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第七十八話 新しき臣下

飫肥再建の道半ば、伊東祐兵いとう すけたかのもとに二人の若者が現れた。


名を伊東与兵衛いとう よへえ平賀喜左衛門ひらが きざえもんという。


いずれも素性は高からずとも、瞳には烈々たる志が宿っていた。


「殿の御旗のもとに仕えたく存じます」


土を踏みしめ、声を震わせる二人の姿に、祐兵は静かに頷く。


「人は生まれにあらず。志こそが武士を形づくる」


かくして、与兵衛と喜左衛門は伊東家の新たな臣下として受け入れられた。


幼き嫡子・熊太郎くまたろうとも親しくなり、日々その遊び相手を務めることとなった。




「与兵衛兄者、もっと早く走れ!」


「喜左衛門、次は弓を見せてくれ!」


城下の庭には、熊太郎の笑い声が絶えなかった。


二人はただの供ではなく、若き後継ぎの良き友として


伊東家中の和を繋ぐ存在となった。



だが祐兵は知っていた。


戦国の世にあって、ただの友情では家を守ることはできぬ。


宗昌むねまさ、この二人を鍛えてやってくれ」


「はっ。戦場の道理を骨身に刻ませましょう」


山田宗昌のもとで、与兵衛と喜左衛門は剣の構えを学び


槍の間合いを覚え、次第に武士の気迫を身につけていった。


武の修行に加えて、祐兵は彼らにもう一つの道を授けた。


祐長すけなが、あの二人に酒造りを教えてやれ」


「承知仕った。戦も良いが、米の力を知ることもまた肝要」


河崎祐長の下で、二人は米を研ぎ、麹を仕込み、発酵の音に耳を澄ませた。


「剣で命を奪うこともあれば、酒で人を結ぶこともあるのだな」


喜左衛門の呟きに、与兵衛は深く頷いた。


かくして二人は、武と民の暮らしの両面を学び


伊東家に欠かせぬ若者へと育っていった。




ある日、祐兵は家臣らを集め、与兵衛と喜左衛門に命じた。


「これまでの修行、すべてを見せてみよ。互いに力を尽くし、己の道を示せ」


庭に設けられた試合場で、二人は槍を手に対峙した。


激しい攻防の末、どちらも一歩も譲らず


ついに勝敗はつかなかった。


「引き分け、か」



祐兵は目を細めた。


「ならば良い。二人は力を合わせ、我が家を支える柱となれ」


熊太郎は歓声をあげ


宗昌も祐長もその成長を讃えた。


こうして飫肥に、新しき二つの力が芽吹いたのであった。

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