友情以上の恋未満 3
「そうだ……」
智は正真正銘、茉莉のサンドイッチを美味しいと食べている。その表情に、百合姉の弁当おかずとの違和感など感じていない様子だ。
茉莉の事は、相変わらず可愛いだのなんだのと言い続けているし、弁当の誤解さえなければ。そう、茉莉が作っているのだと、智が茉莉に恋心を持つきっかけとなった弁当の誤解さえ解ければ、案外うまくいくのではないか。まあ、上手くいってもいかなくても理が面白くないのには変わらないけれど。それでも茉莉には幸せになってもらいたいというのが最優先であり、理の願いだ。
それに最初からこちらは騙すつもりはなく、勝手に誤解したのは智だ。勝手に期待され、告白されて、茉莉が智に恋心を持った後で誤解が解かれて、茉莉が手酷く振られるくらいなら、今、茉莉の傷が浅くて済むうちに智を目覚めさせてやればいい。
「ん? 理どうした?」
智がもごもごと口を動かしながら聞き返してきた。ハッと弁当箱を見ると、あんなにたくさんあったサンドイッチはもう残りわずかだった。
「信じられない。午後から動けなくなるぞ」
「大丈夫だって。たとえ吐いても茉莉ちゃんのサンドイッチを食うよ。サンドイッチ、マジでうまい。理はいつもこんなうまい食事が食べられて幸せだな」
「そうかな」
吐くなら食うなよと思いつつ、少し照れくさくなって、手にしていたポテトサラダが挟まれたサンドイッチを口に運ぶ。
「あっ!」
智がこちらを見て複雑そうな顔をして、サンドイッチを持っていない方の手で空を掻いた。
「なんだよ。人の食いかけまで食うつもりかよ、智……」
「い、いや……そういうわけじゃないけど」
サンドイッチを口に押し込み、咀嚼しながら空になった弁当箱を包み直し、スポーツバッグにしまった。凍らせたペットボトルの麦茶を飲む。棒状に残った茶色い氷がボコンと軽い音をたててペットボトルの中で跳ねた。
智は複雑そうな顔で、言おうか言わまいか悩んでいる様子だ。モテすぎて、女性関係では傲慢さが鼻につく智だが、性格もセンターフォワードというポジションらしく自己中だし、なにかと圧しが強いし、自信家だけれど、人の悪口は言わない奴だ。努力は欠かさないし、いい奴なんだとは思う。それが恋愛関係となるとどうなるのか、茉莉が振り回されてしまう可能性はある。
けれど、そこまでいったら結局は智と茉莉の問題だ。
堂々巡りする思考に、理がはぁ、とため息をついた。
「なぁ、もし良かったら今日うちに来ない?」
理の誘いに、智の瞳が輝いた。
「悪いけど佳祐は抜きで」
「後で恨まれるなぁ。いや、あいつなら大丈夫か。大事な話なのか?」
「ああ、まあな」
うちに来てもらって、自然な感じで誤解を解く。とても重要で繊細な話になる。何かと茶化してくる佳祐がいては話にならない。とはいえ、仲間外れにするようで、少しだけ罪悪感があるけれど。とはいえ口の悪い佳祐のこと、百合姉を見て、茉莉の前で茉莉を傷付けるようなことを平気で口にしそうだ。
スポーツバッグの中に入れてある時計を見て、智が「やべっ」と声をあげた。
休憩が終わり、この後学校に戻ってミーティングと午後練習の予定だった。




