プロローグ2 丹羽俊樹
私は丹羽俊樹、どこにでもいる28歳のサラリーマンだ。
職業は人の話を聞く相談員。仕事を探したい、お金に困っている、住むところがない、社会に絶望した。
そんな方々(主に困窮者)の相談に乗り、自立を促すのが私の仕事だ。
大学卒業後は福祉の現場を経験するため、介護や障害の分野で働いていたが
人と話すことが人助けになるのであればと、この業界に入った。
毎日9時に出勤。18時に退勤。たまに残業もあるが、その分は別日に調整を行う。
そんな毎日を過ごしていた。
そう、昨日までは------
私が担当した方で亡くなられたのは初めてだった。
自然と涙が出てきた。
前に介護の現場では【看取り】をやったこともある。
その時以来の人の死だ、さすがに慣れることはない。
昨日来られた相談者がビリオンによって亡くなられたため、すぐに上司から自宅待機を命じられた。
発症するなら明日明後日には私も死ぬだろう。
まだ感染したと決まったわけではないのに、ふと私は死を感じていた。
家族も恋人もいない。一人孤独に死んでいくのは覚悟していたことだ。
こんな時なのに、昨日相談に来て亡くなられた方の残された家族が心配になる。
これは奉公心なのか、偽善なのか。私にもわからない。
誰かに感染させるのもの嫌なので、ご飯は自宅にあるもので済ませ、自宅待機中は自宅にたまっているDVDを見ることとした。
お気に入りの映画を見ながら煙草を吸う、これほど幸せな時間はない。
そして2日後、私は閻魔様の前に立っていた。