第5項 『待ち合わせしてください』
長い長い廊下を歩き終えてギルドカウンターの横に出ると、丁度見知った顔2つと目があった。
「よお、ユーゴおはよう」
「あ、ユーゴくん。どうしたの?こんな朝早くから裏館に用事なんて」
俺の同僚の天の目、アルクとウェイライである。
「おはよう……。いや、この子が冒険者になりたいって言うから案内してたんだ。リズ語が分からなくて困ってたからな」
俺はカザキリの頭をポンポン叩きながら、先日でっち上げた身の上話を2人に語って聞かせた。
「へぇ〜、そんなことが……大変だったな君」
「モンスターに襲われて一行全滅なんて……かわいそう……」
朝からする作り話としてはやや重くしすぎたか。2人とも神妙な面持ちに変貌してしまう。
ウェイライなど、瞳が潤みだして今にも涙がこぼれそうだ。本当に、繊細すぎる女の子だ。
しかし、2人の同情を買えたことはラッキーだったかもしれない。俺はここで2人にある提案を持ちかけることにした。
「なぁ……そんなかわいそうなカザキリソウイチくんのために、ちと一肌脱いでくれないか」
「ん?なんだ?」
「なになに?あたしに出来ることならなんでもするよ!」
2人とも食いつきが良い。まあ、そういう性格だと知っているからこそ言うのだが。
「この子、冒険者に関しての知識が皆無に等しいんだ。アミュレットが完成次第すぐにスキルについて教えてやりたい。お前ら、明日暇だったら付き合ってくれないか」
なんだそんなことか、とでも言いたげに力強く頷く2人。こう、二つ返事で了承してしまう適当さには困らされることもあるが、今回は心強かった。
「もちろんいいぞ。俺で良ければ知ってること全部叩き込んでやる!カッコいいスキルの見せ方もな!」
「意気込んでるところ悪いが、カザキリはサイネル人だからリズ語は分からない。教えるのは俺がやるから、アルクは弓術士のスキルと戦法を見せることに集中してほしい」
なんだ、と露骨に残念そうな顔をするアルク。本当にこの男は、世話好きで仕方のない人間だ。
「あ!やっぱりサイネル人なんだ!あたし、割とサイネル語喋れるからお話できるかも!」
と、そこにぴょんぴょん 飛び跳ねて俺と目線の高さを揃えながら話に入り込んでくるウェイライ。
「ああ、そういえばお前サイネル人だったか。それじゃあ、もしかしたら少しくらいは指導を頼むかもしれない」
「よぅし!任せて!みっちりシゴいたげるからね!」
ドンと胸を叩きながら高らかに宣言するウェイライ。だがしかし……。
「お前もあんまり人に教えられるほど冒険者歴長いわけじゃないけどな。まだレベル20のままだっただろ確か」
「え……あ、いや!それはまだ試験を受けてないからだよ!実力は数字以上のものがある!うん、自負してます!」
たしかに、ウェイライは強い。つい半年ほど前にスキルを降ろしてもらったばかりだと言っていたが、そうは思えないほどに。
確かな実力がなければ務まらない天の目としての役割を、きっちりと果たしている。
しかしアホの子である。やはり人にモノを教えられるようなタイプの人間ではない。
「……まあ、とりあえず頼む。あ、それから……チャールズさんの居場所知らないか」
「チャールズさん?ああ、さっき鍛冶屋にいたなそういえば。なにか用か?」
鍛冶屋……武器の新調でもしてもらっているのだろうか。
「いや、チャールズさんも明日のカザキリの指導に誘おうと思ってんだ。情報ありがとう。それじゃあ」
「ん、そうか。それじゃあ、また後でな」
「カザキリくんも!またね〜!」
「あ……この方もニホン語話せるんですか?」
ウェイライはさっそくカザキリにも通じるサイネル語を使って挨拶を交わしている。
まあ、アホの子とはいってもカザキリにとっては言葉の通じる貴重な人材だ。会話できる相手が増えたことは喜ぶべきだろう。
「まあ、そんなところだ。ほら、いくぞカザキリ。チャールズさんがどこかに行っちまう」
俺はそのままカザキリを引き連れ、目当ての人物を探し求めて鍛冶屋へと向かっていった。




