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じだらく魔女の森のレシピ  作者: 秋野 木星
第一章 自堕落魔女の森のレシピ
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新米の手巻き寿司

寒くなりましたね。

 今日は、雲一つない抜けるような青空です。

魔女のラクーは珍しいことにお日様が出る前に目を覚ましました。

こんなに早く起きたのは久しぶりね。

洗濯機くんに衣類の洗濯をさせて、食器乾燥機から洗い終わった食器を出して棚の中に片付けます。

「最近は滅多と杖をふることもなくて、魔法を使うのを忘れそうだわ。」


いつもの朝の水やりには、ちょっと早い時間です。こんなに早く水をやったら花たちが水の冷たさに驚いて飛び上がるかもしれません。

「ちょっと早いけど朝ご飯にしましょうか。」

ラクーはヨーグルトの中にオリゴ糖を一滴たらして、干しプルーンを入れます。これは大学病院の消化器外科の先生に教わったラクーの秘密のお薬なのです。

そして乳酸菌たっぷりのスワローズドリンクを、片手を腰に当ててグビッと飲み干します。


そして金のラベルがついたインスタントコーヒーの瓶から、黄色い取っ手のついたスプーンで猫ちゃん模様のマグカップに粒々のコーヒーの粉を入れます。そこに少し多めのミルクの粉を入れたものがラクーのお気に入りなのでした。


お湯を注いだインスタントコーヒーから朝の匂いが立ちのぼって来ます。

「ふふ、ネット小説を読みながら食べましょう。」

ラクーはヨーグルトを片手に、ブクマしていた小説を読んでいきました。

食べる物がなくなると、お気に入りさんたちのサイトにお邪魔します。

「まぁ、ここでは何をやっているのかしら?」

恋愛小説を上手に書くための講座が開かれている活動報告がありました。ラクーは笑いながらコメントを残します。


夢中になってそんな事をしていたら、洗濯機君に呼ばれました。

「やれやれ、洗濯物を干しましょうかね。」

家の裏庭に出ると、ダンナーが見落としたゴミ袋が一つありました。ラクーが病気をしてからは、いつもダンナーがゴミ出しをしてくれるようになったのです。

このゴミ袋は、カイガラムシに引っ付かれたハーブの枝を取り除いたものと料理に使った玉ねぎの皮が中に入っているものでした。

これは私が捨てて来ましょうかね。


ラクーは久しぶりに、森の小道の先にあるゴミステーションまて歩いて行きました。

田んぼではスズメたちがチュンチュンと(かしま)しく朝ご飯を食べています。

朝の空気がラクーの頬を撫でていきます。

「んーーーっ、いい天気!」

ひんやりした空気を胸いっぱいに吸って、思わず笑顔になります。

ゴミ捨てもなかなか楽しいわね。


洗濯を干して、ネットで頭にくるほど強いハムスターと戦っていると、あっという間にお昼ごはんの時間です。

昨日の夜の残り物をササッと食べた後で、買い物に行くことにしました。

「夕食は何にしようかなー。」

スーパーの中を歩いていると、今日はカニ蒲鉾(かまぼこ)が特売でした。

ラクーの頭の中に【新米で作る手巻き寿司】が、ほんわかわぁんと浮かびました。


ツヤツヤ光る新米にいろんなものを巻いて食べたら美味しいわねー。


ラクーは後戻りをして、野菜コーナーで大葉とキュウリを買いました。

ねぎトロもいいわね。シーチキンの缶詰はあったから、納豆と手巻きずし用のりを買っておきましょう。

今日は金曜日です。お酒もすすみそうなのでビールもカゴに入れました。


手巻き寿司は簡単に出来て豪華に見えるので、ラクーのうちではよく食卓に上がります。冷蔵庫に豆腐があったので熱々の湯豆腐も作ることにしました。


手巻き寿司ではシーチキンマヨネーズと納豆が味の二大巨頭です。

大葉を洗って半分に切ったものと、塩ずりしたキュウリを棒状に切ったものが緑の彩です。

ラクーが大皿に切ったものを並べていると、娘のネムルーが仕事から帰って来ました。薄焼き卵と湯豆腐をネムルーに任せて、ラクーは畑にネギトロに入れるネギを採りに行きました。


真っ暗な中で細めのネギを手探りで採るので、枯れて黄色くなったものが混ざっていて娘のネムルーと大笑いです。

「ロシアンルーレットやね、これは。」

「暗くなる前に採っとけばよかったわ~。」

二回目にやっと青いネギが捕れました。刻んで水にさらして、水けを絞ったら中落ちのトロの中に投入です。


ここでラクーの出番です。亡くなった義母のララ直伝のすし飯を作るのです。

煮物どんぶりに使う大ぶりの器の中に、砂糖を山盛り入れます。そこに塩をほんのちょっぴり入れて、砂糖が湿って解けるだけの酢を入れます。

炊き立ての新米ご飯をぶち込んで満遍なく切るように混ぜれば簡単すし飯の完成でぇーす!

ララはちゃんと団扇(うちわ)まで用意してユリワの中で作っていましたが、洗いものがめんどくさいのでラクーはどんぶりの中で全て済ませるのです。


しかしさすがに新米、つやつや光ってなんとも美味しそうです。☆*


お箸が招いたのかムコーとダンナーも帰って来ました。


手巻きの中に入れるのは、漬物もいいですね。

沢庵(たくわん)があったので、千切りにしてゴマをふりかけました。明太子高菜やキュウリのしば漬けも味のアクセントになりそうです。


 ごっくん。この手巻き寿司の美味しかったことといったら!


ラクーはお代わりのすし飯を作ったんですよ。


新米は正義です!

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