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第16話 ピピデの民の到着

 給料日の翌日。

 遂に念願のピピデの民が到着した。

 その数300人とちょっと。

 畑の面積に不安はない。

 土の精霊も頑張ってくれたので、広がった聖域の内、1キロメートルほどが畑だ。

 まだ周りの開拓が追いつかない所は雑草が生えるに任せてある。

 ピピデの民が家を建てたり勝手にするだろう。


 到着早々、ランドルフがピピデの民を代表して俺の所に来た。


「聖域に住んでもいいなんて、太っ腹だ」

「俺の土地ではないからな」

「欲しい物があれば何でも言ってくれ」


 実は欲しい物が一杯あるんだよな。


「とりあえず家具一式と衣類が欲しい」

「そんな物で良いのか?」

「俺は職人じゃないから、物は作れない」

「よく今まで暮らせたな」


「女神様に物を買えるスキルを貰ったんだ」

「女神様が売る品物ってどんなだ。神の国の物か。おい、どうなんだ!」

「いや、女神様の物と言う訳じゃ。あれ、どういう理屈でできているんだろ? とにかく異国の品が買える」

「それなら召喚魔法と似たような仕組みだろう」

「まあいいや。買える品物に偏りがあって困ってる」

「家はどうしたんだ?」

「作物を育てる透明な家に住んでいる」

「それは見られているみたいで嫌じゃないのか?」

「うん、そうだな。これからは他人の目もあるし、嫌だな」


「よし、テントを譲ってやろう。ピピデの民は遊牧民だったのでテントは余っている。正直、野菜以外なら何を持っていかれても痛くない」

「助かったよ」


 ビニールハウスからテントにレベルアップした。

 続々と運び込まれる家具や品物。

 おー、タンスとちゃぶ台と絨毯だ。

 一気に文明人になった気分だ。

 毛布だ。

 毛布様が居る、ありがたや。


 ランドルフが着ている様な極彩色の作務衣みたいな衣服があるな。

 慣れれば派手な色も気にならなくなるのだろうか。

 下着は普通だな。

 違いはゴムが紐になっている事ぐらいだ。

 食器と調理器具も一式あるぞ。

 ピピデの民を受け入れた事は英断だったな。

 ナイス俺。


 外へ出るとなにやら騒がしい。


「おい、あれはジェノサイドバードじゃないか! あっちから来るのはグラトニィタートル! それにブラッテイディアー!」


 ランドルフが血相を変えて俺の所に飛んで来た。


「ああ、大亀さんと鳥さんと鹿さんだ」

「分かっているのか。魔獣だぞ」

「大丈夫、人は襲わない」

「そうか、聖域に入ってこれるのだからな。みなに知らせてくる」


 そう言うとランドルフは駆け出して行った。

 忙しい男だ。


  ◆◆◆


 ここで問題が一つ。

 野菜の苗を大量に買わないといけない。

 なぜなら、ピピデの民に供給しないといけないからだ。

 種なら安いのは分かっている。

 しかし、種を急成長させた場合は聖域が縮小するし、大精霊達もかなり消耗する。

 種を植えて安全な畑が無くなったら、本末転倒だ。


 消耗を考えたら苗を買うしかない。

 いや良いんだ。

 俺の欲しい物が買えなくなるのは、家具を譲ってもらったしな。


 計算してみるか、苗の6種類1セットが2,436円

 50セットは欲しいから、121,800円

 肥料を10袋。

 いや足りないか20袋。

 とりあえず欲しいのはお茶の木だな。

 2株で1,639円か。

 4株を買って、3,278円。


 締めて合計で、247,078円。

 残金53,866円。

 うわ、一気に減るなあ。

 和牛が遠退く。


 今度、ランドルフに肉を催促してみようか。


  ◆◆◆


「みんな、頑張るの!」


 エーヴリンの号令の下、大精霊達が苗を急成長させる。

 ピピデの民によって植えられた300もの苗が一斉に花を咲かせて実をつける。

 ありゃ、そういえば受粉はどうなっている。

 たぶん聖霊力で受粉させているのだろう。

 聖霊力は万能だな。


 妖精も精霊力で受粉できたらいいのに。

 ピピデの民は大精霊を遠巻きに眺めているだけで近寄ってはこない。

 魔獣みたいに恐くないだろ。

 それとも畏れ多くて近寄れないとかかな。


 大精霊達が引き上げたので、ランドルフに話し掛ける。


「肉が欲しいんだが」

「肉なら沢山余っているぞ。ここに来る途中で魔獣を何頭もしとめた」

「ぜひ、譲ってくれ!」

「そんなに喜ばれるとはな。他に何かないか?」

「実は大精霊がこれから沢山産まれる予定なんだ」

「それはめでたいな」

「それでな彼女達に夫が欲しい」


 はっきり言ってこれ以上、妻は増やしたくない。


「うーん……」


 珍しく渋るランドルフ。

 何か問題があるのか。


「俺には若者に死ねとは言えない」

「なんでそんな深刻な話に?」

「知らないようだから、教えてやる。大精霊に魅入られると精を絞りつくされて死ぬ。大精霊はサキュバス並みと言われている」


 そんな事が。女神の野郎。


「大体どれぐらいで死ぬんだ?」

「十日だな」


 あれ、俺は死んでないぞ。

 あれか。絶倫スキルのせいか。

 女神も考えているのだな。


「妖精はどうなんだ」

「妖精は普通に人と混血できるな。ただ肉嫌いとの話だ」


 そうか娘や息子は結婚できるらしい。

 よかった。

 いや良くない。

 これから大精霊が増えるともれなく俺の妻じゃないか。

 妻達の間に喧嘩が起きない事を祈るばかりだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ランドルフ達遂に到着ですか!良かった!隣人とのやり取りで、お話がもっと面白くなるかもと期待します! [気になる点] …だんだん女神が嫌いになってきますねぇ…主人公に理不尽を押し付ける行為も…
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