人の持つ力〜行動する勇気の源〜
「え?!」
お母さんの驚く声が、リビングに響いた
携帯越しになにか話している
言葉のニュアンス的にきっとおばあちゃんだろう
「なに?」
「ばあちゃんが救急車呼ぼうかなやって。息苦しいらしい」
「え…?」
「…とりあえずさっちゃんに相談してみる」
さっちゃん(仮名)とは、おばあちゃんの家の近くに住む、古くからのおばあちゃんの友人
「うん…うん…お願いなぁ?」
この前電話で、調子が悪いかもしれないと言うことは聞いていた
でも…そこまで…
小さい時に、おじいちゃんが部屋で倒れていたときの情景が浮かんできて怖くなる
少しして、またさっちゃんから電話があった
「なんて?」
って、母さんの顔を覗き込む
「今すぐなんかあるってことは無いらしいけど、放っといたら怖いからとりあえず救急車呼ぶって。大丈夫やろう」
なんとなく気が楽になった気がした
でも、結局入院。肺炎だった。
心配で仕方なかった
こうゆうとき、あたしの癖が出る。
『おばあちゃんが死んじゃったら…もう一緒に卓球もできひん。もう一緒にお出かけもできひん。もう一緒にトランプもできひん。もう一緒に話できひん。もう一緒に笑うこともできひん。もう一緒に…何もできひんようになる』
って、考え込んでしまう
「大丈夫やって!」
そうやって笑顔振りまいてる母さんの不安が目に見えて分かる
でも…
約一週間で退院。
心から良かったと感じれた
卓球できるし、お出かけできるし、トランプできるし、話もできるし笑うこともできる。
退院して二日三日たったときの話。
お母さんからだった
いとこの宏司クン(仮名)の話だった
宏司クンは何より優しいひとで、あたしにもいっつも優しくしてくれたお兄ちゃんだった
「宏司おるやろ?あいつな、ばあちゃんが退院したって聞いてから、2人分の焼きそばの材料もってばあちゃん家で最初から最後まで全部支度して一緒に昼ご飯食べて帰ってんで。それにな、『今後食べれるように』って自分が食べへんカレーまで作って帰ってんて」
…そのとき、何もできない自分が惨めになった
言い訳をしようとすればいくらでもできる
部活が忙しかったとか
家が遠いとか
お金がないとか
でも、そんなの関係なかった
早く…
早くおばあちゃんに会いたい
その思いだけが、あたしの心の中にちくりと刺さっていた
大事なものは、失ってから気づく
よく言いますよね。
でも
失う前に気づくことができるはず
失ってからじゃ遅いんです
もしかしたら…
いま、あなたの嫌いなひと。
例えば、学校の先生とか、友達とか
そんなひとがいなくなったら、大事なひとだったんだって気づくかもしれない
考えてみてください
そのひとと、今までどんなことをしてきたのか
一度でもあなたを笑わせてくれたなら
きっとその人は大事なひとです。
『恩返し』なんて、堅苦しいことはしなくていい
しなくていいから、苦しかったら
このひとは大切なひとだって考えてみるのもいい案かもしれませんよ