一
午前十一時三十分。僕達はとある焼却炉の前にいる。じっと見つめた。何が起こるわけでもないけど。もしかしたら、この中で死ぬかもしれない。そう呑気に思っていた。
「雪乃、準備」
「分かった。待って」
千歳に呼ばれて僕は準備を始める。僕も千歳も、そして向こうで隊員に指示を出している椿も口数多い方ではない。千歳は病気といのもあるが、椿は性格がそうなのだ。自分は、昔任務で喉を負傷し、あまり声を出すことが出来ない。だからと言ってはなんだが、調査任務にはもってこいの三人だ。
漸く準備も終わり、いざ戦場へ。緊張の面持ちの中、僕はまた呑気なことを考えた。それが声に出ていたみたいだ。
「アイス、食べたい」
「お前呑気だな。流石に俺でも、呆れる」
椿が横目にそう言った。すると千歳も僕に乗っかってこう言った。
「僕、ケーキ。苺のやつ。」
「お前もか」
ため息を疲れた。普通、これから戦場へ行く時にこんなくだらない事を考える人間は極少数。そもそもいないかもしれない。つまり椿は当然の反応をしただけ。
しかし、緊張で気が狂ったのか、はたまた天然か。
「俺は、苺大福がいい」
「人の事言えない」
「同意見」
彼がそう言ったら誰がこの場の緊張感を保てるのやら。残りの隊員は気まずそうに苦笑。
「隊長、そろそろ時間です!」
そう椿に言ったのは、まだうい初々しい新人の青年だった。名前は覚えていない。否、聞いていなかったというのが正しい。その言葉に場の雰囲気が変わる。やる時はやるのが、僕たちのモットー。
正午になると同時に焼却炉の中へと飛び込んだ。帰りはどうやって登ろうか、とまた場違いなことを考えていた。
千歳、椿、僕の三人は単独で行動し、その他の隊員は二人、三人組を作っての行動だ。できるだけの戦闘は控えるようにと言われている。ならば、少数で行動するのが得策である。小回りも効く。千歳は、先に調査中である、琥珀と蛍と合流し、帰り道の確保をすることだ。椿は再深部。僕は警備のヤツらを叩いていく。
なので、必然的に一番最初に行動しなければならない。その十分後ぐらいに皆が動き出す予定。
開けたところに落ちた。そこまで深くはない。まだ一階部分ということだろうか。あの入口はきっと予備のだったのだろう。白を基調とした広間のようなところだった。すぐ二人と合図をとって、目の前の通路へ僕は駆け出して行った。
早速、気配を感知し前を見据える。
「…人……違う」
人間の気配とはまた異なったものだった。人と何か混ざっているような。気分が優れない。
そこに姿を現したのは、人形の女。それもこちらに気づき、チェンソーの様な刃物を出して近づいてくる。正体を確認すべく、瞬時に近づいて氷結させた。
「機械、ロボット…」
中身を引き裂いてみると、機会そのものだった。だが皮膚は人間のもの。つまりは、陽和が持ってきたあの文書のアレだ。
「人造人間」
動かなくなったそれを一瞥して、先を急いだ。
漸く再深部の方まできた。が、おかしなことが一つ。今まで誰一人、人間を見なかった。琥珀と蛍は気配を消しているのは当然。所々に、それを知らせるマークが書いてあった。ここまで人の気配がないとおかしい。僕はさらに先を急いだ。




