第17話 王妃と理美の、ママ友お茶会
王城のバラ園は、午後の陽光に包まれていた。
白と淡紅のバラが風に揺れ、
ガラスのティーカップに注がれた紅茶がきらめく。
「……本当に、素敵なお庭ですね」
理美は、思わずため息をついた。
「でしょう?」
王妃は微笑む。
「ここは、私が一番好きな場所なの。
まあ、時間が無くて、手入れしているのは私ではないのだけど」
二人が向かい合うこの席は、
王妃と宰相夫人の会談ではない。
アレクシスの母と、
ミリアの母の、ママ友お茶会だった。
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◆ 母たちの本音
「最近」
王妃が、少し寂しそうに言った。
「ミリアちゃんと、相変わらずあまり遊べていなくて……。
結界の祈りの時間が長すぎるのよねー。毎日、何時間も。
最近は二人になって少し短縮したとはいえ……」
「ミリアちゃん」
理美は微笑んだ。
「良い子だし、可愛いですよね」
「そうなのよー。可愛いのよー」
王妃の顔がほころぶ。
「王妃様とミリアのお出かけ、ぜひご一緒したいです!」
「もちろんよ!
色々いいお店、案内するわ」
「……それと」
理美は少し声を落とす。
「アレクシス殿下と、いい感じだと思うんです」
「そうそう!」
王妃はすぐに同意した。
「本当に、ミリアと私たちが遊ぶ時間も大事ですけど」
理美は、ちょっと楽しそうに言う。
「ミリアとアレクシス殿下のデートの時間も、
できるといいですよね」
「……まあ」
王妃は頬を赤らめて笑う。
「母としては、そう願ってしまうわね。
アレクも良い子なのよ」
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◆ 理美の一言で世界が動く
紅茶をひと口飲んでから、
理美はひらめいて、言った。
「……王妃様、
その結界の祈りも、
システム化できませんか?」
「……え?」
「魔法石で、魔力を定常供給して、
自動で結界を張るんです。
医療改革などでお金もありますし、
今、魔石を売りたがっている国と、問題になっていますよね。
たとえば、魔石輸出国・ヴァルディア。
買ってしまえば、お互い助かります」
王妃の目が、輝いた。
「……それができれば、
私、祈りの時間が減って……」
「ミリアと遊べます」
理美は即答した。
「……そして」
「アレクとの時間もできるわね!」
二人は、顔を見合わせて微笑んだ。
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◆ 第二王子の現実的な判断
ほどなくして、王妃に呼ばれたアレクシスは、
真剣な表情で言った。
「魔導士たちには、話が通せます。
開発にも、僕自身、参加したい」
だが、少し視線を落とす。
「……でも、
ヴァルディアや他国との交渉では、
若い僕は、軽く見られます。
だから、兄さん――第一王子に、
父王から命じた体で伝えてほしい。
弟の僕が頼むより、喜ぶと思います」
王妃と理美は、同時に頷いた。
「……なるほど」
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◆ 王の決断
その夜。
国王は、第一王子を玉座の間に呼び出した。
「第一王子よ、結界を自動化するため、
魔石輸出国、ヴァルディア王国と交渉し、魔法石の供給を取り付けよ。
また、魔導士たちと、結界自動化システムを構築せよ。
技術指示は、魔導士である第二王子アレクを介して行え」
王子は、わずかに驚いたが、
すぐに深く頭を下げた。
「……承知しました」
王命だ。逃げ道は、ない。
でもそれよりも、大きな役割を与えられ、
力が沸き立つのを感じていた。
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◆ やがてすべてが丸く収まる
これでやがて、
ヴァルディアは魔石を売れ、
この国は結界を安定化させ、
王妃は祈りから解放される。
ミリアは守られ、
アレクとの時間も増える。
王妃と理美がミリアと過ごす時間もできる。
第一王子の役割もできる。
国も、家族も、
少しずつ、正しい形に整えられていく。
全てが、丸く収まる目途が立った。
バラ園で、理美は満足そうに言った。
「……王妃様とのお茶会は、
色々話が進みますね」
王妃は、くすっと笑う。
「次のお茶会のテーマは、
ミリアと3人の街遊びの具体化か、
アレクとミリアのデートの仕込みかしら?」
理美は、少し照れて言った。
「まずは、娘との街遊び、行きたいですね」
「あー、私も早く、ミリアちゃん、娘にしたーい!
そう言えば、私、元の世界の名前は、『のぞみ』だったの。
二人の時は、のぞみって呼んで」
優しい風の中で、
世界はまた一歩、
穏やかな未来へ近づいていた。




