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第14話

「その者達がおまえの剣心か?」


 ティア嬢に連れられて豪華な公爵家の一室に案内されたオレ達。

 そこへ、ティア嬢の父上、すなわちこの国の公爵閣下が入って来てオレ達を見てそう言う。何? 剣心って何? るろったりするの?


「その答えはまだ早いですわお父様……でも、そうですわね……」


 ティア嬢がなにやら考え込んでいる。


「お嬢様、剣心ってなんのことです?」

「さあ、私も聞いたことないな」

「あれじゃね、健康診断でもすんじゃね」

「なるほど、違うと思うな」


 フェン介はバカなんだろうか。ああバカだった。


「……ティア、剣心を見つけたから外泊しておったのではないのか? まさか護衛もつけず?」

「あ、はい! この者が剣心です!」

「そうか、ふむ、少し力量を試させてもらっても良いか?」


 ふむ、……この公爵令嬢、さては外泊許可の為にいらんストーリーを作ってるな。

 と、そのとき、部屋に居た公爵家の護衛の1人がティア嬢に切りかかる!


「ティア様!」


 ネイリスがさっと間に入り盾で受ける。それと同時にフェン介が後ろから殴りかかる。その護衛の人は難なく受け――られずに膝を突く。

 あいつの攻撃早いうえにトリッキーだからな、頭を攻撃すると見せかけて足を攻撃したのだろう。

 オレとセバスチャン? まあ、芝居って分かってるから動かなかった。というかあのスピードにはついていけませんがな。


「ほう、そいつが膝を突くとは、中々の……なんじゃそれは?」


 父上がティア嬢の状態を見てびっくりしている。なんせケモミミブラザースがティア嬢にくっついて威嚇していた。まつぼっくりみたいだな。

 なにげにこの2匹が一番動くのが早かったんだよなあ。


「ほらほら大丈夫ですわよ。これは単に芝居ですからね」


 そう言ってティア嬢は2匹をあやす。


「どうですかお父様?」

「もちろん合格……というか……それ本物なのかね?」

「触ってみますか?」


 子供達に興味津々になった父上が恐る恐る犬耳を触ってみてる。


「この子達は……実は魔族と犬のハーフなのです」


 おおっ、おしい! 魔物と犬です。


「なんとっ! おおう、ふさふさじゃのう」

「わたくし、このめずらいこの子達を従者にしようと思っておりますの。そこで正式にお父様とお母様の許可を頂きたく」

「ふむ、良いのではないか。他の貴族ならともかく、この公爵家ならこのような希少な種を囲っておっても不思議に思われんだろう」

「あなた、ティアが帰って来てると聞いたのですが」


 その後、合流した母上も一緒に相談し、子供達は従者見習いとしてティア嬢に雇われることになったのだった。


「ティア様、剣心とはなんなのでしょうか」


 オレ達はその日、公爵家に泊り込むことになった。なんでも、母上が子供達を気に入って離さない。今日は一緒に寝るのって言うことを聞かない。ティア嬢はこの母上の血を継いでるんだなあとつくづく思いました。


「ねえネイリス、あなたわたくしに仕える気がありませんこと?」

「従者としてですか? それはもちろん喜ばしいですが……一応騎士を目指しております故」

「ええ、ですから、その騎士としてですわ」

「は?」


 ネイリスさんが戸惑った声を上げる。


「剣心とは皇帝より貰った権利の一つなのです。通常騎士は国、又は皇帝に使えるものでしょう」

「はい」

「公爵家など一部の家は、自分の騎士を持つことが許されているのです」

「それを我が家では剣心と呼んでますの。決して裏切らない心を持つものとして」


 横からティア嬢の母上が子供達を抱きしめたまま会話に入ってくる。


「あなた達はティアが心を許しているのが良く分かります。それだけ信に値する者なのでしょう。しかし、上位貴族家に群がるものは魑魅魍魎、信用できる者など、親兄弟ですら怪しい」

「よって、身分を隠し市井に出、本当に信に値するものを捜すという……まあ、そういったものですわ」


 なるほど、その制度を利用してネイリスさんとこに泊り込んでた訳か。


「ミーもティアねえのけんしんになるう」

「おれも、おれも~」

「ええ、ぜひ大きくなったらお願いしようかしら」


 子供達にそう言われてデレデレの顔でティア嬢が答える。

 逆に護衛をティア嬢が命がけで守るなんてことにならなければいいが。


「私はまだ見習いですらない若輩者ですが宜しいのでしょうか?」

「わたくしにとって、あなたほど信用のできる人は……この先も現れないでしょう」

「ティア様!」


 二人は手を取り合って見つめあう。いや~百合もいいものですな。


「そうだネイリスさん、あなたどこに住んでいらっしゃるの?」

「街の東側外周のあたりです」

「遠いですわね、学院に通うのも一苦労でしょう」


 ティア嬢の母上がそう言って来る。


「たしか離れが空いてましたわね……いえ、いっそこの屋敷を拡張して……」


 子供達を見ながらそう続ける。


「あなたここに居住を移しなさい。どう名案よね!」

「お母様……」

「あなた達ならあの子のことも打ち明けて大丈夫でしょ」


 あの子? ああ、もしかしてティア嬢の弟君のことか。そういや秘密にしてたんだっけかな。


「さあ、そうと決まれば、そこのあなた達、今すぐ荷物を運んで来なさい!」

「えっ、今もう夜中ですよ?」

「善は急げですわ」


 むちゃ言うなこのオバハン。

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