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じだらく魔女の森のレシピ  作者: 秋野 木星
第一章 自堕落魔女の森のレシピ
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春を夢見て

秋晴れの日のガーデニングは清々しいですよね。

 魔女のラクーはピアノの上に置いてある紙袋をチラッチラッと眺めます。

そこには実家のママンから貰った赤いチューリップの球根がたくさん入っているのですが、めんどくさがりのラクーはなかなか重い腰があがりません。

うーん、11月に入ったしもう植えないとダメよねー。

本当は遅いくらいです。庭のあちこちから水仙の芽が顔を出してきているのですから。


ラクーが森の外れの雑貨屋へ買い物に行くと色とりどりのパンジーが勢ぞろいしてラクーを迎えてくれました。

あらあら、可愛い冬の妖精たちね。

冬から春にかけての庭の彩に、ラクーはいつもパンジーを植えているのです。今年はゴテチャの生きのいい苗も置いてありました。

白と薄ピンクのゴテチャをバックにしてパンジーを植えるといいかもしれないわね。そうそう赤いチューリップの球根も側にまとめて植えましょう。


やっとやる気スイッチが入ったラクーは花の苗を腕いっぱい買って、(けいよん)で帰りました。


 まずは植える場所をスコップで耕します。

夏に植えていた花の根っこがたくさん出てきました。それを土をふるいながらバケツに入れていきます。これは稲を刈り取った後の田んぼに放り込めばいいでしょう。

ついでに草を取っていたら、土の中で芽を出しかけていた水仙の球根をひとつ真っ二つに切ってしまいました。

あら~ごめんなさいねー。亡くなった義母のララがあちこちに球根を植えたので、どこに何が植わっているのかわからないのです。奴らも土の中で勝手に増殖していますしね。

下手に草取りをしないほうが良さそうです。ラクーはサッサと鎌を片付けました。


パンクロッカーの頭のように伸び放題だった萩の枝や枯れたコスモスなどが田んぼの片隅に投げ込まれています。その上にラクーはバケツの中身をザザッとあけました。

こうしておくと働き者の魔法使いのダンナーが、秋が深まる日の風のない日の朝方に野焼きをしてくれるのです。


耕した土に真っ白な有機石灰をまいて土にすき込みます。

酸性を中和とか難しいことはよくわかりませんが、こうするとなんとなくいい感じがするのです。

その上に花の土をまいて軽く土に混ぜ込みながら、ふんわりしたほかほかの花のベッドをつくります。

苗や球根を植える位置においてみて全体のバランスを調整します。

デザインは気にしません、自然は自分たちで勝手に環境を作っていくものですから。


あら、肥料を混ぜるのを忘れたわ。

まあいっか。ちょっと地面にばらまいておいて、春先に追肥をしてやることにいたしましょう。


ジョウロで水をたっぷりとやって、ラクーはミシミシいっている腰を伸ばしました。

花たちはラクーの顔を見てにこにこと笑っています。

ふふん、いい感じ。これは自分にご褒美をやらなくてはね。


赤く色づいた紅葉の木の下に置いてあるガーデンテーブルで、お茶をすることにしました。

お茶と言ってもラクーがキッチンから持って来たのは、ビールと干し芋です。


秋風に吹かれながらラクーが寛いでいると、森の小道をコロボックルの子ども達がランドセルを背負って帰って来ました。

「おかえり~!」

「帰りましたー。」「こんにちは!」

ラクーがいつものように子ども達へ声をかけると、子ども達も笑いながら挨拶をしてくれます。


中には植えたばかりのパンジーに手を振って通っていく子もいました。

パンジーたちもフリフリと顔を揺らして、子ども達に応えています。


ラクーは春になって咲きそろった花壇の花たちを思い浮かべながら、ビールをグビッと飲むのでした。

労働の後の一杯は美味しいです。(笑)

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