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第5話 学園始まります

「き、緊張するな。うまくやっていけるだろうか?」

「心配すんなって俺がついてるんだ! お嬢様に仇成すやつぁ、かたっぱからぶっとばしてやんよ!」

「いきなりぼっちになりそうな前振りだなあ」


 本日はお嬢様の入学式。学院には従者2人まで付き添いが可となっていたので付いて来たのだが……


「ちょっとそこのあなた。後ろの二人はなんですの?」

「ん、従者だが?」


 ちょっ、ちょっとお嬢様、そのお方にタメ口はまずい、まずいんですよ!

 そこに立っていたのは……オレの元ご主人様、そうゲームの中の悪役令嬢であり、この国の公爵家の一人娘、ティアラース・オーム・デュークハルトその人であった。


「こ、これはこれは、公爵家のティア様じゃありませんかぁ。いや申し訳ありません、うちのお嬢は田舎から出て来たばかりで……」

「な!公爵……申し訳ありませんでした!」


 オレはもみ手をしながらへこへこと頭を下げる。許してくれないかな?許してくれないよなあ。

 しかし、ティア嬢はオレの予想に反して、ため息を一つつき、


「…これからは気をつけなさい」


 と言っただけだった。

 おかしいな。いつものティア嬢だったらここで切腹を命じてきても不思議じゃないんだが。

 そういえばなんだがやつれてるような。お腹でも壊してんのか?


「それよりも今従者と言われましたが、学院に従者を連れて来られたのですか?」

「は、はい。確か2人までと書かれておりましたので……」

「確かに規則にはそうありますが……今時……」


 ああ、あれか。マニュアルにはあるが、一般常識としてやらないってやつか。


「良いではないか。私も従者同伴であるぞ」

「ヘリデリック王子……」


 お、でたな攻略対象。リアルで見るとほんとイケメン度がパネエな。

 ん? しかしどうしてティア嬢と一緒に? まだ入学当時は仲が良かったのか?


 1年目の夏休み明けがゲーム開始時期なんだが、そのときにはこの王子様は随分ティア嬢を避けていた。

 少なからずティア嬢はこの王子に好意を抱いていることもあり、避けられる度に周りに当たり散らかしてたっけ。


「はぁ、田舎から出て来られたなら覚えておきなさい。学院に従者を連れて来るということ、それは保護者同伴で登校していると見られても仕方のないことです」

「ハハハ、ティアは手厳しいな」

「もちろん王子は別ですわ。王子に万が一があっては困りますからね。護衛は必要なのです」


 そう言うと後ろをみやる。そこには筋骨隆々な青年が立っていた。いかすハンサムマンだが、攻略対象ではなかったはず。その後のアプデではどうなったかは知らないが。


「父上も大げさなんですよ、わざわざ剣帝をつけるなど」

「そんなことはありませんわ。王子はこの国の希望ですから!」


 ティア嬢がいい笑顔で答える。

 くっ、この王子いずれこのティア嬢を捨てるんだよな。

 ふっ、オレが爆裂魔法を覚えた際にはまっさきに犠牲になってもらおう。


「申し訳ありません。実はこの者達にも教養を身につけさせようと思っておったのです。それはまずいのでしょうか?」

「従者も一緒に授業を受けさすってことですか?」

「はい」


 ティア嬢は複雑な顔をする。まあ、一人分の学費で3人の授業を受けさそうってんだからそりゃいい気はしないよな。

 もちろん発案者はオレだ。この学院には魔法学習がある。そう魔法だ!魔法使いたい!


「ハハハ、それはいい案だな! 別にルール上は問題ないだろう」

「貴族らしからぬ発想ですね……あなたのような方が学院の評判を落とすことにならなければ良いですが」

「黙って聞いてりゃ……」


 ――ゴスッ


「お前は黙っておけ」

「なんでだよぉ」


 ネイリスさんにどつかれて、涙目で抗議するワンコロ。


「そ、それより早いとこ教室に行かないと! ほら、皆もう入ってるぜ」


 これ以上ここでぐたぐたしてて、やっぱり従者は無しとかなったら困る。ちゃんと王子の言質もとったしな。今の内にさっさと混ざりこんでおけば大丈夫。


 しかし、暫く見ないうちに随分しおらしくなった悪役令嬢さんである。

 いつもならもっとこう、刃傷沙汰になりそうなぐらい興奮してそうなんだが。

 今もまた、胸の辺りに手をやってスカスカしている。大丈夫、貧乳はステータスですよ?


「ハァ、ジョセフィーヌ……いったいどこへ……」


 なんか呟いておられる。

 オレはそっと手をティア嬢の額にあてる。


「な!? 急になにを! 無礼者!」

「い、いえ、なんか元気が無いようでしたので、大丈夫かなと思いまして……」


 ティア嬢はキッとオレを睨んで来る。


「あなたごときが触れていいものではありませんことよ!」

「ただしイケメンに限るって奴ですか?王子のような」

「ななな、何を急に!」


 ティア嬢は王子の方を見て顔を赤くさせてオロオロする。


「ほら王子、ここは空気を読んで」

「ハハハ、お、ティア結構熱いじゃないか。大丈夫かね?」


 王子に額を触られてさらに上昇するティア嬢の体温。


「二人とも分かってしてらっしゃるでしょう!?」

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