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「どうかしたんですか?……」
優しい眼差しのミポリンがそう言ってきたんだけど俺は平然を装うのに必死だったんだよね。あんな誰からか解らない電話を鵜呑みにして変わってしまうほど、このニューヨーカーは落ちぶれちゃいないけどね?まったく誰があんなイタズラ電話してくるのか本当に困ったもんだよ。こんなんでミポリンと俺との恋を終わりにさせられるかっての。まぁ、始まってもいないけど。
「え~っと……あれ?靴ひもがほどけちゃって動けないな~……」
やっぱり一旦落ち着こう?ちょっとほら?考える時間もさ?若い2人には必要よ?俺が靴ひもを直すのにしゃがんでいるとミポリンは心配そうに覗き込んできた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫♪大丈夫♪」
えっと、全然大丈夫ではなかったんだ。何故なら俺の靴はローファーだからね?靴ひも付いてないからね?待て待て少し考えよう、どうすればいいんだ?ミポリンのマンションまであと約300メートル。このまま歩いて行くと7分で着く計算になる。えっと、時速1キロで歩くと1時間に1キロ歩く速さだから...えっと...300メートルってことは...1繰り上がって...えっと...もう少し遅く歩こうと思う。
「あの……電話……何かあったんですか?」
ミポリンは心配そうな顔で俺に問いかけてきたんだけど、俺もあたふたしちゃってもうハトが豆鉄砲…あ、この例えも違うや。とりあえずドギマギしてたんだよね。もうほら?悟られないように必死でさ?
「いや……やっぱりね?初めて会う女の娘の部屋には行ってはいけませんて死んだばあちゃんがよく言ってたから……」
「誠さん?(笑)どうしたんですか?」
このタイミングでまた俺電が鳴った。巾着袋から取り出してクールなニューヨーカーは速やかに電話に出たんだ。
「私達は君に何かありそうな時はいつでも突入出来る体制だ!」
ちょっと待て……私達に変わっちゃった!もうこれさ?SWATとか来るよね?変に動いたら俺も巻き添い食らうやつだよね?
「誠さん?……」
「いやいやいや(笑)なんでもないよ?なんかね?間違い電話みたいだよ?(笑)ハハハ……」
俺はもう電話を速攻切って、ミポリンに満面な笑顔でそう答えるとまた電話を巾着袋に…入れようとしたところで着信…
「君は一刻も早くその女から離れなさい!私達は…」
「あぁ!おばあちゃん??そうだよね~?やっぱりダメだよね~?えっ?今から?仕方ないな~わかったわかった♪今から行くよ~♪」
はい、思いっきり切りました。さすがのおばあちゃんからの電話って無理矢理感がハンパないけどこの状況を打破するのはこれしかないですよ?今時に珍しいおばあちゃん子を演じるしかないよこれ?たぶん今俺アカデミー賞助演男優賞狙える位置にいるよ?
「ミポリンごめ~ん……ウチのおばあちゃんがどうしても俺の赤飯が食いたいって駄々こねるからさ~帰らなきゃいけないんだ……」
「そうなんですか……残念です……」
ミポリンがせつなそうな顔で言うと本当に可愛かったんだよね。なんだろこのやるせない気持ちは。いやいやいや…考えるな…考えるとSWATが出てくる。
「じゃあ私はここで……また時間ある時にでもお話を聞いてください(笑)」
ミポリンがそう言った瞬間、そして少し俺がミポリンから離れたその瞬間にまた俺の電話から「思い出がいっぱい」が流れてきたんだ。




