二
途中でミックスという語が出てきますが、ハーフですと差別用語になりますので海外で呼ばれている方にいたしました。
「どうかした、世泉。上の空だけど」
「いや…」
「そう、ここで話しずらいことなら仕方ないか」
変に気を使わせてしまったみたいで申し訳なかった。昨日のことを話すか否か、迷っていたが話すことにした。陽和は高校に入って初めてできた親友。隠し事などいっこもない。一緒にいて楽。私が安らげるもう一つの場所。
学校が終わって小さな公園にきた。昨日の夜のことをすべて話した。何が起こるわけでもないけど、起こらないとも限らない。何かをするに人は多いほうがいい。陽和は一瞬考えるようにしたが、なんとも言えないような表情だった。
「話せてよかった。ありがとう」
「ええ、でも良くないことが起ころうとしているのは間違いないかもね」
「陽和も何かあった?」
一瞬考えるように、目を伏せた。
「…どこから話すべきか」
腕を組み空を見上げた陽和。ふと思い出したようにポケットを漁って私にそれを見せた。そしてようやく口を開いた。
「これ、私の家の前に落ちていたの。最初は子供の遊びかなって思ってたけど、すべて見終わる前に冗談じゃないって感じた。綿密すぎて怖かった、っていうのが正直なところ」
そういう陽和を横にその紙切れを見せてもらった。びっしりと隙間なく文字が並ぶ。最後に象形文字みたいなもので書かれてある。内容としては、戦闘用人工知能、人造人間の開発、量産。これは海外にはもう既にあるものなので特に驚きはしない。陽和の言っていた通りここまではまだ遊び程度にしか感じない、けれど次に書いてあったことそれは想像の範疇を超えるものだった。
「人間を改造……改造人間」
人間は能力を持つようになり様々な文明を生み出した。だが生命体そのものを改造、開発したりはしなかった。その領域には入らないのが暗黙の了解になっていたのも理由の一つ。またこの文章には人間以外の生命体の改造も事細かに書かれていた。
「そこまで読めたのはいいけど…その文字分かる?」
私は十になって、6年ほどはずっと北の国にいた。言語は東西南北、すべての国で共通ではある。しかし、私が住んでいたところの北の街は、度々、違う言語を話していることが多かった。それでは不便でしかたなく、私もその言語を覚えた。その文字に目を通すと、また非現実的な開発プログラムが書いてあった。
「あと、人工生命体」
「それって国共通で、禁術なはず。確か大昔の錬金術師パラケルススしか成功したことのないって言われてる。しかもそれが本当なのかは定かではない、と本にはかいてあったけれど…今の時代背景じゃ何とも言えないのも確か」
そして最後にこう書いてあった。
「『白昼、赤い月の満ちる日、これ来たれり。我これに君臨す。』」
読み上げると、陽和と私は見つめ合って黙った。言葉を飲み込んだ。何も言えない。これがもし本当だとしたら、人間はだれ一人として生き残るのは不可能に近い。対策は早いうちがいい。しかし白昼の赤い月が満ちるというのが今日だ。恐ろしくて、背筋が凍る。私たちはうつむいた。
「ねぇ、それ何処で知ったの」
突然後ろから淡々とした声で尋ねられた。二人同時にそちらを向くと、そこには白に近い金髪の美青年が立っていた。彼を見たとき一瞬で誰だか分った。入学した時から有名だった。たしか東国と北国のミックスで成績もよく、好青年だった。
「一条ルカ……聞いていたの…全て?」
「いや、ホムンクルスのあたりから。何処で知ったのか、答えてくれるかな?」
笑ってはいるが目が笑っていない。どうすべきかと陽和と目を合わせ頷いてすべてを話すことにした。彼の口ぶりからして彼がこれから起こることを肯定しているようにもとれる。再び恐怖にかられた。
彼との初の会話がこんな無粋なことだとわ思わなかったので微妙な気持ちになった。




