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ネバーランドは夢の中  作者: 豆大福
5/6

怪物退治の夢Ⅱ

※主人公視点

「ヤツはまだ生きていた・・・ちくしょう!!仕留めきれなかった俺の責任だ!!」



 基地から連絡を受けた男性は僕らに「行くぞ」と一言声をかけて逃亡した敵を追うべく氷に覆われた道を走っていく。



「ちょっ!待ってくださ」



 ズルッ



「大丈夫ですか~?ピーターさん。」


「いっだい・・・」



 雪国育ちとはいえ、転ぶ時は転ぶもの。

 踏み出した足はつるりと滑り、地面にモロにぶつかったお尻が悲鳴をあげている。

 僕は自分が受験生ではなくて良かったと心の中で思いながら、未だにジンジンと痛むお尻を擦りつつ前を走る男性に引き離されないよう足を前に出す。


 とはいえ、滑って転んで尻餅をついたり、真っ直ぐ前に進めなかったり移動だけでも一苦労だ。

 寒いし、痛いし、男性は落ち込んでいるし、本当に何なのだろうか今日の夢は。



「あーいってぇ・・・まあ、失敗なんて誰にでもあるよオッサン。あまり思いつめない方がいいです。」


「そうそう!それに失敗しても次で挽回すればいいだけだって~」


「お、お前ら・・・」



 寒さからなのか、僕らの励ましのせいなのか、前方からズルズルと鼻水を啜る音が聞こえてくる。

 男性は僕らの前を走りながら小さな声で「ありがとう」と一言だけ言うとそれ以上自分を責めるようなことは口にしなかった。



「お前ら見えてきたぞ!あそこにヤツが潜んでいる!!」


「えっ・・・あそこって・・・」


「うっわ~・・・普通に住宅街だぁー・・・」



 今までの雪と氷に囲まれた景色はなんだったのか。

 つい先ほどまで北極にいるかのような感覚だったのに、今はすっかり日本の見慣れた景色だ。



「なんか普通に日本家屋とかが建っているのが不自然で仕方がないんだけど・・・」


「すっごいカオスな空間っすね!!」



 僕らは男性に聞こえないように小声でこの到底ありえない景色に一言ずつコメントを呟く。

 夢だからって不自然なものは不自然なのだ。



「んん!!・・・そ、それで敵はどこに行ったんですか?」


「わからん。」


「はっ?」


「わかんないって、それじゃあボクたちどうやって怪物を退治するんですか!?」


「それはヤツが表に出てくるのを待つしかあるまい・・・」


「そうしている間に被害が大きくなったらどうするんですか!?

 それに今まで敵がどこに向かったかもわかってたのに急にわからなくなるっておかしくないですか?」


「あのなぁー、怪物を見つけ出すのはそんなに簡単なことじゃないんだよ!!

 怪物を察知する機械なんかも改良に改良を重ねてやっとここまで来たんだ。

 どこに行ったかおおよその場所が把握できるだけでも凄いことなんだよ!」


「・・・ちなみにどこまでなら把握できるんですか?」


「とりあえず建物の中に逃げ込まれない限り、つまり表を逃げ回ってるうちは把握できる。

 だが、建物内に逃げ込まれた時点で反応は消滅しちまうから、そこから先は消滅を絶ったポイントの近くにある建物を手当たり次第に探すしかない。」


「うわー地道な作業だー・・・」


「はぁ・・・まあ、やるしかないか。」


「とにかくヤツが消えたポイントまで移動するぞ!」



 それから僕らは最後に敵の反応を察知した住宅街にあるとある十字路までやってきた。

 住宅街とだけあって目に映るのは家、家、家、そして家だ。

 敵にしてみたらこれほどまでに追手を撒くのに都合のいい場所もないだろう。

 それだけに探す側であるこちらは骨が折れそうだ。



「というか、人ん家の中を探すんですか?」


「これも任務だ。多少のことは仕方あるまい。」


「まあ、どうしても我慢できなくなって見知らぬ人の家のトイレを借りるためにピンポン押した時と同じ感覚だと思えば家に上がるのもそんなに抵抗はないんじゃないですかね?」


「お前見知らぬ人ん家のトイレ借りたことあんのかよ・・・

 というか、家捜しするのとトイレ借りるのは別もんだろ。」


「とりあえず、手分けして探そう。30分経ったら一度ここに戻ってくるように。いいな?」


「「りょうかーいでーす」」



 いくら任務遂行のためとはいえ、知らない人の家に上がり込むことに抵抗のない人などいないだろう。

 だが、僕らの心配はまるで無駄だったとでも言うようにインターホンを押しても誰一人として応答することはなく、家の鍵は開きっぱでどの家ももぬけの殻だった。



「無用心だな・・・」



 小さく「お邪魔します」と一言告げて家の中に踏み込んでみれば、どの家にも家具などは設置されているものの、そこに生活観は微塵も感じられなかった。

 かと言って長年放置されているというわけでもなく、家の中には埃一つ見当たらない。



「・・・なんかモデルルームみたいだな。」


「どの家も完成されすぎてて面白みがありませんよね~つっまんね~・・・」


「どんな家を想像してたんだよ。」


「もっとこう!!ベッドの下を探したらエロ本出てきたぞー!とかドア開けたらゴミが雪崩れのように!とかそういうの期待してたのにぃ~・・・」


「はぁ~・・・一応これ逃げた敵を探すっていうのが目的なんだがな。」



 僕らは近場の家々に足を踏み入れては一部屋ずつ探して回った。

 だが、特にそれらしいものは見つけられず、約束の30分なんてあっという間だ。



「・・・そろそろ時間だな。ティンク、一度十字路に戻ろう。」



 僕はいつの間にか腕についていた腕時計を確認して男性と合流するべくティンクに声をかける。



「ティンク?」



 いつの間にやらどこかに行ってしまったのかティンクの姿が見当たらない。



「アイツどこ行った!!」



 2階の部屋を探していた僕は階段を下りてリビングへと向かうと部屋の中を一望し、ティンクがいないことを確認して部屋を出ようとした。

 だが、何を思ったのか僕はもう一度振り返って先ほど確認したはずの部屋をもう一度見渡す。



「なんか前にもどっかで見たことあるような気がするけど、気のせいかな?

 僕の家一軒家で別に引っ越すような予定ないもんな・・・」


「ピーターさん!ピーターさん!!」


「ティンクどこいたんだ!!」


「そんなことより見てくだせぇ!!近場のゴミ捨て場通ったらエロ本見つけましたよ!

 なんと・・・人妻ものです!!」


「・・・どうでもいいわ。」



 それからティンクを連れて急いで待ち合わせ場所まで走ったが、すでに予定の時間をオーバーしていた。

 十字路に戻ってくると男性が待ちくたびれたとでも言うように不機嫌そうな面持ちで僕らを待っている。



「遅いぞお前ら!!任務中は時間厳守!常識だろうが!!!」


「す、すみません。」


「まあまあそんなカリカリしないで~。」


「その一分一秒が大きな被害に繋がったらどうするんだ!!」


「大丈夫っしょーここら辺無人なんだし。」


「まあ、強いて言えば建物が壊れるくらいしか被害なんてで」



 ドーン



 足元から大きな衝撃が伝わり、耳には何かが爆発でもしたかのような音が鼓膜が破れんばかりに響く。



「なっ!!なななんだぁ!?!?」



 振り向けば住宅街を抜けた少し先に建っていた学校が何らかによって内側から破壊されたようだった。



「あれが怪物の正体・・・?」


「いや、ヤツらは自分の体が保てなくなると別の生物の体を乗っ取る習性がある。

 そして乗っ取った後、ヤツらはその中で力を蓄え膨張する。

 この爆発はそれによって引き起こされたということなんだろう。」


「ということは僕らが住宅街を探している間、敵は学校内で密かに力を蓄えていたってことか。」


「そういうことにな・・・何!?学校だと!?」


「いや、どう見てもあの建物学校でしょー」


「な、なんてことだ・・・」


「とにかく敵をやっつけないと!!」



 僕らは怪物を倒すべく瓦礫を起用に避けながら学校に向かおうとする。



「ま、待ってくれ!!!」


「どうしたんだよオッサン。さっきまでのやる気が全然ないじゃないか。」


「学校には・・・学校には俺の娘がいるんだ!!」


「ナ、ナンダッテー」


「ティンク!もう少し心込めて言ってやれよ!!」


「このままじゃ、娘が撒き沿いになっちまう・・・」


「でも、オッサンもボクの発言なんてスルーしてるし、別にいいんじゃないですかね?」


「はぁ・・・じゃあ、オッサンは娘さんや逃げ遅れた人の救出をお願いします。

 敵は僕たちで何とかしてみますんで!」


「おお!!ピーターさんやる気満々っすね!」


「こうなった以上は仕方ないだろう。

 というか住宅街がもぬけの殻だったのに学校には人いんのかよ・・・」



 成り行きとはいえ、僕らは男性に救助を頼み、自分たちで敵を倒すという無理難題をやってのけることになってしまった。

 とはいえ、すべては夢の中での出来事。

 夢の中なら怪物退治くらいちょちょいのちょいだろう。



「本当に出来るんですか?」


「あんなオッサンでもなんとか出来たんだし、なるようになるだろう。」


「言っときますけど、今回は想像力云々でどうにかなる夢じゃないっすよ。

 自分の力のみでなんとかしてくださいね。」


「やっべ!忘れてた!!」

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