第一話 閻魔様
「ようこそ、最後の審判へ」
目の前にいるスーツを着た男はそう言うと、椅子に座るよう促してくる。
「ありがとうございます、失礼します」
これは私の癖なのだろう。私は椅子に座るとスーツを着た男を観察する。
年齢は自分と同じくらいだろうか?かなりの男前だ。
時計はしていないが、ネクタイとネクタイピンは高級なものだと感じる。
口元は笑ってるように見えるが、作り笑いにも見える。私も笑顔で返してみる。
「何も質問しないの?」
スーツをきた男は私に聞いてくる。
気になることは沢山あるが、まず聞いておきたいことを質問してみる。
「あなたは神様ですか?それとも閻魔様ですか?」
私は信仰心などはないが、興味がわいたので聞いてみることとした。
男は驚いた顔をし、少し考え、
「どっちかというと閻魔様かなー?ほら神様っておじいちゃんや女の人ってイメージあるから」
と笑いながら言われる。
『いや、イメージの問題では....』
そう心の中で思ったが、笑顔で
「わかりました」
と伝える。
スーツを着た男は笑いながら
「でも面白いね!みんな自分のことやこの場所が気になって質問するのに。私の事について質問した人は初めてだよ」
と言い、握手を求めてきた。
拒むこともない、私は握手を返した。
「閻魔様と呼べばよろしいでしょうか?」
私はスーツを着た男に尋ねた。
「閻魔様でいいよ、丹羽俊樹君」
彼は笑顔で言った。
「閻魔様、よろしくお願いします」
握手を外し、私は座りなおした。
その後、私は閻魔様について質問しながらいろんな話を聞いていた。
閻魔様は話すのが好きなのだろう。活き活きと自分のことを話される。
傾聴しながら、彼が話終えるのを待ってみる。
話が終えたようだ。閻魔様は満足した顔をしながらため息をつき
「あのー.....俊樹君は.....動揺も感じれないし、死んだことわかってるのかな?」
と聞いてくる。
私は頷き、
「はい、ビリオンで死にました」
と笑顔で答える。
閻魔様はため息をつきながら
「そうだね・・・」
と呟く。
彼は真剣な顔に戻り、
「審判の前に最後に質問はあるかな?」
と私に聞いてくる。
私はずっと気になることを聞いてみた。
「私が担当した・・・昨日亡くなられた40代ぐらいの男性の方は天国にいけたのでしょうか?」
彼は眉間に皺を作り
「1日100件以上みてるんだよ?40代の男性だけでも昨日20人いたから誰かわからないよ。それにしても変な質問するね」
と言った。私は少し落胆したが、しょうがないと納得した。
それをみた閻魔様は、しゃうがないなぁと呟き
「ちょっとまってて」と言い。
頭をかきながら、巻物みたいなのを開き、調べ始めた。
「まぁ、昨日の40代男性はみんな天国に行ってるから天国だと思うよ」
と笑顔で教えてくれた。私は安堵し、ほっとしたのか、涙がこぼれた。
「それでは閻魔様、お願いします」
閻魔様は一呼吸入れ、
「丹羽俊樹、あなたに審判を言い渡す。」
と言った。
私は目を瞑り、閻魔様の言葉に集中していた。
「丹羽俊樹、あなたは人の為奉公してきました。そして人のために人生を歩んできました」
「しかしあなたは自分の心を殺しすぎた。感情を捨てすぎた」
「よって、あなたの行き先は天国でもない地獄でもない。【転生】とします」
『え.....』
私は頭が真っ白となった。