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1 【悲報】俺氏フラれる

見切り発車で始めた連載です。


Vtuberってこんなもんかな、って感じで書いてくんで結構ガバです。




「やっと着いた……ただいまー」


 華金だってのに珍しく今日は遅くまでの残業があり、俺、山田 健一が帰宅したのは夜10時過ぎだった。


「あやー?いないのー?」


 いつもは同棲している彼女が出迎えてくれるのに、今日は反応がない。おかしいな、とは思いつつ真っ暗なリビングの電気をつける。


「あや?……あれ、なんか部屋……広い?」

 

 普段よりもスッキリしたようなリビングに違和感を抱いたが疲れで頭が働かない為、考えるよりも先にソファに倒れ込んだ時に、テーブルの上のそれを見つけた。


「んー?なんだこれ?」


 それは一枚の封筒。宛名には『健一へ』と書いてある。


「俺宛て……あやが書いたのか?」


 中には2枚の便箋。不思議に思いつつ、それを読むと驚きの内容が書いてあった。


『健一へ


 付き合ってもうすぐ5年になるね。


 健一はいつも優しくて、ケンカなんて数えるほどしかした事ないよね。


 優しくて、いつもワガママなわたしの事を受け止めてくれて……


 でも、健一はわたしのワガママを聞いてくれるけど、健一のしたい事は聞いた事ないってある時に気づいたの。


 思い返せば、いつもわたしが振り回して、健一がついて来てくれて……


 ふと、考えた時に思ったんだ。


 健一はこんなわたしと付き合ってて本当にいいんだろうか、って。


 だから頭を冷やして自分を見つめ直す為に、一回 距離を置かせて下さい。


 こんな手紙でしか言えなくてごめんなさい。直接言えないわたしを許して。


 あやのより』






「…………………え?」






 どういう事だよ。

 ぜんっぜん訳わかんねぇ。


「……取り敢えず先輩に相談しよう」


 考えても何も浮かばないから、俺らカップルの事をよく知っている会社の金田先輩に彼女が出てった事と手紙の内容をラインで送る。

 すると、珍しくすぐに返信がきた。



金田『それフラれたんだよ』



 え?


「フラ……れ、た?」


 脳が追いつかない。ぼやける視界の中、気付けば俺は先輩に電話をかけていた。



プルルルル、プルルルル



『はいはーい、どしたー?』


「いや、どしたーじゃないですよ。フラれたってどういう事ですか」

 

『どういう事って言われても知らんけど。

 取り敢えず部屋には彼女さんが居なくて、手紙にはしばらく離れようと書いてあった。

 よく分からんなら彼女に連絡してみたら?まだ電話してないんでしょー?……ま、無駄だと思うけどねー』


 人が焦ってるにもかかわらず電話口の向こうからはケラケラ笑ってる声が聞こえるが、そんなのが気にならないくらいのアドバイスがあった。

 電話……そうだ、言われてみれば彼女に電話してなかった。

 パニックのあまり忘れてた。


「そう、ですね。じゃあ一回切りますね」


『おう、なんかあったらまた連絡しろよー』


「じゃ、失礼します」


 通話を切って、すぐ彼女へ連絡する。


 が、出ない。

 いつまで経っても留守電になる。ラインも既読がつかないし、本体の方の電話も出ない。


 何回やっても同じ結果だったから、俺はまた先輩に電話をかけた。


「せ、先輩!スマホにかけても出ないんですけど!」


『そりゃそうだろー。普通に考えりゃ別れた相手と繋がんないように、着拒もブロックもするだろうからな』


「ちゃっきょ……ぶろっく……」


 そんな事をされるような事を俺はしてしまったのだろうか。


「俺……これからどうしたらいいんですかね……」


『んー、これから?じゃ、今からお前ん家行くから、朝まで飲むか。そん時にじっくり話聞いてやるわ』


「そうですね。俺も今日は酒入れないとキツいっすわ」


『うっし、しこたま酒買ってくから下で待ってろよ』


「分かりました、……って、切れてるし」


 通話を終了してソファに寝転び今回の事についていろいろ考えるが、いくら考えども解決策は出てこない。


「はぁ……取り敢えず着替えよ」


 肉体的な疲労と精神的な疲労のダブルパンチでズタボロ。


 けど、スーツが皺になっても困るし気力を振り絞って体を起こし着替える。


「どうせ来るの先輩だし、スウェットとトレーナーでいっか」


 上下灰色のダサダサ寝巻きの格好でマンションのエントランスに降り、先輩の到着を待った。





 電話から30分後、両手にパンッパンのビニール袋を携えて金田先輩がやってきた。


「おーおー、悪いな山田、遅くなった。いやー、イオソの食品売り場は11時までやってるから便利だよなー、ギリ滑り込めたよ」


「いやいやいや、先輩どんだけ酒 買ったんですか!こんなに飲めませんよ!」


「ほとんどあたしの分だから気にすんな。ほら、重いんだから袋持ってくれ」


「いや、いいですけど………って、重っ!」


「へっへっへ 、じゃあ部屋まで案内してくれよー」


「はいはい……じゃ、いきますよ」


 2つの袋にはいくつもの缶と食い物の袋が透けて見えている。

 疲れた身体で決して軽くはない荷物を持って歩くのは、例え家までの数メートルでもなかなかに堪えた。

 俺のそんな気持ちを知ってか知らずか、後ろをついてくる先輩をチラと見れば、どことなく嬉しそうな表情をしていた。






「おじゃましまーす。おお、結構広いとこに住んでんだな。ここ家賃いくら?」


「家賃ってかローンで月12万ですね。あ、俺今から飯作るんで、テキトーに座ってて下さい」


「あー、あたしもちょっとお腹空いたー」


「……分かりました、少々お待ちを。先輩グラスいります?」


「んー、缶のまんまでいいや」


「了解です」


 飯と言っても、手抜き料理しか作れないが、つまみになるようなもんだったら多少雑でもいいだろう。

 冷凍庫から唐揚げと二人分のご飯を取り出し、レンジでチン。

 待ってる間に、卵を溶いて醤油と顆粒出汁を混ぜて、卵焼きと冷凍ギョーザをパパッと同時に焼く。

 卵焼きを皿に乗せたら、ギョーザを蒸し焼きにして、その間に冷蔵庫から生ハムやらチャーシューやらを取り出して雑切りにして皿に盛れば晩飯完成。


 野菜なんて知るかとでも言うような茶色ばっかの男飯だが、酒飲みならば歓迎されるだろう。


「うっす、先輩出来ましたよ」


「おお!美味そうだな!じゃあご馳走になります、かんぱーい!」


 缶を空けて先輩のビールとぶつける。


「乾杯。────っぷはぁ!」


 どんなに疲れてても、どれほど辛いことがあっても相変わらず酒はうまい。だから禁酒が出来ねぇんだ。


「山田ァ、バンバン酒入れて気分上げてけよ!」


「うわっ、もう2本目空けたんですか。相変わらず飲むの早いですね」


「んー?9%なら水と変わんないだろー。

 くぅぅ、ギョーザうまー!」


「急アルだけは勘弁して下さいね」


「はいはい、分かってらぁ」




 なんて、最初は楽しく賑やかに飲み食いしてたが、次第にフラれた事の怒り、悲しみ、苦しみにより缶を開けるペースが早くなっていった。


 案の定、金田先も俺もべろんべろんに酔っ払い2時を過ぎた頃には完全に出来上がっていた。

 後になって後悔したのは、お互い酒に強かった事。それプラス時間帯が深夜だった事、酔っ払ってた事、傷心で自棄になっていた事などでスーパーハイテンションになり、それに身を任せてしまった。




 つまり、何が言いたいかというと……




「結局はなぁ……山田、おめぇが普通すぎてつまんねぇって事だろうよぉ」


「えぇ〜?そんなんしょーがないじゃないですかぁ〜。今さらどーにもできないですよぉ〜」


「まぁ話を聞けって。普通がダメだったけど面白かったらダメじゃなかったかもしれんって事だ」


「ほほ〜、それは一理ありますねぇ〜。つまりおれはどーすりゃいいんですかぁ〜?」


「つまり……」


「つまりぃ〜?」


「配信者になれば良いんだ!」


「なるほどぉ〜!」





 つまり、俺は配信者としてやっていく事になった。


 あぁ、あの時にバカみたいに同調せず流しておけばよかった。

 この時ならまだ先輩も、話半分だったから引き返せたのに……



 











 これは、テキトーに作ったキャラで緩々と闇落ちしていく、1人のVtuberの物語である。



 



 

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