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Act.3 不安と危機感


真崎は不安に押し潰されそうだった。銀行を出た後、兄に電話をした。だが、出た兄から言われた言葉は、「首を突っ込むな。」だけだった。

何も手掛かりがない今、頼れるのは翔の情報だけだった。蒸せるような教室の中で、真崎は滲む冷や汗も拭わず、翔をただ待ち続けた。

やがて教室のドアが勢いよく開き、翔が興奮した様子で真崎に詰め寄った。翔は真崎とは逆に、少し歓喜の表情を浮かべていた。


「真崎!二つ情報がある!」


「なんだ?」


「まず一つは、その京介さんと思われる人と、誠司さんと思われる人が被害者をじわじわとなぶり殺していた事がわかった。」


「なぶり殺し?」


「ああ。致命傷にならない程度に殴ったり、ナイフで斬ったりした事を複数人が目撃している。」


「そうか…二つ目は?」


「これは俺にもよくわからないが…偶然通りかかった奴が、その二人が、男から携帯を取ったのを見たらしい。」


「それをなんで警察に言わないんだよ…」


「あいつらは『大人の為』って言うのは嫌いなんだよ。」


翔が苦笑した。真崎はため息をつき、頭を抱えた。


「しっかし…携帯か…」


真崎が呟く。翔が呼応して呟く。


「携帯ねえ…」


「まあ…今は試験に集中しよう。やること終わってからだ。」


「ああ。」


翔は自分の席に座った。













はっきり言って、試験はさんざんだった。どうしても兄の事が頭を支配していた。更に苦手な歴史だけに、点数は絶望的だ。せめて補習で無いことを祈るばかりだ。

だが携帯の件についてはまったくもってわからなかった。


「どうだ?」


翔が放課後に訊いてきた。


「全然。」


真崎はため息をついた。これではなにもわからない。兄たちを止められない。


「あ、でもその目撃者の話を詳しく聞きたい。連絡取れるか?」


「ああ。念のために番号は訊いといた。」


翔は電話をかけ始めた。その後、しばらくの間を置き、言った。


「今から行く。いいな。」


「ああ。」


真崎が立ち上がったその時、璃佳が話しかけてきた。


「綾嶺君。今日は…」


「すまねえ。無理だ。」


「そう…」


璃佳は肩を落とした。


「翔、行くぞ。」


真崎と翔は集合場所の広場に向かった。













「真崎よお…」


集合場所に向かう途中に翔が話しかけて来た。


「なんだ?」


「璃佳ちゃんにはつっけんどんに接するの、やめたら?」


「な、なに言ってんだよ。」


真崎は狼狽した。耳まで赤くなっている。図星だろうか。翔もそれを察し、更に畳み掛けた。


「お前って素直じゃないよな〜」


「うるせえ。何人も女をストックしているお前に比べたらマシだ。」


「羨ましいか?」


翔が皮肉をこめて言った。真崎はため息をついた。実際、このままではいけないとは思っていた。そろそろ、この気持ちに踏ん切りをつけなければ。


「わかった。この件が終わったら、言うよ。」


真崎は半ば諦め気味に言った。すると翔は見るからに嫌な顔をした。


「なんだよ。何が不満なんだ。」


「だって、死亡フラグじゃん。」


翔は真面目半分、面白半分で言った。


「馬鹿か。」


真崎は吐き捨てた。そんな事が現実にあるわけがない。だが何か一抹の不安が心に引っかかるのは否めなかった。













怖い。その一言だった。長ランにリーゼント…ではなく、ドクロマークのついた革ジャンにチェーン。大体がその服装だった。しかし一番怖いのは、こちらを睨み付けてくることだ。翔が隣にいるとは言え、やはり不安は拭えない。


「おら、集まれー」


翔はまるで犬を呼ぶように、手をパンパンと叩いた。


「昨日訊いたやつで、目撃したやつ、俺のダチが詳しく訊きたいってよー」


「はい!」


五人程がこちらに向かう。真崎は無性に逃げ出したかった。が、勇気を出して話しかけた。


「あのー…」


「あ゛?」


「ひぃっ!」


「おいこら。怖がってんだろうが。」


翔が睨みをきかせる。それを受けた不良は、一気に腰を低くした。


「はい!なんでしょうか!」


実際、これはこれで怖かった。













総合すると、被害者は兄に偶然会い、なんらかの原因で兄たちの逆鱗に触れ、じわじわといたぶられながらだんだんと人目につかない地下駐車場に誘導され、そこで殺された、ということだ。

携帯については、見ただけで特に情報は得られなかった。


「そうか…」


「なにかわかったか?」


「う〜ん。ただわかるのは、兄さんたちはまた殺しをするぐらいしか…」


真崎は黙りこんだ。が、すぐに顔を上げた。その顔には、危機感が浮かんでいた。


「まさか…」


「どうした?」


「翔。携帯は何に使う?」


「何って…こうやって電話するためだろ?」


翔は携帯を開き、自分の耳に当てるしぐさをした。


「そう。次のターゲットと被害者はつながりがある。もちろん、電話番号、メアドも知り合ってる。だったら…」


翔は気付いた。


「まさか、呼び出す…?」


「ああ…闇雲に動くより確実だからな。」


「どうする?」


「駅前で張り込みたいが…」


「それなら任せてください。」


不良が話始めた。


「俺たちは学校に行ってないんで、四六時中張り込めます。」


「頼みます。あと、駅前だけじゃなくて、裏路地などもお願いできますか?」


「任せてください。」


「ありがとうございます。」


真崎は頭を下げた。なんとしても兄たちを止めなくては。真崎は次の行動を考え始めた。


さあ次どうしよう!(笑)

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