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覗き


 ここは【魔導学園】の広大な土地の中でも秘境中の秘境。


 最北端に存在する古びた屋敷である。



 朝から扉の前に女性が立ち、強く叩いている。


 どうやら誰かを起こしに来たらしい。


 こんな最北端の古びた屋敷にいったい誰が住んでいるのだろうか。




「ちょっと!起きてますか!起きてませんよね!?早く起きてくださいよ、オルフ先生!!」




 どうやら起こしに来たのは同じ学園で働く職員のようで、起こされる側は『オルフ』という職員らしい。


 ここの学園は、地球でいう大学のような授業形式であり、取りたい授業を選び選択するという流れとなっている。


 この『オルフ』とやらの授業はそれほど人気の授業で生徒が待っているのだろうか?




「今日は入学式ですよ!前々から学園長にも言われているように壇上にだけは立ってください!!」




 入学式。


 それは職員なら出席しなければならない行事の一つだろう。


 新たな生徒を迎え、職員は教え生徒は修めるものとなる、新たな道の第一歩というものだ。


 それをこの男はすっぽかして寝ているというのか?


 心臓に毛でも生えているんじゃないか?




「まだ起きないんですか!?奥の手を使いますよ!!いいんですか!?」




 奥の手、何をするつもりなのだろうか。この女性は。


 扉を破壊して中に入るとかだろうか?


 しかし、この屋敷には誰がやったのかは分からないが多重な結界が張られているようだ。


 この女性職員の魔力量では壊せないと思うのだが……。




「いきますよ!?『無属性魔法』『音魔術』『金切り音』!!」


「っ!!」




 お、屋敷の中から苦しそうな声が聞こえてきたぞ?


 成功したのではないのか?


 まあ普通に考えても不快音でしかない『金切り音』を耳元で鳴らしたらしい。


 この女性は結界をすり抜け中で寝ている者の耳元に対してこれを食らわせた、という高等技術をやってのけたのだ。


 流石は【魔導学園】の職員であるといえよう。


 魔術を発動している間、中から駆け足のような音が聞こえると同時に勢いよく扉が開いた。




「…んだよ。うるせーなぁ…」


「うるさいじゃないですよ!もう学園長の話始まってるんですからね!?さっさと用意してくださいよ!!」


「別にいいだろーが、俺が態々でなくても……」


「ダメです!!」


「……おやすみ」


「しれっと扉閉めないでください!!」


「チッ…。相変わらず口も魔術もうるせー女だ」


「早く!!」


「分かったっつーの…。ちょっと待ってろや…」




 どうやらこの男が『オルフ』という職員らしいな。


 髪が長く、髪色は黒で黒目、風呂には入っているようだが、服が小汚い。


 体格は太っているわけでもなく痩せているわけでもないが、筋肉は付いているようだ。


 筋肉の付き方からして格闘技だろうか?


 ばっちり着替えシーンを見てしまってはいるが私は中性なので問題はないな。


 前職は軍人だったのだろうか?


 体には切り傷、刺し傷、火傷、拷問跡、刺青の消し跡、縫い傷などなど数えきれないほどの傷跡がある。


 それらを抜きにしても人目を惹くであろうモノ。


 背中一杯の悪魔の落胤、シンボル、逆向きの五芒星、言い方は多々存在するがこれを良い意味でとらえる者はいないだろう。


 その五芒星の中には異界の言語だろうか?


 私でも読めない言語で書かれている。




『用意できましたか!!?』


「うっせーなぁ、出来たよ」


『じゃ、さっさと玄関まで来てください。転移魔法を使うので』


「ああ…」




 転移魔法。この世の中のどこかにその個人が使う魔力のマークを設定していると自由に飛ぶことができる『無属性魔法』の『空間魔術』『転移』といったところか。


 ここで『魔法』と『魔術』と『魔道』と『魔導』について説明しておこう。


 『魔法』とは、全ての魔の根源である。この世は大昔に魔素の大量発生で多くの生物が死んでしまった。

 それに生き残った者は適応能力の自己進化により、独自の進化を遂げ魔素を体内に宿すことによって生き続けることに成功した。

 後の者は体外にある魔の素を『魔素』、体内の魔を自己の力とする『魔力』、そしてその魔によって発生してしまった法則を『魔法』としたのだ。


 次に『魔術』とは『魔法』によって得た知識を自己の力で書き換えた『魔法』のことだ。後の者はその『魔法』を『魔法』の中に分類するのを良しとはしなかった。

 そこで自己の力で書き換えた(すべ)だとして『魔術』と命名した。


 三つ目に『魔道』だが、これは『魔法』『魔術』を経ると魔の追及をするため個々の道を歩むこととなった結果である。これを魔の道を歩んだ跡として残ったものを表したのが『魔道』。


 最後に読みは同じだが、意味は全くの逆。『魔道』によって携えたものを弟子、愛弟子に教えることを義務付けられた者がいる。世界によって認められた功績を持つ者である。その行為を評して『魔導』と呼ぶのだ。


 これらを行うことを総じて【魔導学園】という名が付いているのだろう。


 さて、それぞれを説明したが、それぞれには段階を表す『魔法士』『魔法師』『魔術士』『魔術師』『魔道士』『魔道師』『魔導師』『賢者』『参賢者』『大賢者』と存在する。


 もう少し付き合ってくれ。


 『士』と『師』の違いは修める側と教える側の違いだ。


 どちらがどちらかは言わずとも解るだろう。


 『魔導師』が『師』のみであるのは修めることがないためだ。追及することはあっても、修めるには不可能だからな。


 というのも、『賢者』から上は『魔導師』以下の者に教えることは【界法】によって禁じられている。


 故に不可能なのだ。


 『賢者』から上はまた説明する機会があるだろう。その時にしよう。



 今はこの者の入学式の出席についてだったな。







「では、次に我が学園自慢の各属性の魔導師を紹介致しましょう」




 その声に新入生は色めき立つ。


 全部で五つの椅子が用意されている。




「では左から自己紹介をお願いします!」


「ああ、変わったぞ。俺は火属性魔導師アレン・シェード。主に攻撃系の魔法に対し教鞭を立つ。よろしくな。ほい、次」


「はい。私は水属性魔導師ミルー・テオ・ファージュ。攻撃魔法は少ないけど回復や支援を担当するわ。よろしくね」


「うっしオレか!オレは土属性魔導師ディック・ローワン!防御系の魔法や鍛冶をやる者はオレのところに来い!教えてやるぞ!!」


「私の番ですか。私は風属性魔導師ワーン・ロッド・テトラ・クルです。攻撃や支援が半々ぐらいですね。よろしくお願いします」


「ああ…。俺の番かぁ……。めんどくせー。無属性魔導師ラスト・オルフ。身体強化や魔力の使い方を教える。まあよろしく頼むわぁ……」




「ではこれで入学式挨拶は終了です。次に…」




 やはり『魔導師』か。


 それほどの驚きはなかった。




≪なにしてんだ?また下界を見てんのか?≫


≪ああ、楽しいぞ?≫


≪ほどほどにしておけよ?またヴァルキリーに怒られるぜ?≫


≪分かっている≫


≪ホントにわかってたら、何回も怒られないだろうに≫




 こんな楽しいこと止められるか。


 楽しいことは正義なのだ。


 それが私の幸福と快楽の神の存在意義なのだからな!


誤字等は誤字報告へお願いします。

2月24日13時37分訂正。

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