第52話 王様と会う
「こちらでお待ち下さい」
俺は今お城に入って待たされている。
この後で王様と謁見の予定だ。
「お待たせしました」
「ご苦労様」
王様に使えている人、侍従だろうかその人の後を大人しくついていく。
「こら、王様のご前であるぞ。控えんか」
そう偉そうな人に言われた。
が、俺は日本人。
お辞儀するしか知らない。
俺はそれを実行した。
「この礼儀知らずが」
「まあ良い。ところでそちは神なのか」
玉座に掛けている人がそう言った。
「それなんだけど、違うと思う」
「それはおかしいであろう。神が僭称するやからを許しておくはずもないからの」
「半精霊である事は確かなんだ」
「精霊も神のごとく信仰されておる。問題ないと判断されたのやも。誰か鉢植えを持てい」
「はっ只今」
ほどなくして、鉢植えが俺の前に運ばれてきた。
「精霊の力を見せてみよ」
育て、育てー。
精霊力を鉢植えに注いだ。
鉢植えに植えられた草が育ち、大輪の白い花をつける。
ありゃ、育つのが止まらない。
草の根は植木鉢を割り、床の石板を割った。
不味い。
城を壊した罪で投獄されたりしないよね。
草は樹ほどの大きさになり、人間大の実をつけた。
この現象には覚えがある。
この後、大精霊が復活するんだろ。
やっぱりだ。
実から光と共に白いドレスを着た女の子が現れた。
「ぷはぁ、復活」
「王よ、危険です。お下がりください」
「馬鹿を言うな。大精霊復活に立ち会っているのだぞ」
「私はミスリルリリー。あなたは」
「シゲルだ」
「ふーん、神気をまとっているのね。何者?」
「うん、俺も分からない。懇願力は神様から与えられたから神気があるのかも」
「懇願力?」
「ちょっと前までは給料力って呼んでた。物が自由に買えるんだ」
「そう、神から権能を貰ったのかも」
「うん、そう言えるかもな。スキルを貰ったから」
「おお、神様。我が国をお救い下さい」
王様が俺を拝み始めたよ。
神だという誤解を解くために来たのに、逆効果だ。
こうなりゃ自棄だ。
「この国は聖域。大精霊に従うように」
「ははー」
「ミスリルリリー、負の魔力が増えないように王様に助言してあげて」
「いいわよ。やってあげる。まず争いは禁止」
「それは困ります。攻められた時に反撃できないとやられる一方です」
大臣だろうか偉そうな人がそう言った。
「心配要らない。攻め込んで来た軍隊は精霊砲で叩きのめすから」
「あの戦争派の屋敷を潰した攻撃ができるのか。こちらから攻めたりは」
「それは無しで。心配しなくても。この国が緑に包まれたら、隣国も緑にするから」
「緑にするとどうなるので」
「聖域になる。聖域では争いは許さない」
「そんな馬鹿な戦法があってたまるか」
軍人らしき人が怒鳴った。
「それが、あるんだな」
「軍は何と戦えばいいのか」
「不浄の者がいるだろ、それを撲滅しろよ。それが済んだら、野盗を懲らしめろ。いいか殺すんじゃないぞ。捕まえて畑を作らせろ」
言いたい事は言えたと思う。
「ミスリルリリー、あとは任せた」
「任せて。お城を立派な聖域にするから」
「さらばだ」
俺はバルコニーがある部屋に入って、フライの魔法を唱えて宙に舞い上がった。
エリザの家の上にくると、元ジェノサイドバード達が空に迎えに来てくれた。
「とんずらするぞ。事態がもう俺の手には負えん」
後は知らないっと。
俺のせいじゃない。
植物を育てる力を使えと大精霊がもれなく復活するとはな。
畑の野菜にしか使った事が無かったから気がつかなかった。
畑の野菜は大精霊がいるから復活はしないのだろう。
そういえば、懇願力が小さくなったような。
「ステータス・オープン」
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名前:シゲル・リョクテ
魔力:19787/19787
スキル:
サケタの種
国家園
名前ジェネレータ
言語理解
絶倫
賢者タイム
レベルアップ
エイヨーN2
エネメス
残金:
39,682円
次の給与まで16日
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おりょ、給料がごっそり持ってかれている。
信仰されてあんなに増えていたのに。
あれ。
今、給料が上がったぞ。
ほわっつと思ったら、あっという間に10万ほど増えている。
非常に嫌な予感が。
もう、ステータスは見ない事にしておこう。
何か不味い気がするんだよな。