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ミポリンのマンションへ向かう途中の道すがらに世間話の一つでもして空気を和ませようとするにはするんだけど、全く話が出てこないよね?だってさ?俺この後殺されちゃうかもじゃん?しかもSWATにも見張られてるわけじゃん?もうね、八方塞がりですよ?さっきとは打って変わってのテンションにミポリンが何かを察したのか、俺に話しかけてきたんだ。
「あの……私が覗いていた理由を聞いても……引かないですか?(笑)」
「えっ?えっ?どういうこと?引くような理由な…な…なのかな?……」
ちょっと待て…引くような理由をすかさず考えていたんだけど、何も思い浮かばないんだよね。いやいや、考えろ考えろ、こんな時こそ頭を使え三郎……あれか?やっぱりスパイ的な?テロ的な?もしくはこれ遠回しに俺が実は銃を持ってる潜入スパイと勘違いされてて、俺が引き金を引くかを心配してるとか!?なにその高度な心理戦は。引かないですか?ってそっちの意味なのかな?ミポリンもスパイだけど俺もスパイに間違われてるってか?おもいっきり俺がコンタクト取ってきたから怪しんでるんだよね??ってことはもうこれ後には引けないよね?なんかこんがらがるけどどっちも引けないんだよね?
「いや……なんか恥ずかしくなってきました(笑)」
ミポリンが頬を赤らめてそう言ったんだけど、俺は騙されないよ?そんな子芝居されてもね?その可愛いお顔の下には能面みたいな顔が本当は隠れてるんでしょ?アレな店で写真見て選んだのに、写真とは全く違う「チンギス・ハーン」みたいな娘が来ちゃうのと同じことなんでしょ?騙されない騙されない。
「いやいや、俺は騙されないからね?……」
俺はつい口走ってしまったんだけど、そのタイミングでまた俺の携帯がこれでもかって言うくらいに鳴ったんだ。ミポリンはキョトン顔である。俺は静かにミッションを遂行しなきゃいけないので、慌てて電話を取ったんだ。
「もしもし……もうすぐ女のマンションに到着しそうだが、マンションには行けそうなのか?」
SWATが物静かな声で俺に問いかけてきたんだ。俺はミポリンには悟られないように答えていった。
「イエス……」
ミポリンはまた心配そうにこちらを見ている。
「女には気付かれてないだろうな?……そのままマンションに突入できるか?」
「イエス……」
「誠さん?……大丈夫なんですか?……」
ヤバい、ミポリンが勘付いたのかも知れない…これはなんとか切り抜けなければこの三郎が殺られる……
「えっと……ミポリン心配しないで♪ばあちゃんがオハギ作ったから食わないかってうるさくて(笑)」
「おい!女には絶対こちらの動きを悟られるなよ!?」
「あ、イエス……」
「誠さんのおばあちゃんって面白いんですね?(笑)」
「えっ?あぁ(笑)そうなんだよね~♪ばあちゃん俺のこと好きみたいでさ~(笑)」
「おい!今時おばあちゃん子なんて居ないからな?女に悟られないように気を付けろ!!」
「イエス……」
「誠さんのおばあちゃんて幾つなんですか?(笑)」
「えっと……」
「おい!君のおばあちゃんはご存命なのか!?」
「イエス……」
「85歳だっけかな~(笑)」
「そうなんですか~(笑)私のおばあちゃんもう亡くなってしまったから羨ましいです、そういう感じ(笑)」
「おい!女はこっちに気付いてないだろうな!?」
「イ……イエス……」
「誠さん?さっきからイエスイエスって……(笑)おばあちゃんなんですか?(笑)」
「おい~!ちょっとこちらに気付いてるんじゃないのかね!?絶対に悟られないように…」
「イエスイエスイエス!」
「えっと~ミポリンには黙ってたんだけど……実はウチのばあちゃんアメリカンなんだ!!」
「ええええ(笑)そうだったんですか~♪カッコイイ♪(笑)」
「おい!それは結構無理があるんじゃないのかね!?」
「うっせ!イエスイエス!」
「誠さん今うっせ~って(笑)」
「おい!君!今私達を侮辱したな?これは侮辱罪で……」
「ノーノーノー!」
「アメリカ人のおばあさんが居るってことは誠さんってまさか……」
「えっ!?俺は違うよ!?俺はスパイなんかじゃないよぉ?……」
「えっ?……」
「おい!!君はこの計画を台無しにする気か!!」
「あ~もうノーノーノー!!」
「スパイってなんですか?(笑)」
「いやいやいや……俺はばあちゃんのスパイスなんかじゃないよぉ?ってこと……ハハハ(笑)」
「スパイスですか?……(笑)」
「おい君!またまたそれは無理がある……」
「うっせ!死ね!ノーノーノー!!」
「死ねとはなんだ!!」
「誠さん?……(笑)」
俺は電話を切って、もうやぶれかぶれにミポリンの手を引いてマンションへと入って行ったんだ。よくよく考えれば解ったことが一つあった。マンションの部屋に入ったら……SWAT見張れなくね?




