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異世界帰りの野球おねえちゃん  作者: 日曜の例の人
4.後半戦

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108/119

番外編「 異世界に来た野球おねえちゃん」8-1

番外編ですが、一度クリスマス編が挟まったので非常に時間がたっての続き掲載となってしまいました。

こちらは番外編7-2の続き、竜の試練が始まったところになります。

 認められれば力が与えられる、竜の試練。


 始まると、竜は即座に息を吸い込んだ。

 これは憧れファンタジーさんの一つ、おそらくドラゴンのファイヤーブレスだ。


 瞬時に危機を察知すると、四人は散開し、構える。学駆がまず、正面。シーナは右横、野々香は左横。三人が前で構え、アリサが後方へ。

 一直線上に複数人がいないように隊列を組み、学駆は集中を始める。


 ブレスが、来る!


「トルネード!」

 学駆の新たな力により四人の眼前に人の身長ほどの小さな竜巻が巻き起こる。

 それは迫る炎の勢いを散らし、ダメージを最小限に抑える。多少は熱さも感じたが問題ない、シーナがその隙に風の合間を抜け竜に飛び込むと、いくつかの氷の矢を空中に生み出した。


「アイシング!」

 生まれた鋭い氷の矢は竜を直撃。しかし、ダメージは鱗に阻まれ、ほとんどない。


 野々香も氷剣に魔力を込め、氷を撃ち込んでみたが、結果は変わらなかった。

 これは確かに、勝てない。

 野々香やシーナの魔力では傷一つ付けられないだろう、頼みのアリサの一撃だが、ドラゴン相手に炎は確実に相性が悪い。


「だからと言って、防戦に徹するようでは認められんぞ。一撃くらいまともに入れてみせろ」

 竜が翼をはためかせると、野々香もシーナもその風圧にやられ、後方へ吹き飛ばされる。


「うあっ」

 地面に打ち付けられ、二人は苦悶の表情を浮かべた。


 学駆はその風圧を自身の力で受け流し、そのままトルネードで反撃に転じるが、その竜巻の勢いを受けても竜は涼しい顔だ。

 学駆やシーナでは、これに「まともに一撃」を入れる手がない。

 となれば……


「あたしの剣、だね」

 学駆が反撃しながら稼いだ時間で、シーナがヒールをかけ、野々香が戦線復帰する。


「アリサさん」

 シーナが隊列通り前へ戻る最中、後衛で何も出来ないまま待機するアリサに声をかける。


「僕の持つ魔法に身体強化のものがあるのですが、今それを、"継承"出来ませんか」

「い、今?そんなこと出来るの?シーナが使うんじゃダメなのか?」

「僕じゃそれなりの強化にしかなりません。アリサさんの魔力を全開で野々香さんに使えれば、あるいはと」


 急な話にアリサは驚いた。しかし、ファイヤーボールでは通用しない今、何か手があるなら試すべきだと、アリサは思う。


「出来るなら、やってみる」

「はい、魔術師同士は、お互いに魔力を感知し合ったり、感覚を共有する事が出来ます。もちろん、相性が良ければ、ですけど」


 そう言いながらアリサの右手を両手で握るシーナ。

 赤面するアリサに、しかしシーナはより強く手を握ると、手に魔力を込めて集中し始める。


「あ……」

 すると、アリサも何かを感じたのか、声を漏らした。


 シーナの手元にほのかな光が生まれ、それはアリサの方へ集約して行く。これはシーナの器用さ故にできる伝達方法だ。アリサのように制御が上手くない魔術師には難しい。


 しかし、それを見事に伝えきると、シーナは手を握ったまま、ふう、と息をついた。

 その仕草がやけに美しく、アリサは少しだけ心臓が高鳴るのを感じる。


「行けそう」

 アリサもふう、と一息つくと、納得した表情で野々香に向き直る。

 そのアリサの顔を見てうん、と野々香は頷くと、


「すっごい百合百合しくて良かったよ」

「余計なお世話だよ!」

 あっさりと緊張感をぶち壊しにした。


「一撃、入れてくるね。良きタイミングでよろしく」

 そう言って、野々香は駆け出す。

 律儀に待ってくれていたドラゴンだが、向かって来る野々香を見ると、再びブレスの構えを見せた。


「トルネード!」

加速(レッドスター)!」


 学駆がまた竜巻の幕を張り、シーナが加速魔法を野々香へ。吐き出された炎は再び散らされ、野々香はさらに素早く上へ飛ぶ。

 加速と風の力の後押しによってさらに上空高くへ舞い上がった野々香に、アリサが魔法を放つ。


英雄の歌(ペルセウス)!」


 一瞬、野々香の体と武器が赤い光に包まれる。

 すぐに、凄まじい力が手元に湧いて来るのを野々香は感じた。

 飛び上がった推進力も合わせ、竜の胴の辺りまで達すると、勢いよく野々香は氷剣を振り下ろす。


「おりゃあああああっ!!」


 その剣は見事に竜の胴体に傷を付け、氷剣の力で傷口を凍り付かせていた。


「見事だ」

 竜の呟き。


 認められたのだとわかると、野々香は全員の元へ順に回り、ハイタッチを交わした。

 シーナは少しだけ勝手がわからず、遠慮がちだった。


「それで、クエスト報酬は?」

 野々香が満足気な顔で言う。

 実は、野々香自身が決めの一撃となった事はそう多くない。それが竜相手となれば、喜びもひとしおだ。


「そこの少女に、"竜の祝福"を授けよう」

 凄いの来た。


 何でも竜の祝福は、本人の成長度を遥かに高めたり、常に防御壁に覆われ攻撃への耐性を高める効果。他の祝福がもたらす効果の特大版だ。

 それを、受けられる。過去に類を見ない恩恵である。


 やはり冒険と言えば竜、竜ですよ。ドラゴンのクエストばんざい。

 そう思いながら、野々香は満足そうに頷く。


 少女に、竜の祝福……

 うん?少女?

 一つだけ生じた違和感に目を向けると、竜の視線が自分を見ていない事に野々香は気付く。


 いや、確かに少女と呼ぶには少しばかり年齢がいってるかもしれないけれど、だからと言って別にまだ呼べるよね?呼んでくれたっていいよね?いいじゃん?いいじゃん?すげーじゃん?

 などとしょうもないことを気にしながら視線の先を追うと……

 そこには、黒ローブの"少女"がいた。


 おっととっと?


「あたしじゃないんかい!」

 抗議の声をあげる野々香に、竜はすまなそうに目を伏せると、答えた。


「"祝福"は二つ重ねて授かるのは危険が伴う。その少女は、まだ何も持っていないのでな」

 野々香たち三人は早い段階で既に祝福の効果を受けている。

 シーナは、その力に目覚めていなかったのか。あれだけ強いのに。


「それに……」

 竜が目を伏せた。これだけ聡明な竜が真剣な表情で語るのだ。大きな理由があるのだと、四人は息を飲む。


「その少女を見た途端……なんというか……"刺さって"な……」


 …………?

 よくわからない。よくわからないので、四人はもう1回息を飲んだ。


「この子は私が守ってやらないといけない、と……感じると言うか……守ってやりたいと言うか……うむ」

 赤面、と言うものが竜にはなさそうだが、何となくもじもじしているのは伝わった。

 つまり、刺さった、ってあれか。そういうことか。


「…………わかる!」

「わかるんかい」

「わかるだろう?」


 野々香があっさり納得し、学駆が脱力して、竜が深く頷いた。

 トドメの一撃を食らわせた野々香がわかってしまっては反論の余地もない。やっぱりやめとくわ、と簡単に引き下がった。


「というわけで授けよう、竜の祝福を……」

 理解を得たとみるや否や、そう言って竜は素早くシーナの元へ数歩進み、目を閉じた。

 竜の目の前に生まれた赤い光が優しくシーナを包んで行く。


「ねぇ大丈夫かなこれほっといて。力与えるとか言って、背後霊ストーカージジイみたいになって憑いて来たりしない?」


 疑いの視線を向けるのはアリサだ。さすがにそんな事はないと思いつつ、学駆もわずかばかりキモいと感じてしまったので苦笑している。

 しかしその心配をよそに、"祝福"の授けは完了したらしい。

 シーナは自らの体を眺めたり、動かしたりしながら、力を得たことを確認している。


「それでお主の力は格段に上がって行くはずだ」

「確かに……凄い力を感じます。これが、"祝福"……ありがとうございます」

「なかなかに楽しめた。また気が向いたら来るといい」

 そうして竜との出会いイベントは終わる。


 休養を兼ねて、現状の情報交換や雑談などを軽くかわした後、四人は洞穴を去ることとなった。

 遅くはなりそうだが、城へは行かないと文句を言われてしまう。


「本当に、ありがとうございました。この力、大切に使わせていただきます」

 シーナがそう言って丁寧にお辞儀をすると、竜はとても優しく見える表情で頷いた。

 そうして、去り際。


「あの少女は、少し"危険"だ」

 不意に、竜はシーナに聞こえない程度の小声で、呟くように言う。

 声の聞こえた野々香と学駆が、振り返った。シーナとアリサは洞穴の通路の方に歩き出してしまっている。


「自虐を通り越して、自暴自棄になっておる。お主らには不公平に感じるかもしれぬが、彼女に力を与える事で、自信をつけさせ、生きる意思が高まればと思って、な」


 竜は、その危うさのようなものを見抜いていたのだ。

 だから、他の仲間達がきちんと導いてやるべきだ、と。


「……だから、あの子に力を与えたってわけか」

「ただのキモおじドラゴンさんじゃなかったんだね」

 学駆と野々香は納得した。そういうことであれば、言われるまでもない。二人は静かに頷いた。


「"刺さった"のも本音だ。あんな庇護欲を駆り立てる佇まいは反則だぞ」

「…………超わかる!」

 でも結局キモくて、結局野々香も同意するのだった。


 そんな和やかな……和やかか?な空気と共に、野々香と学駆も歩き出したのだが。

 洞穴の入口付近まで着くと、先の方に妙な気配を感じる。


 何故かそこに、少し先行していたアリサとシーナが立ち止まっていた。

 アリサはこちらを、シーナは向こう側を見ている。


「どうした」

 立ち止まりこちらを向くなど、外に出るだけの状況では必要がない。何かがあったに決まっている。

 学駆は極めてシンプルな質問を投げかけると、シーナも同様に、極めてシンプルな返事をした。


「敵です」

 洞穴は暗がり故に、声をかけた時点では気付かなかったが。

 猛烈な敵意を宿した、紅い炎の形をした魔物が、アリサの背後で不気味な笑みを浮かべていた。


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 日曜の例の人さん、こんにちは。 「異世界帰りの野球おねえちゃん 番外編「 異世界に来た野球おねえちゃん」8-1」拝読致しました。  竜の試練の続き。戦って認められたら、ご褒美だったはず。  早…
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