第107話 エリーズ国、征服完了
エリーズの攻撃は下火になった。
そりゃ、黒デンチの供給が止まればそうなるよな。
だが、代わりに神器が出て来た。
この神器は魔法を増幅するらしい。
大型黒デンチの比じゃないくらい魔法が飛んで来る。
吸硬メタルの戦車も魔法で妨害されて近づけないぐらいだ。
近くの地面に魔法が着弾すると、吸硬メタルの戦車も役に立たないんだよな。
ソリにジェットエンジンをつけても空は飛べない。
地面を削られると運転が不安定になる。
中にはひっくり返りそうなのもあった。
ならば。
「精霊砲スタンバイ」
通信の魔道具で呼び掛ける。
「ばっちしや。いくでー」
土の砲弾が神器に向かって飛ぶ。
空気のクッションが展開され、ぽよんと砲弾は弾かれた。
うーん、駄目か。
少し様子を見よう。
数日経ち、神器の設置場所に要塞が出来上がっていく。
転移で退けるか。
やってみよう。
「懇願力よ、神器をこの手に」
駄目だ。
神器の中に懇願力があって抵抗している。
これはゆっくり対抗策を練らないと。
絨毯に横たわり考える。
魔法に対する防御なら吸硬メタルが最強だよな。
魔法を吸って防御力に変えるんだからな。
だが、所詮盾だ。
持ち手がやられたらどうしようもない。
戦車の弱点はそこだ。
装甲は強いが、ソリ部分とジェットエンジン部分は弱い。
考えがまとまらない。
子供と遊んでこよう。
「パパですよー」
「ぱぱ」
「くすぐっちゃうぞ」
「きゃきゃきゃ」
ふと頭に閃いた。
くすぐれば良いんだ。
魔力を混乱させる薬を作ろう。
「ランドルフ、魔力をくすぐって混乱させる薬を作れるか」
作戦本部で俺はランドルフに話し掛けた。
「それは薬というより毒だな」
「私の出番のようね。やっぱり私がいないと」
ジョセアラが出てきてそう言った。
「そうだよな。毒の専門家だもんな。で、どう作る」
「野菜をジュースにして、それに魔法を掛けるわ」
「簡単だな」
「馬鹿ね。清浄な魔力たっぷりの聖域産の野菜だから出来るのよ」
トマトなどの野菜を絞ってミカン汁も加え美味そうな野菜ジュースが出来上がった。
「ポイズンチェンジ。出来たわ。どんなもんよ。褒めてくれてもいいのよ」
「偉いぞ」
ジョセアラの頭を撫でてやった。
指に付着しないように気を付けながら噴霧器に毒を入れる。
俺はさっそく、敵要塞の上に飛び、毒の雨を降らせた。
こんなので上手くいくかな。
俺が通信の魔道具で連絡すると、戦車一台が要塞に突撃を開始した。
戦車が砲弾を撃つが、要塞からは反撃はこない。
戦車の砲弾が要塞を壊し始めた。
そして、白旗が上がった。
要塞に入ると敵士官が文句を言って来た。
「お前達、汚いぞ。どんな毒を使ったんだ。魔法が攪乱されて撃てない」
「野菜ジュースだよ。美味かったろ」
俺は要塞の天辺に設置されていた神器を手に取った。
うわっ、負の魔力で汚染されまくってるな。
「懇願力よ、神器を浄化しろ。ファルティナ様、神器を返還します」
神器が光になって消えて行く。
「よくやった。後二つも頑張るのだぞ」
後は、各国にエリーズの降伏勧告を行う事を通達させて、あの大型黒デンチの処分だよな。
めんどくさいな。
待てよ、今回の毒薬を大型黒デンチに掛けたらどうなるんだろ。
後で実験だ。
一か月後、エリーズ王都の上空から毒薬を散布した。
まず、ゴーストに変化が現れた。
同士討ちを始めたのだ。
そうなるのね。
そして、大型黒デンチは自壊し始めて塵になった。
塵は相変わらず負の魔力の塊だ。
地道にやるしかないか。
結界を張り、ホームセンター製の木の板で結界を幾重にも補強する。
これで放置してもゴーストは出て来ないはず。
木の板の清浄な魔力が抜けたら交換すればいいや。
ふと傍らに目をやると召喚陣があった。
召喚陣の上には不浄な者が鎖でつながれていた。
どういう事?
まあ、始末するけど。
不浄な者を懇願力で浄化して、召喚陣から力を吸い取って壊す。
ふう、これでいいだろう。
後の降伏勧告とかは、ランドルフが良いようにしてくれるはずだ。
Side:女神
「女神様、シゲルがエリーズの召喚陣を壊しました」
天使が報告に来た。
「何ですって」
本当だ。
エリーズの召喚陣が壊されている。
地上を探るとヒースレイとサバルの召喚陣が既に壊されていた。
きー、あれを作るのにどれだけ苦労したと思っているの。
もう、許さない。
シゲルをこの世から抹殺するわ。
でも直接手を下すのは不味い。
じゃあ、こうしましょ。
デュラ国の王を焚きつけてシゲルを殺させるようにする。
それが良いわ。




