ならジョセアラが魔法を掛ける時にできそうだ。

 グラデーションとか複雑な色合いにするにはどうしたら。


「ジョセアラ、どうしたら良いと思う」

「馬鹿ね。粘土しかガラス化しないのでしょう。花の汁とか草の汁を混ぜたらいいのよ」


 花を石化するのは嫌で、汁を混ぜるのはいいのか。

 乙女心は複雑だな。

 突っ込まないでおこう。


「ああ、そんな簡単な事で出来たのか。ジョセアラ、天才だな」

「もう、褒めたって何にもしてあげないから」


 ピピデのガラス製品は大人気になった。

 中には金貨を超える物も現れた。

 やはり製品には塗料で『茂』の字が書かれていた。

 でもガラス製品を拝む人はいないだろう。

 そう思ったらそうでもないらしい。

 名品を毎日、愛でる人が続出。

 神の如く祀っているらしい。

 結局こういう落ちか。


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