表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】経理のおばさん、聖女召喚失敗と言われたので、帳簿と制度で異世界を救います  作者: コフク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/19

第6話 医療の仕組みも動き出す

倉庫を見に行ったことで、経理魔法システムの仕組みに、

 納品書や入出荷記録もつなげることになった。

 宰相エドワルド・グランディスの執務室。

 理美は、淡々と報告する。

「不要在庫と、未記録の廃棄が、医療関連だけで、相当量ありました」

「なぜ、こうなった?」

「理由は、単純です」

 理美は、即答した。

「在庫数量を把握していなかった」

「使う頻度を考えずに、買っていた」

「使い切れなくても、誰も責任を持たなかった」

 直治が、隣でふっと笑った。

「……倉庫に行ったの、僕にも良いヒントでした」

「ヒント?」

「同じく、薬品、治療に必要な物の情報、繋げられないかなって」

 理美は、すぐに頷いた。

「医療も、システム化できますね」

________________________________________

◆ 国全体で、医療を管理するという発想

 その場にいた薬務統括官が、すっと前に出た。

 マルティナ・クロイツ。

 切れ長の目をした、背の高い女性だ。

 実務向きの服装で、無駄な装飾は一切ない。

「出来ます」

 彼女は、即答した。

「ぜひ、やらせてください」

 直治が目を向ける。

「国全体で、できませんか」

「ええ」

 マルティナは迷わなかった。

「薬品在庫に、包帯や器具、治療に必要な物資。

どこに、何が、どれだけあるか、中央で把握できれば、

足りない所に、足りない分だけ回せます」

 理美は、深く頷いた。

「それなら、無駄な買い足しも、廃棄も減る。

やりましょう」

 理美は即答した。

________________________________________

◆ 医療記録も「見える化」できないか

 話は、さらに広がる。

「……もう一つ」

 直治が、少し考えながら言った。

「医療記録も、まとめて見られませんか?」

「まとめる?」

レオンハルト医師団長が聞き返す。

 白髪交じりの髪を後ろに撫でつけ、

 年齢を重ねた分だけ落ち着きと迫力を備えた人物。

 だがその目は、若い研究者のように好奇心で輝いている。

「症状ごとに」

「地域ごとに」

「年齢別に」

「今、どんな病気が多いのか」

「怪我が増えている場所はどこか」

「図で、見えるように」

 理美の目が、きらりと光る。

「……グラフですね」

「はい。

 きっと、事前に防げるものもあります」

 宰相エドワルドが、腕を組む。

「魔法局の協力が要るな。要請しよう」

________________________________________

◆ 「見える」力を、誰でも使えるように

 直治は、少し言いづらそうに切り出した。

「……もう一つ、あります」

彼は自分の手を見つめる。

「こっちに来てから、

触ると、体の中の悪い部分が、

なんとなく、見えるんです」

 その言葉に、

 回復魔法主任のオスカー・リントが頷いた。

 短く刈った茶髪に、日に焼けた肌。

 実地治療を長く続けてきたのが一目で分かる、

 現場叩き上げの雰囲気を持つ青年だ。

「……分かる人は、います。でも」

 オスカーは腕を組み、率直に続ける。

「医師の魔力によって、

はっきり見えるかどうかは、違いますね」 

直治は、少し身を乗り出した。

「なら、魔法石を使ったり、魔力に余力のある人が補充して、

誰でも見られる“道具”は作れませんか?

悪いところが、反応して光るとか、色が変わるとか」

 一瞬の沈黙。

 そして。

「……おもしろい」

 レオンハルトが、笑った。

「ぜひ作ろう。診断のばらつきが、減る」

 オスカーも、目を輝かせる。

「良い物ができれば、新人でも、危険な兆候を見逃しません」

 直治は、深く頷いた。

「医療の質が」

「一段、底上げされます」

________________________________________

◆ 資金のあて

「ただ」

 マルティナが言った。

「資金が、かなり要りますよね」

 宰相エドワルドが、にやりと笑った。

「不正で盗られた金が、あるだろう。

取り戻して、それを、充てればいい」

 理美は、目を、きらりと光らせ、静かに微笑んだ。

「ご協力します

徹底的に、洗い出します」

 直治は、苦笑した。

「……ぞくっとしました」

「怖いですね」

________________________________________

 こうして。

 経理から始まった改革は、

 医療を巻き込み、

 国全体の“健康”を設計する段階へ進んだ。

 帳簿から、財政を、

 そして――

 医療記録から、命そのものを、

 仕組みで支える時代が、

 静かに始まっていた。

________________________________________

◆ 仕組みが、人の行動を変える

 経理魔法システムが稼働し始めると、

 変化は一気に加速した。

「今週も何件か、警告が出ていますね」

 医師団の事務室で、

 薬務統括官マルティナが満足げに言う。

「症例に合わない薬を選ぼうとした、

軽症に、高価薬を使おうとした」

「理由を記載してください、だと……」

 直治は、頷いた。

「理由が書けないなら、

使うべきではない、ということです。

 症例と、治療の情報が、蓄積されてきたので、

機能を追加しています」

 システムが適切な治療法を提案するようにした結果、

•症例ごとに使用する薬品の種類、使い方が安定

•高価薬は、本当に必要な重症者に限定

•使用量が、適正水準に落ち着く

時間が経てば、誤った使用も、無駄な購入申請も、自然に減っていくだろう。

 誰かが叱ったわけではない。

 仕組みが、勝手にブレーキをかけた。

________________________________________

◆ 医療の質が上がり、魔力の消費が減る

 さらに、別の変化も起きていた。

「……魔力の消費量が、減っています」

 回復魔法主任オスカー・リントが、

 記録を見て呟いた。

「治療件数は、ほぼ同じです」

「なのに、消費魔力は明らかに少ない」

 理由は、明確だった。

 直治が説明する。

「予防指導の考え方も広がり始めたからです」

•傷は洗う

•栄養を取る

•体を動かす

•治療後は、リハビリをする

 それだけで、

•重症化が減る

•再発が減る

•魔法治療の回数が減る

 魔力は、本当に必要な場面にだけ使われるようになった。

「……医療って」

 オスカーが、ぽつりと言った。

「治すより、悪くならない方が楽なんですね」

 直治は、静かに頷いた。

「はい」

「だから、予防は最強なんです」


 誤った治療が減れば、みんなをもっと助けられる。

 予防をすれば、最初から苦しまなくてすむ人も増える。

 きっと、この国はもっと良くなる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ