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これはチャンスだよね?マンションに入っちゃいすればもう今夜はOKって感じだよね?あ、これはほら?下心とかじゃなくて親心でもなくてほら?えっと…SWATから逃げられるじゃん?撃たれることもなくなるわけじゃん?みんな平和じゃん?いや、平和ではないか…やっぱり八方塞がりだわ俺。
「ここです……どうぞ……」
気付いたらミポリンの部屋の前まで来ていたんだけど、考え事しててどうやって来たのか覚えてないんだよね。手を引いて来たつもりが引かれてたんだねきっと……あ!引かないでってそう言うこと……違うな。三郎違うな。
「お……お邪魔します……」
俺とミポリンはこのミポリンの部屋、略してミポ部屋に入ったんだけど、なんかこう良い香りがするね?俺の家とは違う良いかほりがするね?俺の家の玄関なんてなんか学校の視聴覚室のカーテンみたいな匂いがするからね?
「どうぞ(笑)」
またミポリンが頬を赤くしてそう言うんだけど、俺は騙されないよ?その百万ドルの笑顔の下にはもう「チンギス・ハーン」が隠れてるのは知ってるからね?もう攻め込んで来てるの知ってるからね?そして俺が靴を脱いで上がると、またお馴染みの曲が流れ出したんだ。想い出がいっぱいである。
「もしもし!今の状況はどうなっている!部屋にはもう入れたのかね!?」
「イエス」
そのやり取りにミポリンは笑いながら小声でこう話してきた。
「またおばあさんですか?(笑)」
「イエス」
間違っちゃったけどなんとか誤魔化せている。三郎グッジョブである。玄関を上がって廊下を歩いて行くとリビングらしい部屋に通されたんだよね。なんかいかにも女の娘の部屋っていうのを想像してから雰囲気が違うのにビックリした。
「もしもし!君にまた指令がある!いいか?君の命が危ないのでなるべくそこのベランダに出るように!私達はそこなら確認出来るんだ!」
「え?あぁ…イエス」
俺は電話を切るとミポリンをチラ見したんだ。こちらの状況には気付かれてないとは思う。ミポリンは俺にソファーに腰掛けるように促すと、キッチンから飲み物を持ってきてくれたんだ。
「どうぞ(笑)おばあさん仲良しですね?(笑)」
「そうなんだよね〜♪なんか仲良すぎてばあちゃんって気がしないんだよね〜♪本当はじいちゃんなんじゃないのかな〜?なんて……ハハハ……」
会話どころではない。任務を遂行せねば。これは殺るか殺られるかのサドンデスマッチなのだ。敵に隙を見せてはいけない。いけないのだ三郎よ。
「あの……誠さん……覗いていた理由なんですけど……」
「あ!ちょっと待って!えっと…ほら?心の準備がまだ整ってないからね?えっと……夜風に当たってもいいかな?……」
自然な流れだねこれ?演歌の曲紹介よりもドンピシャだったよね?たぶんドンピシャすぎて歌手が歌い出し一拍くらい遅れちゃうぐらいだよね?
「じゃ……じゃあベランダでお話しします」
俺とミポリンは飲み物を持ってベランダに出たんだ。そして俺がそのホットコーヒーでホッとしようとした瞬間、またいつもの名曲「想い出がいっぱい」である。俺は電話に出たんだけど、ここからがジェットコースタームービーの始まりでもあったんだ。ムービーじゃないけど。




