1話
仕事が終わり、外に出ると冷たい風が全身を襲う。
寒さで身を縮こませながら、駅までの道にあるコンビニに入り、温かいお茶を買った。
外に出てお茶を飲み、寒さを凌いだ。
体の中に温かいお茶が入っていく感覚にちょっとした快感を得ながら駅の改札を抜ける。
ちょうど来た電車に乗り込み、空いていた席に座りほっと一息つく。
疲れがどっときたのか、うとうととしてきた。
気が付くと最寄り駅の一つ手前の駅まで来ていた。
危ない。もう少しで乗り過ごすところだった。
今日は結城が料理当番だったはずだ。昨日、親子丼にしようかと言っていた気がする。早く帰らないと。
「美希」
後ろから声がかけられた。
そこには一緒に住んでいる香苗がいた。
「同じ電車に乗ってたんだね。一緒に帰ろー」
「もちろん」
二人で今日仕事でどんなことがあったとか、今日の夕食の話など、他愛のない話をして帰ってきた。
「ただいまー」
「お、いい匂い」
私と香苗が口々に帰りの言葉を言うと奥から声がした。
「おかえり」
一緒に住んでいる最後の一人、奈央の声だ。
キッチンからはだしの効いた親子丼の匂いがしてくる。
そんなキッチンから夕食係の結城が声をかけてきた。
「お~、おかえり~。ちょうどできたから二人共早く来いよ」
私たちは口々に返事をし、各々の部屋にはいった。
私たち4人はルームシェアという形で一緒に住んでいる。
不便なことがないと言ったら嘘になるが楽しいことのほうが多いし、楽しくやってるつもりだ。
いけない。そろそろ席につかないと結城が怒ってしまう。
席につき、みんなで騒ぎながら夕飯を過ごした。