表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】経理のおばさん、聖女召喚失敗と言われたので、帳簿と制度で異世界を救います  作者: コフク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/19

第18話(終話) 門が開くとき、残る者と帰る者

理美と直治が召喚されてから、

 ほぼ一年が経っていた。

 王城の宰相の部屋に、

 魔法局に行っていた、ルーファス・エインズワースが駆け込んできた。

「……集めていた魔力が、

ついに、規定値に達しました」

「門を」

 一拍置いて。

「元の世界へ戻る門を、開けます」

 その言葉に、

 部屋が静まり返った。

________________________________________

◆ 三人の選択

 ミリア――聖女は、

 誰よりも先に口を開いた。

「……私は、ここに残ります。

加護のある、ここでしか、生きられないから」

 その声は、迷いがなかった。

 理美は、そっとミリアの手を握る。

「……私も残るわ。

あなたの母として、この世界に、残る」

 ミリアは、ほっとしたように微笑んだ。

 直治は、しばらく考え、二人を見てから、静かに言う。

「……僕は、

元の世界へ戻ります。

医師として、向こうで、やるべきことがある」

 でも――

「ただし」

 直治は続けた。

「この世界とは、繋がり続けたい。

 医療も、命も、繋ぎたい。

……ミリアみたいな子がいたら、助けることも、あるかもしれない」

 エドワルドは、深く頷いた。

「残念だが、君らしい選択だな」

________________________________________

◆ 別れ

 直治が旅立つ日。

 宮廷医師団の面々が、ずらりと並んだ。

「……寂しくなりますな」

 レオンハルトが、素直に言う。

「あなたが残したものは、この国の医療の基礎として守っていきます」

 オスカーも、頭を下げる。

「……きっと、また」

 マルティナ・クロイツが、

 直治の前に立っていた。

「ええ」

 直治は、少し照れたように笑う。

「きっと、声は、つながります」

「……」

 マルティナは、一瞬、視線を落とす。

「あなたと働けたこと、

私の人生で、一番の誇りでした。

 これからも、変わらず、続けていきます」

「……僕もです」

 直治は、優しく言った。

「あなたがいたから、この先も、この国の医療は変わる」

 マルティナは、

 小さく、でもはっきり微笑んだ。

「……必ず、また、連絡します」

「はい」

 その言葉だけで、十分だった。


 直治は、笑った。

「みんなも、時々話してくださいね」

「患者のこと」

「自分たちのこと」

「何でも」

 ミリアは、ぎゅっと直治の白衣を掴む。

「……ありがとう。

私、先生のおかげで、この世界に来れて、良かった」

「……ミリアも、

みんなも、

元気で……」

 光が、直治を包んだ。

 そして――

 門は、静かに閉じた。

________________________________________

◆ 数年後

 直治は、

 日本で、今も医師をしていた。

 ただし、少し方向を変え、

臨床医として、医薬の開発にも関わっている。

 忙しい仕事の合間、

 時折、“声”で向こうと話す。

 前に通信装置を送ってもらったので、

こちらから連絡をすることもできるようになった。

「理美さん、元気?」

「元気ですよ」

 理美の声が返る。

「……ミリアは?」

「今日は、アレクと結界の調整です」

 ミリアの両親も、

 直治と一緒に声で話すことがある。

 娘が、生きて、

 誰かを救っていると知るだけで、

 涙が出るほど嬉しがっている。


 夜の仕事部屋で、

 直治は、コーヒーを片手に

 小さな魔導通信装置を起動した。

「……マルティナ」

「聞こえますか」

 少し遅れて、懐かしい声が返る。

「ええ。はっきり聞こえます、佐藤先生。

お元気ですか?」

 少し懐かしい声。

「マルティナの声を聞いて、元気が出ました。

今は、そちらの世界の経験を元に作った、

骨折を早く治す薬を試験しています。

そのうち、神経の回復を促す薬などもできないかなと。

そっちは?」

「安定しています。

治療で、聖女ミリアの力も借りています。

良い情報があったら、送りますね。

こちらも行きづまったら相談します」

「ありがとうございます」

 通信が、静かに切れる。

 直治は、

 窓の外の夜を見ながら思う。

(まだ、終わってない)

 二つの世界の医療は、

 今も――

 一緒に、進化していた。


________________________________________

◆ 二つの世界は、まだつながっている

 その頃、日本では――

 **覆面デュオ『のぞむ・みらい』**の曲が、

 不思議なヒットを記録していた。

 なぜか、

 その歌を聴くと

 回復が早まるという噂。

 売り出したのは――

 理美がかつて勤めていた会社だった。


最近よく、直治の勤める病院でもかかっている。

**二つの世界で、あなたとのぞむ、ひとつのみらい

あなたがわたしの、みらいをくれたから

わたしもいのる、あなたののぞむ、みらいを

どこにいても、いつも、あなたを想っている

あなたは ひとりじゃない**

 直治は、

 そのデビュー曲を病院の控室で聴きながら、

 そっと目を閉じた。

「……つながってるな」

 二つの世界は、

 今も、どこかで繋がっている。

 祈りとなり、

音楽となり、

 薬となり、

 命を救う力となって。

 それぞれの世界が、

 今も、これからも、

きっと、少しずつ、

 良くなっていく。


________________________________________

― 完 ―


次回、番外編です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ