表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/21

第18話

 今日のお嬢様は随分ご機嫌のようだ。


「なにか良いことでも有りましたかな」

「ああ、セバスチャン。私は今日一つ大人になったようだ」

「えっ!?」


 ま、まさか……


「あ、相手は誰ですかな? フェン介? ジョフィ?」

「ジョフィだな!」


 なんと! いったいどこまで……これは至急ご主人に報告せねば。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 フフ、ほんとジョフィには色々教えられてばかりだな。

 ううむ、いかんいかん。こんなニヤけた顔ではな。もっとキチンしないと。

 鏡の前に座っていた私は顔を叩き気合を入れる。


「よしっ、今日も特訓だ!」


 気合を入れた私は公爵家の中庭に行く。


「おや、ネイリス殿、今日も素振りですかな?」

「はい。ここのところ、セバスチャン達が引越しの準備で忙しいようなので相手がいないのですよ」

「そうですか、ならば拙僧がお相手いたしましょうか?」


 このお方は公爵様の3人の剣心の1人、仕込錫杖を武器としている。私と同じ聖属性が得意なお方だと聞く。


「それは誠ですか! ぜひにお願い致します!」


 今日は幸運だ。ぜひこの機会にご教授を賜ろう。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ぐぉっ、まさかこのような小娘が捨て身の初撃だと?」

「ハッ、しまった。さっきジョフィに言われたばっかりなのに、ついいつもどおりやってしまった」


 なんだと? これをいつもどおりだと?

 小娘が剣心になるなどと、バカバカしいにも程がある、ちょっと揉んでやろうと思ったのだが。


「それは感心いたしませんな。このようなことを普通の鍛錬で繰り返していると? 鍛錬で怪我をして本番で使い物にならないと意味がありませんぞ」

「いや、まったく申し訳ない」


 しかし筋は良かった。この私が受けきれないとは。


「なにゆえ其れ程までに力を欲するのか?」


 これは異常だ。あの太刀筋、確かにこれを繰り返し修練を続けているように見受けられる。

 上達はするだろうが、生傷が絶えないだろうに。


「ティア様の為、自分の為、それに……私を信じてくれる皆の為、私は強くならなければいけないのだ!」


 そう真っ直ぐな瞳で言う少女。

 ハハ、これは参った。何がちょっと揉んでやろうだ、もう立派な剣心であるな。


「合い分かった。拙僧も本気を出そう、掛かってくるが良い!」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「おい! その傷どうしたセイジョウ! 襲撃でも受けたのか?」


 鉄壁のセイジョウに傷をつけるなど、どこの手の者だ!?


「ハハハ、これは拙僧の油断の後ですな」

「いやいやお前、油断で傷がつくような奴ではなかろう」

「そうだオレ達でもかすり傷一つつけるのがやっとなのに」


 これは至急警備を増強せねば。


「何か勘違いしておるようだが……この傷はティアお嬢の剣心につけられたものだ」


 なん……だと?


「お、もしかして3人がかりで来られたか?あの小僧の素早さは目を見張るものがあるし、魔族のじいさんも只者じゃなさそうだったしな」

「いや、これはネイリス殿1人につけられたものだ」

「……それは一対一でやられたってことか?」


 あの16歳ぐらいの少女にか? ありえんだろう。


「その通りだ。いやはやちょっと揉んでやろうとしただけだったのにな」


 そいつは興味深いな。


「明日は俺が行こう」

「いや、暫くは動けないだろう。なんせ徹底的に鍛えてやりましたからな」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 これは参ったな、少々打たれすぎたか。

 私は傷だらけになった体を夜風に当てる。

 ジョフィが帰ったら回復してもらわねばな。

 と、そこへジョフィを背負ったフェン介が帰って来た。


「どうしたフェン介、ジョフィを背負って。なんかあったのか?」

「いやこいつ、急に倒れて動かなくなったからよ」


 そう言って長椅子にジョフィを横たえる。それを見てセバスチャンが近づいてくる。


「どうしましたかな。む、これは……肋骨がやられていますな」

「な、なんだと!」


 フェン介が言うことには、私が帰って来てからすぐ迷宮にとって帰ってボスをたおして来たらしい。

 それも私が危険に会わないようにする為だ。

 ジョフィから見て、あのボスは私には無理だと判断したのだろう。だからあのとき……悔しいな。


 いや、ジョフィが判断したなら間違いは無い……無いのだろうが。私はまだまだ未熟だと言うことか。

 せめて一言……いや、そうだな、私が自分で気づかねばならないことだったのだろう。敵との力量差を測るのも大切な技量の一つだ。


「また暗い顔してるなお嬢様」

「ジョフィ……気がついたのか?」


 ジョフィは私の体を見ると、回復魔法を掛けてきた。


「何をしている。お前の方が重症なのだぞ、先に自分を」

「お嬢様。お嬢様がオレのことを宝だって言ってくれるのと同じように、オレもお嬢様のことを大事な宝だと思ってる。そんな宝を傷がついたまま放って置けるはずがない」


 私の体に暖かいなにかが流れる。

 知らず私はジョフィを抱きしめ涙を流すのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「おいセイジョウ、お前嘘ついただろ?」

「はて、なんのことですかな?」

「あの小娘、今日も元気に鍛錬してるぞ」

「はあ!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ