悪夢を見せよう。
ヴィラン側
「おかえり、アリサ。兄とは仲直りできたかい?」
「…」
「相変わらず、だんまりねぇ」
男の問にアリサは答えない。あとに女が嫌味を言おうとも口を閉ざしたまま、かと思いきやか細い声でこう言った。
「どうでもいい。あれは敵」
冷たく言い放った。
「いくら敵でも、実兄にそれは酷いな。」
渋い声の歳を食った男がそう唸る。アリサは見向きもせず暗闇に消えた。殺伐とした雰囲気の中、アリサに問うた黒服の男はどこか楽しそうであった。
「それで、これからどうするの?ねぇ、王様?」
「うむ、もう警備隊も気づいてる頃だろう。もうこそこそとは、できんな」
「何を言う、最初からこそこそなどしてない。誰も気付かなかっただけだ……虫唾が走るな、人間」
忌々しく言い放つ。憎しみの込められた言葉。重く、哀しく響いた。
女は言う。
「漸く。漸くこの時が来るのね。」
「取り込み中、失礼するぞ」
白衣を着た男が入ってきた。まだ二十代ぐらいの若い男。
「俺はやることはやった。これでお暇する。」
来てすぐこの場を離れようとする。黒服の男が白衣の男に刃を向ける。白衣の男は立ち止まる。
「なんの真似だ。殺されたいと?お前に自殺願望があったのか」
クツクツと笑うがドスの聞いた声で脅す。それに負けじと男も言う。
「馬鹿か、俺は依頼は受けると言ったが、誰も仲間になるとは言ってない」
そう言ってもう一度歩き出した。
「健闘を祈るよ。良い年を」
ギィーと扉を開いて出ていってしまった。黒服の男は不服な顔だったが、すぐにまた笑い出すのだった。




