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一縷の温もりを糧に

作者: 高浦

“今仕事中?”


ベッドの中に潜ったまま、今主流のメールアプリでメッセージを送信する。

いつものあの人に。


10秒程経つと、端末から着信音がした。



『家に居るけど』



無愛想な第一声。

幾ら無愛想でも、この声は何より落ち着く。



「良かったー、おはよ」


『おはよ。またサボり?』


「人聞きの悪い…休みですー」


『だって事実でしょ、サボり魔』


「うるさい

…それよりさ、この間の件はどうなったの?」


『あー…元カノ?』


「元、って事は別れちゃった?

ごめんねぇ私のせいで」


『良いよ別に』


「て言うか、あの時電話切っても良かったのに

滅茶苦茶怒鳴ってたじゃん」


『いーんだよ、そんな好きだった訳じゃないし

告られたから付き合ってた。それだけ』


「またそれ?

タチ悪いよねー、ほんと」


『うるさいなぁ、餓鬼のくせに』


「…餓鬼じゃないよ、もう大人」


『そう言ってる間はまだ子供だよ』


「…て言うかさ、いつまで子供扱いすんの

今年で16だよ、私」


『んー…最低でも成人するまでかな』


「あと4年………はぁ…」



年齢差。

そのハードルだけが、私の感情を押し留めていた。


けれど、そろそろ良いのではないか。

1つくらい―この感情くらい、吐き出しても許されるのではないか。



「…ねぇ」


『何さ』



柄にもなく緊張し、動悸がする。



「どうせ使い捨てならさ

…私と付き合ってよ」



『っ…はぁ?

…やだよ、餓鬼のくせに』



流石にカチンときて、逆に笑ってしまう。

いつもそうだ。この人は、いつもこうやって逃げる。



「餓鬼餓鬼ってさぁ…私は―」


『まぁ、そうだね』



『…お前が大人になるまで、待ってても良いよ』



その声色は、温かかった。



『それじゃ、これから仕事だから。じゃあね』




少し焦った様に言い捨てて、強制的に電話を切られた。


これだから、この惰性からは抜け出せない。

明日からまた、生きるのが少し楽しくなりそうな気がした。

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