表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】経理のおばさん、聖女召喚失敗と言われたので、帳簿と制度で異世界を救います  作者: コフク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/19

第1話 散歩中に骨折したら、医師ごと異世界に召喚されました

 四十六歳の経理が、異世界で聖女召喚失敗扱いされました。

 理由は簡単です。

 年齢が高すぎたから。

 ――そんな理不尽な評価を受ける2、3時間前、

 私はただ散歩中に転んで、骨折しただけでした。


加藤理美さとみ、四十六歳。

 独身。持病なし。趣味は帳簿整理。

 社員二十数名の小さな会社で、二十年ほど経理を担当している。

 魔法も剣も縁がない、どこにでもいる一般人だ。

 そんな私が人生最大の転機を迎えた理由は――

 歩道の段差だった。

「……あ」

 ほんの十センチ。

 前日までの残業が終わってちょっと気は抜けていたかもしれないが、

 健康目的で最近始めた、なんでもない散歩だった。

 次の瞬間、私は派手に転び、

 右足に嫌な痛みを感じていた。

「……やったわね、これ」

 嫌な予感は、大体当たる。

 救急車で運ばれたのは、近所の大学付属病院だった。

 レントゲン室から戻り、診察室で画像を確認していた30代位の男性医師が言う。

「ええ、足首の辺りのこの骨が折れてますね」

 にこやかに言う内容じゃない。

「全治一か月ほどでしょうか。加藤さん、入院は――」

 その瞬間だった。

 床が、光った。

「……え?」

 医師の声も、天井も、診察室も、

 すべてがぐにゃりと歪む。

 次に目を開けた時、

 私は巨大な魔法陣の中央に立っていた。

 隣には、さっきまで診察していた医師。

 白衣のまま、ぽかんとしている。

「……ここ、どこですか?」

「それ、私が聞きたいです」

 周囲を見渡すと、玉座。

 剣を携えた兵士。

 ローブ姿の老人たち。

 どう見ても――

 異世界召喚のテンプレートだった。

「聖女召喚、成功……?」

 誰かがそう呟いた直後、

 別の声が重なる。

「いや……失敗だ」

 深いため息と共に、

 白髪の老人と若くて整った顔の男性が私を見た。

「未婚女性を召喚したはずだが……」

 嫌な間。

「年齢が高すぎる」

 ……おい。

「通常なら、聖女として第一王子の婚約者にする予定だった」

「未婚女性なのは合ってますよ」

 思わず口が出た。

「この国にはこんな年齢の未婚女性はいないのだが……」

「僕も親ぐらいの人との結婚は無理だ」

「私たちの国にはいるんです。失礼にもほどがありますよ」

 老人たちは顔を見合わせ、相談を始めた。

「君は、何ができる?」

「経理…事務処理とかですね。」

「……ではとりあえず、宰相の下で働いてもらおう」

「は?」

 横を見ると、医師も同じように困惑している。

「では、そちらの男性は?」

「僕は、医師です。同じく未婚です」

「では、宮廷医師団に」

 即決だった。

「え、ちょっと待ってください」

 医師が抗議する。

「僕、整形外科医で――」

「医師であるなら問題ない」

 問題しかない。

 その時、私は気づいた。

「……あれ?」

 足が、痛くない。

 恐る恐る立ち上がる。

 普通に歩ける。そして、跳ねてみる。

「骨折、治ってます」

「……は?」

 医師が、絶句した。

「折れてましたよね?」

「ええ」

 老人が満足そうに言った。

「召喚による祝福だな」

「1か月の入院、いらなくなって良かったですね」

 医師も言った。

 こうして私は、

 聖女になれなかった四十六歳経理として、

 異世界で働くことになった。

 ――この時はまだ、

 帳簿と制度で国を救うことになるとは、

 誰も知らなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ