八
これから、本編に入ります。様々な視点で書きます。読みにくいこともあるかと思いますが、どうぞ宜しくお願いします。
日が変わって、朝の五時。
「先輩。ご無沙汰してます。」
私は伏見に来ていた。実家の神社には行かず、警備隊本部へと足を運んだ。宇治の街が消滅したと伝えるため。そしてこれから起こること、あの兵器のことを伝えるため。
建物の中に入ると、皆どこかよそよそしかった。しかしまだ事件のことは、全員には知らされていないと踏んだ。そこで丁度すばるを見つけ真っ先に声をかけた。昴は目を見開く。千歳はきっと伝え忘れたのだろう。
昴の部屋へ通される。私の話したいことがなんとなく想像がついているのだろう。誰かに聞かれてしまうのは混乱を招く。まだ定かではないからだ。
「お前、どうして…いや、無事でよかった」
昴は私の肩を掴んだ。優しい手つきだった。そんな、心配してくれているのに配慮を忘れない彼のことが私は好きだった。
様子がおかしいと感じたのは気のせいか、いつも通りクールで硬派な雰囲気に戻った。
「千歳には連絡してたんですけど、その様子ですと聞いてないみたいですね」
改めて確認をとった。彼はすぐ、聞いてない、と答えた。少々腑に落ちていないような顔。
そして、今まであったこと、虐殺事件のことから、文書のことまで全て話をした。昴は眉間に皺を寄せて考え込んでいえうようだ。私はそばに置いてあったポットを手に取り、ゆを沸かして紅茶を入れる。何度か訪れたこともあり、慣れた手つきで昴の元へ運んだ。相当考え込んでいるようでまだ渋い顔をしていた。
「先輩、考えすぎは良くないですよ。眉間に皺を寄ってます」
カップを机に置いて、そっと昴の眉と眉の間に人差し指をおいた。再び彼の目は見開かれた。さっきよりも大きく。
「おい、陽和」
「えと、どうかされました?」
少し低い声に身を引いた。気に触る行為だっただろうか、問うた。
「そういう訳じゃないが、あまり他のやつにこういうことするなよ。」
「は、い?でも、先輩以外に男性とはあまり関わりないですから」
そう私は笑った。昴はどこか浮かない顔をしたが気にしないでおこう。あまり人の心を読むのは得意な方ではないし、どちらかというと一人が楽だ。
「さっき千歳から情報が入ったんだが、お前の通ってた学園の地下に、どうやら何かあるらしい。」
「地下ですか」
特にそういう入口みたいなものは見たことがない。普通の学校だったのだ。やけに広かっただけ。思い当たる節がなく、力になれず肩を落とした。
しかし、それも問題ないようで、千歳が見つけたと言った。調査は明日、正午に行われる。
「先輩も行かれるんですか。」
「いや、俺は上で調査することがあって、そっちには雪乃と千歳そして椿が指揮する事になってる。」
全員で十人。それで調査するようだ。果たして、何かあるのか、ただの地下であるか。行ってみないとわからない。どれが正解かなんて誰にもわからない。やれることをやるだけ。
心配そうな顔をしていたのか、昴に大丈夫、と頭を撫でられた。あったかい。太陽みたいな笑顔。
____お前はもっと喋れ。
____お前は言葉が足りないんだよ。
____勿体ないな、お前。
______貴方たちに何がわかるの。
嫌なことを思い出した。ずっと言われてきたこと。もう少し感情を表に出してもいいんじゃないか。お前なんか足りないよな。そんなことを、よく知りもしないのに、勝手な屁理屈で私という人間を作られた。けれど、昴は違った。私を見てくれた。
___なんで今思い出したんだろ…
「陽和、どうかしたか?」
挙げ句の果て、昴にまで心配された。
「いえ、私もお手伝いします。」
「それはありがたいが、危険だ」
「いいえ、今、ちゃんと生きてます。戦えます。それは先輩が一番知ってることでしょ?」
笑って見せた。怖くなんてない。あなたに守られてきた私。だから次は私が守る番だから。




