2話 青年と少女
早速2話目を更新します。
悲鳴の元には、1人の少女が魔獣に囲まれていた。
魔獣は狼の様な姿をしていて、5頭の群でジリジリと少女との間を狭めていく。
少女も少しずつ後退りしていると、木の根に足を引っ掛けて後ろに倒れてしまう。
好機と見た狼の魔獣の1頭が少女に向かって飛びかかる。
少女が身を屈めていると、「キャイン」という狼の魔獣の声がしたので顔を上げると、飛びかかった筈の狼の魔獣は地面に倒れ込んでいて、舌を出しながらピクピクとしていた。
少女が狼の魔獣を見ていると、自分の前に誰か立っているのに気付いた。
10代後半から20歳前後の青年という事は見た目から判断出来たが、顔は布で覆い隠す様にしていたので顔は見えなかった。
「大丈夫か? 怪我はして無いか?」
青年は狼の魔獣と少女を交互に見ながら尋ねた。
「はっ、ハイ大丈夫です!」
少女はいきなり尋ねられて慌てて答える。
少女の安全を確認し安心した青年は狼の方を向き、腰元に差していた短剣を抜き、目の前に構える。
仲間をやられた狼の魔獣達は、狙いを少女から青年に変えて青年の周りを囲む様に動き出す。
青年の周りを囲んだ狼の魔獣達はタイミングを計ったかの様に一斉に飛びかかる。
すると青年の姿が一瞬で消えていた。標的を見失い狼の魔獣が混乱していると、上から青年が降って来て狼の魔獣の1頭を短剣で刺すと、魔石だけを残して消えてしまった。
また仲間をやられた狼の魔獣は連携が解けて右往左往している。
青年は流れる様に狼の魔獣達に短剣で一撃を与えて行き、まるで線で辿ったかの様に魔石が落ちていた。
木の根に座り込んでいた少女は起き上がると青年の元にかけて行った。
「あ、あの助けていただきありがとうございました」
少女は顔が下を向くくらいのお辞儀をして感謝する。
「礼には及ばないよ偶然歩いていたら悲鳴が聞こえたから来ただけだから」
青年は照れ臭そうに答える。
「いいえ、あなたが来てくれなければ今頃あの魔獣達に食べられていました」
グイグイ来る少女に青年は顔を直視出来ず、少女より少し上の方に目線を向けていた。
「そ、そう言えばどうしてこんな森の中に1人でいたんだ?」
「あ、すいませんでした名乗るのが遅くなってしまいました」
少女はそう言うと、身なりを整えて深呼吸をした。
「改めまして、私は丹羽葵と言います信じてもらえないかと思いますが、私は異世界から来た勇者です」
少女は堂々と胸を張って自己紹介をする。
「はっ?」
青年は目と口を丸くしていた。
仕事の関係で更新日にばらつきが出ると思いますが、出来るだけ間が空かないよう更新したいと思います。