3話 元勇者と新勇者
3話目を更新します。元勇者と新勇者が出会い、物語が動き出します。
焦った〜内心とても驚いていた。まさかこんな所で新しく召喚された勇者に会うなんて思っても見なかった。誰に見られても大丈夫な様顔を隠していて正解だった。
助けた少女こと新しく召喚された勇者丹羽葵は小柄な体で黒いローブと木で作られた杖を持っている。おそらく魔術師だと思われる。
「あの、あなたのお名前を教えてください」
「俺の名はリュートだ」
「そうですか、リュートさんですかいい名前ですね」
彼女は持っていた杖を両手で握り目を輝かせていた。
流石に本名を名乗る訳にはいかないので考えた末、辰巳の辰と隼人の人を組見合わせただけの名前なのだが、褒めてくれたのでこれはこれでいいかと思った。
「所で丹羽さんはどうしてこんな所に1人でいたんだ?」
俺が彼女に尋ねると、彼女はハッとした顔をしていた。
「そうでした、すいませんでした私はレベルを上げる為にこの森に来たんですけど、一緒に来た人とはぐれてしまい森を彷徨っていたら魔獣と遭遇してしまったんです」
彼女は服の裾を両手で掴み俯きながら事の顛末を話した。
レベルはこの異世界に住んでいる人皆にあり、経験を積んだり身体を鍛えるとレベルは上がり筋力が上昇したり、保有している魔力の量が上昇し高度な魔法を使う事が出来る様になる。魔獣を倒す事で大きくレベルを上げる事は出来るが相手とのレベル差を考えながら戦わないと返り討ちにあい命を落とす恐れがあるのだ。
「因みに丹羽さんは今レベルはいくつなんだ?」
俺が彼女に聞くと、彼女は俯いてた顔を上げてまた俺の顔を見上げた。
「葵で構わないですよ、今のレベルは10です」
ハイっ? レベル10? 一瞬聞き違いをしたのかと思ってしまった。何故ならこの森にいる魔獣のレベルは20〜30であり、そんな所にレベル10で来るなんて命を捨てに来る様なものであり、とても信じられない。
「この森は葵が来る所じゃない、どうしてここに来ようと思ったんだ?」
「私も最初は反対したんですけど、一緒に来た人が『大丈夫だ、この方法がレベルを上げるのに手っ取り早いんだ、もし何かあれば僕が守ってやるよ』と押し切られてしまって」と申し訳無さそうに言っていた。
まったく、さっきから話しの中に出てくる『一緒に来た人』という人物は聞いているだけでもろくでもない奴だという事がヒシヒシと伝わってくる。
「はぁ〜、誰なんだそんな無謀な事をさせる奴は?」
耐えきれず俺も溜め息を漏らしてしまった。
「それがですね…」
彼女が話そうとすると、遮るかの様に遠くから何かを叫ぶ声が聞こえてくる。
「おい貴様、今までどこに行っていた!」
鎧を着た騎士の様な人物がこちらを指差しながらズンズンと足音を立てながら近づいて来た。
「森の中では必ず私の近くにいろとあれほど言っておいたのにどうして離れた」
近くまで寄って来た騎士は俺の方には目もくれず、彼女を責め出した。
「ごめんなさい、ついて行こうとしたんですけど途中で見失ってしまって…」
「あー情け無い、ただついて来る事さえも出来ないとは貴女は本当に選ばれし勇者なのですか?」
2人の会話を片隅で聞いていた俺は、この騎士が彼女の言っていた『一緒に来た人』でありほんとろくでもない奴だと改めて心の中で溜め息をついていた。
今後、キャラクター表記で丹羽葵は葵で統一したいと思います。次回もよろしくお願いします。