第11話
「そのようなことが……その猫は今どちらへ、まさか……」
「いえ、亡くなった訳ではありません。まだ生まれて3年程ですし。ただ……2ヶ月ほど前に出かけたきり帰って来ないのですの」
「誰かに攫われたとか?」
「あの子がそんなヘマをするとは思えませんのよ?」
猫とは思えないほど賢い存在でしたし。
「2ヶ月ほど前ですか、そうですね、ちょうど私がジョフィとフェン介を拾ったぐらいの時期ですか……」
「あらそうなの?それじゃあもしかしたら彼はジョセフィーヌの生まれ変わりでしょうかね?」
そう言ってわたくしは笑う。
「ハハハ、まさか。それにジョフィはティア様の役になど立っておらんでしょう」
「あら、気づいてませんですの? 彼はなにかとわたくしのサポートしてくれてたのですよ」
「えっ!?」
わたくしがつい高飛車な態度を取ってしまい周りを引かせたときは、ひょこっと出てきて場を和ませたり。
何かというと、王子を連れて来て一緒に話の中に連れ込もうとしたり。
ときには、クラスの中の他国のスパイを暴きだしたり。
「えっ、あいつそんなことしてたんですか!?」
「まあ、内々に始末をつけたことですしね」
「俺も色々手伝わされたよ。あいつお嬢様より人使い荒いんだぜ?」
「ああん? 私よりなんだって?」
「いえ、なんでもございませぬ!」
それに極めつけは、
「あなたのような友人を与えてくれました」
「ティア様……」
「お、ジョフィが帰って来たようですな。それでは食事に致しましょうか」
「セバスチャン、今日は久しぶりに私が作ろうではないか!」
「えっ!?」
あら、ネイリスさんは食事も作れるのですか。勉強もでき、剣力もあり、魔法もぐいぐい上達しているとか。ほんと羨ましいばかりですわね。
それでは食堂に行きましょうか。
「どうしてこうなった……」
「お嬢様は一度言い出したら聞きませんからなあ」
お二人が真っ青な顔をされています。もしかして……
「おお、久しぶりのお嬢様の手料理! ティア様、お嬢様の手料理は天下一品ですぜ」
「あら、そうですか。お二人も人が悪い」
その二人は悟ったような目をしてフルフルと顔を左右に振ります。
そしてネイリスさんの持ってきた食事を見て……
「「「ごくっ」」」
フェン介を除くわたくし達3人は喉をならします。
わたくしは料理を指差しジョフィに眼差しを向けます。
対してジョフィは……
「もし駄目そうだったら、隣のワンコロにぶち込んで」
そう言ってきます。
「おお! 今日は特に豪勢だな!」
「分かるかフェン介!」
「分からいでか!」
そう言ってフェン介はとてもおいしそうに料理を食べ始めます。
わたくしはちょっと安心して料理に口をつけ、
「くぁwせdrftgyふじこlp!」
―翌日。
「ジョフィ、セバスチャン。わたくしに料理を教えなさい!」
二人はわたくしに訝しそうな目を向けてきます。
「急にどうされたので?」
「ああはなりたくありません!」
昨日の夕食、あのあと記憶がございませんの。
「いやー、あれはなりたくてもなれないような。もう、一種の芸術だよな」
「そうでありますなあ」
それに、料理でなら確実にネイリスさんに勝つことができる。はず!
「なんかフラグ立ててないっすか? う~ん料理か……そうだ! ティア様は魔法の技術はすごいんでしたよね?」
ジョフィがわたくしにそう聞いてきます。
「もちろんですわ。魔法の技術だけなら学年一いや、学院一だと自負しておりますわ」
「ようしそれなら……オレが発案した料理、作ってみませんか?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「これは!? うぉっ、キーンと来たキーンと……だがなんとおいしいのだ!」
「ほう、見た目も素晴らしいですな。始めて見る料理です。なんと言う料理なので?」
「アイスクリームと言う物らしいですわ」
わたくしがジョフィに教わって作った料理、氷の魔法を使って作り上げた物。
「まあ、料理って言うより、お菓子って言う方だけどね」
「んー、ほんとおいしいですわ。自分で作ったものは最高ですわね」
料理が趣味になってしまいそうですわ。
「ジョフィ、こういうのもっとありませんの?」
「まだまだありますよ。ティア様の魔法を駆使すればもっともっと色んな物ができるはず」
「それは楽しみですわね」
それにしても、一体彼は何者なのでしょう。知識の底が見えません。
子供達の世話の傍ら、ネイリスさんに勉強を教えていたようなので一緒に混ざらせてもらったのですが、帝都の家庭教師など足元にも及ばない知識量。
誰もが知らない、誰もが考えたこともない知識・発想。
きっと出るとこに出れば、歴史に名を……
「ネイリスさん、あなたはジョフィを拾ったとか言ってましたが、いったいどうゆう経緯で?」
「裸でワイバーンと戦っておったのですよ」
「ええっ!?裸でワイバーン?武器は?」
「素手でしたな」
ほんと何者なの!?