13
気付いたんだけど今真冬だったんだよね。めっちゃ寒いんですよ。夜風に当たるっつっても5秒で引き返すレベルだよね。しかし三郎は任務を全うする。
「誠さん?……震えてませんか?(笑)」
「いや……武士はこんな寒さなんてことなかです」
俺が土佐藩の武士をオマージュしながらミポリンと話していると早速電話が鳴る。
「もしもし!もう少し前に出なさい!ベランダの手すりの方へあと3歩だ!」
「イ……イエス」
SWATにそう応えると、度重なる俺への電話に苦笑してるミポリンに俺はそのまま話しかけたんだよね。
「えっと…3歩…散歩しようか?……」
三郎渾身のダジャレである。いっそのことミポリンでもSWATでもどっちでもいいから撃ち殺して欲しいくらいのダジャレである。
「はい(笑)」
ミポリンはそう言うと俺の手に手を重ね合わせてきたんだよね。手に手を重ね合わせてきたってことはもう手に手を重ね合わせて幸せって言うしかないよね?えっと撃ち殺して欲しいくらいのダジャレである。ダジャレになってないけど。
「よし!君達の顔をこちらから確認する事が出来た!君は女に気をつけながら居てくれ!」
「イエスイエス!」
そうイエスを連呼すると俺はミポリンにも話しかけたんだ。
「ばあちゃんひとり言聞いて欲しいみたいだから電話このまま繋げたままにするね(笑)」
ミポリンは不思議そうな顔で笑っていたんだ。俺はオペラグラスに続くこんな時にしか使わないであろうグッズ第2弾、Bluetoothのイヤホンを肩がけの鞄から取り出して携帯に繋いだ。耳にマイク付きのイヤホンを装着する。よし、OKだ。何がOKかも解らないけど三郎の潜入捜査スパイ編が始まる。
顔に時々当たる風がめちゃくちゃ冷たくて、このまま行くと撃たれる前に凍死だよね?バナナで釘が打てるほどのバナナはおやつには入らないよね?そもそも遠足中に溶けなくて食えないからね?そんな事を心配しているとミポリンが事の真相を話し始めようとしていたんだ。
「誠さん…ごめんなさい…ここから見ていたのは実は…」
こんなタイミングでSWATが割り込んできたんだけど、もうウザいなSWAT。
「もしもし!話はこちらにも聞こえている!いいか君?その女には騙されるなよ?」
「イ…エスイエス」
「ちょっと電話貸してください!えーっともしもし?電話を代わった!こちらからまた君に指令を出す」
え?やっばりSWATは複数人居るの?えっ?どこから見てるのか見回したんだけど全然わからない。やっぱりこれ下手したら撃たれるよね?
「いいか?その女はこの状況に気付いて何をしてくるか解らない!現にその女が持っている飲み物は毒入りだ!」
「えええええええ!!あ、ノーノーノー!」
いやいやいや、これは急展開だよね?まさしく作者が早く終わらせたい感が丸出しの展開だよね?
「その女をこちらも出来れば死なせずに確保したい!なので君にはその協力をお願いする!女が持っている飲み物は飲ませるな!そして君も飲んではいけない!」
「イエスイエスイエスイエスイエス」
なにこの展開?あれか?もう俺にはバッドエンドしか残されていない感じなのかな?最悪ここから飛び降りて何もなかったかのように出来ないかな?いやいやいや、飛び降りたら絶対痛いし死ぬわ。どうしようか。ここは流れに身を任せるしかないな。俺はそう腹を括ったんだ。
「誠さん?…実は私はここから誠さんを見ていたんです」
え?きたよこれ…完全なる二重スパイ的なやつだよこれ?ウチの極秘情報を俺を通して盗み出そうって事なんでしょ?解る、三郎は手に取るように解るよ。
「えっと…それは解ってたよ?ミポリンの企みも全てまるまるもりもりお見通し…」
「もしもし!気をつけろ!こちらの作戦が悟られる!」
「え?あぁ…イエスイエス!」
「私はここから誠さんを見てました……それは……あぁやっぱり恥ずかしいですね(笑)」
ミポリンはそう言った後にホッとしようとしたのかホットコーヒーの入ったカップを啜ったんだ。あんまり伝わってないみたいだからもう一度言うけど、ホッとしようとしてホットコーヒーを……
「もしもし!それは毒入りだ!吐き出させるんだ!!」
SWATナンバー1から電話を変わったSWATナンバー2が叫び出したんだけど、え?これ毒入り?ヤバいです!ヤバいです!どうしよ!どうしよ!ヤバいです!姉さん事件です!
「あっ……………………………………………」
俺はもう咄嗟の判断でSWATに急かされるままミポリンの口から毒入りコーヒーを吐き出させたんだ。吐き出させたと言うかあれだよ?マウストウマウスですよ?ミポリンが口に含んでいたであろうその毒入りコーヒーをね?俺の口で吸って?吐き出したんだ。
「もしもし!君はいきなり何をしてるんだ!!」
急にSWATナンバー1が話してきた。いきなりってなんだよ?こっちは任務を着実にエリートサバイバーばりにこなしてるだけだよね?
「いやいや!もう代わってください!……もしもし!良くやった!女は死なせずに済んだ!しかし油断は出来ないから引き続き指令を出す!」
なんなんだよ?今度はまたSWATナンバー2が話してきたんだけど、もうめんどくせーから1と2にするよ?
「誠さん?…………………………………………」
あ、すっかりミポリンを忘れていた。とりあえず自爆テロ行為は防げた俺は誇らしげにこの寒空の下で言ってやったんだよね。
「あのさ?……ミポリンのことは解ってるんだ……たぶん俺も同じ気持ちだと思う……だからスパイなんか辞めて……」
「もしもし!次の指令を出す!」
2からだったんだけど、ミポリンは不安そうな顔をしていたんだよね。まぁ俺がスパイなことを知っているとなるともうね?あとは俺を殺そうとしてくるよね?それよりもウチの会社の国家機密が気になるんだけど。ここまでして手に入れなきゃいけない代物とは相当だろうね?
「次の指令は……女の話を探れ!」
2が偉そうにそう言いやがったんだけど、俺は直感したんだよね?このまま時間経つと本当に凍死するということを。




