第7項 『お願いしてください』
「こんにちは、チャールズさん、デュランさん」
名前を呼ばれた2人組は注視していた台の上から目を離し、俺たちの方を向いて笑顔を見せてきた。
「よお、おはようさんユーゴ!なんだ、お前がここに来るなんて珍しいな」
「おお、ユーゴくんじゃないか。君もなにか注文に来たのかい」
大きな2つの返事が返ってくる。2人は挨拶をしながら進行中の作業を一旦中止し、台を回り込んで俺たちの目の前まで歩いてきた。
「いえ、実はチャールズさんに用事がありまして。少しお時間よろしいでしょうか」
俺はカザキリに向き直ると2人を手で示しながら、サイネル語を使って紹介をする。
「この人はデュラン・スミスさん。このギルド館の鍛治職人のうちの1人だ」
「こ、こんにちは。カザキリソウイチと申します。よろしくお願いします」
通じない、とは分かっていても一応挨拶をするカザキリ。こうやって喋ってもらうことで自分はリズ語を話せませんというアピールになるので、全く意味がないわけではない。
「お?なんだいこの坊や、外国人かい!」
「ひぇっ!」
カザキリは急に大声で話しかけられ、驚きで一瞬飛び上がる。
デュランさんはいつも必要以上に声が大きいため、初対面の人間には大抵怖がられてしまうのだ。
「声は大きいが…心も大きい人だそんなに恐くない。こら、そんなに距離取らなくていいぞ」
無意識に後ずさりし始めるカザキリの首根っこを捕まえて元の位置に戻す。この子は本当に冒険者としてやっていけるのだろうか……。
気を取り直して俺はもう1人の、黒いマントを羽織った男性の紹介に入った。
「そしてこの人はチャールズ・プライスさん。俺と同じギルド職員だ。冒険者の資格も持っている。役職は……魔騎士」
「!」
魔騎士。その単語が聞こえた瞬間ハッと目を見開くカザキリ。
やはり、自分と同じ役職の人間はどうしても気になるものなのだろう。初めて見る自分以外の魔騎士をまじまじと観察し始める。
「俺に用事?そちらの外国人の少年となにか関係があるのかな?」
チャールズさんはカザキリの視線に気づくと、若干恥ずかしそうに腕を組みながら話を聞く態勢を整えていた。
(察しが良い。話が早くて助かる)
「実はこの子、御察しの通りサイネル人の子なんですけど、つい先ほど魔騎士の冒険者として登録されたんですよ。しかし冒険者のことについて全く知らなくてですね。スキルの基礎知識すらほとんど分からないんです
「なるほど、それで同じ魔騎士のチャールズに手ほどきをして欲しいと、そういうことだな!」
俺の話の続きを、デュランさんが大きな声で補足する。
「そうか〜。見るにその子、リズ語話せなさそうだもんね。読み書きも出来ないとなると口頭で教えるのは難しそうだね」
「はい。なので実際に見せた方が早いと思いまして。アミュレットが手に入る明日、チャールズさんのスキルを見せて欲しいんですけど……良いですか?」




