第13話
「ティアねえ、おなかすいた~ごはんまだ~?」
「はいはい、もうすぐできますよ」
「……なあフェン介」
「なんだよ?」
「お前の種族って生まれてから成長するまでどんくらいなんだ?」
フェン介の子供達が生まれてから2ヶ月が経った。誰もなんも突っ込まないからオレも放置していたのだが……
「おれはネイねえのごはんがいい~」
「むう、シュルクはわがままなのぉ」
「わがまま言う子にはごはんぬきですよぉ?」
「やだ~、ごめんなさいティアねえ」
上目遣いで見てくる子供を、デレデレな顔をしてそっと抱きしめるティア嬢。
「ほら二人とも食堂に行きましょうね」
その二人を良く見てみる。あれもう、小学生ぐらいと変わらねえんじゃね?
フェン介によると、そもそもルーンウルフはモンスターだから、成獣の状態で自然発生するので子作りは行わないそうな。ルーンウルフ同士ではな。
一部例外が、モンスターと通常の動物とでできることが稀にあるとか。こっちはセバスチャン情報だ。
で、ついでにセバスチャンに、もし、そういった場合、子供の成長とか寿命はと聞いたところ、大人になるまでは動物と同じだが、大人になってからはモンスターと同じだけ生きるとか。
それにしても2ヶ月って、犬でも2歳相当のはず?
「しかしまあ、このスピードで成長するってことは、大人になったときどうするかも考えとかないと駄目だなあ」
「そうでありますなあ。幽閉……というのはあまりしたくありませんしなあ」
「うむ。そう言えばセバスチャン、魔族の村だとどうなのだ? シュルクとミーシアのような存在はおらぬか?」
ネイリスさんがそう聞いてくる。
「さすがに居ませんなあ……とはいえ、魔族は外見が変わった者はそこそこおります。まあ、多少の問題はありましょうが……」
「いずれどっか、魔族の辺境にでも住まわせるしかないか……」
「じいさん、どっか親戚とか預けれそうなとこない?」
「私は今や裏切り者呼ばわりされておりますしなあ……」
セバスチャンっていったいどんな背景があるの?知りたいような……知りたくないような……
「そうだ、ティア様に聞いてみるか。公爵家ならそこそこの魔族に知り合いがいるかも知れんしな」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「えっ、何言ってるの?あの子達は絶対に手放さないわよ?」
「ええっ!?」
ティア嬢に、どっか信頼の置ける魔族にあの子達を預けられないか聞いたところ、そういう回答が帰ってきた。
「いえ、しかし、このままずっと家の中にこもっりきりにさせるのもまずいですし」
「そうね……そろそろお披露目もいいかもしれませんわね……」
なんか今不穏なセリフが……
「見世物じみた結果にならないかな?」
「貴族の中には、希少な魔族を従者としている方も結構いますわよ? ネイリスさんもそうでしょ?」
なるほど、希少な魔族として発表するってことか。どうせ人間達にゃ魔族の種類なんて分からないだろうしな。
「それはいい案ですね!」
「問題はお父様とお母様を納得させないといけないことですわね……」
「えっ? 我が家の従者としてじゃないのですか?」
ネイリスさんが不思議そうにティア嬢へ聞く。
「えっ、先ほど言いましたでしょ? あの子達は絶対に手放さない、と。もしかしてネイリスさん、私の従者としてじゃご不満ですか?」
「いえいえ、滅相もない。公爵家の従者などあの子達も願ってもないことでしょう!」
身元不明なのに公爵家の従者なんてできるのかなあ?
とそこへ、子供達が恐る恐る入ってくる。
「ティアねえ、わたしたち捨てられるの?」
「おれもっといい子になるから捨てないでよ!」
そう言ってティア嬢にしがみつく。
「あらあら、どうしてそう思ったのかしら?」
「なんか遠くへ預けるとか聞こえたから……」
さすが獣人耳がいい。ヒッ、ティア嬢が氷の瞳でオレ達を見据えてくる。
「大丈夫よ、おねえちゃんがどこにも行かせないから」
「ほんと、ティアねえ大好き!」
「さてと、そうと決まれば……おい、そこのゴミども、至急馬車を用意しなさい」
「ハッ、わたくしゴミであります! 至急用意いたします!」
ネイリスさんがガクブルで答える。
いやー、さすがは悪役令嬢キャラ、怒ると怖い……ちびりそうだ。