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プロローグ1 お話聞かせてもらいます

「4番の方どうぞ」


他から隔離されたブース、整理券4番を片手に

40代ぐらいスーツ姿の男性が入ってくる。


「すみません、知人からここでお金を貸るられると聞いてきたんですけど」


彼は私に単刀直入に聞いてくる。

ここは生活が困窮して困った方々が相談にくるブース。

このような相談も多く来られる。とくに今のご時世はよくある光景だ。


『またか......』

心で呟くも

私は笑顔で彼に告げる。


「貸付のご希望ですね。その前に色々お話聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」


私は受付表を記入しながら、お話を聞かせてもらう。

彼は奥様と息子の三人暮らし。

奥様は専業主婦でもう一人子供を身篭ってる。

今回のビリオンによる外出自粛令により会社が倒産し無職になってしまった

国からの給付金は生活費に使ってしまい無くなってしまったと

彼は私を見ながら淡々と話す。


「ビリオンでの倒産ですか…大変でしたね…よく今まで頑張られましたね」

私が言ったその言葉を聞いた彼は、少し表情が和らいだ。


ビリオン-----世界で同時に起こったウイルス。飛沫感染で世界全土に拡がり、多数の死者を出している。感染したら潜伏期間の後、呼吸困難となり窒息死で亡くなるのが特徴だ。


他にも、彼がタクシー会社で運転手をしていたこと、現在のお金事情について

(主に前の給料や貯蓄額、現在の家計簿)、債務や滞納の有無、学歴、生活歴、趣味や娯楽など

彼や家族のプライベートの部分を色々聞いていく。


その後、少し打ち解けてくれたのだろう、彼自ら積極的に話を始めた。

それこそ奥様への愚痴も含め、少し脱線してきたため話を整理し彼に確認をとる。

彼は納得した顔をされる。を繰り返す。


『まあこんなものだろう』

私は受付表の記入を終え、彼に笑顔を向ける。


「事情はわかりました。ご案内したいのですが、給付ではなく貸付なので還せる目処が必要になります。まずはお仕事探しから一緒にしていきませんか?」


彼は少し考えた後、頷きながら

「お願いします」

と頭を下げる。


明日一緒にハローワークに行く約束をし、彼は帰っていった。

帰り際、少しだけ笑顔が見れた。話をきいてくれたのが嬉しかったのだろう。私も満足だ。


私はデスクに向かい彼の登録を行う。情報をまとめ、明日の彼のお仕事探しに少しでも

お役に立てればと思いながら。







だが

当日----彼は来なかった。

妻を名乗る方から、夫がビリオン感染で昨日亡くなったと聞かされた。

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