3話 基本魔法とはなんぞや.2
「お肉〜お肉〜久しぶりのお肉ー!」
ミルンのテンションが凄く可愛い。
尻尾を千切れるんじゃなからろうかと言わんばかりに振りながら、豚野郎(漢)が持っていた斧で、ミルンの手によって解体されていく元豚野郎(肉)。
其れを憂鬱な目で眺めている俺。
下手したら解体されていたのは俺か?
「流さん! 本当にっ、モゴモゴ全部貰っても良いのですか!? オーク肉はモゴモゴっ、売ればそこそこのお値段になるって、聞いた事あるん〜っモゴモゴっ!」
切れ端の元豚野郎(肉)を、モゴモゴと咀嚼しながら、キラキラした目を向けて来るというか、我慢出来ずに食べてるよミルさんや。
「あー俺は要らないから、全部やるよ。というか生で食べても、大丈夫なのか?」
「はい! 新鮮なので生でもいけます!」
斧を使って、器用に元豚野郎(肉)の睾丸を、笑顔で引き千切る姿を見て、一瞬股下がヒュンッとなるぞっ。
「それ……食べるのか?」
元豚野郎(肉)の…睾丸。
「食べますよ? オークのお肉の中で、一番滋養に良いと言われていますので。モゴモゴ」
あぁ…今食べるんだ…生睾丸。
「それ……全部食べ切れるのか?」
元豚野郎(肉)の各種部位。
見た感じで百キロ以上あるし、異世界と言えど腐るんじゃないか?
「そうなんです。全部食べたいのですけど、このままだと腐ってしまうので……どうしたら」
返り血を浴びたまま、耳と尻尾をピコピコ動かして考えている。
中々にシュールな光景だな。
俺は、元豚野郎の切れ端を指先で拾い、試しとばかりに、空間収納スキルを使用。
イメージとしては……空間に穴が空いて、この元豚野郎を入れるように。
一瞬で、ミルンがモゴモゴと食べている元豚野郎(肉)の、睾丸二個目以外の部位の全てが、目の前から消え去った。
「お肉が!?」
ミルンが、モゴモゴしている元豚野郎(肉)の睾丸を落として、慌てている。
可愛いと恐ろしいの共演か?
「お肉! どこお肉!?」
鼻をスンスンさせて慌てているな。
嗅いでもどこにも無いぞーい。
「お肉────!?」
ミルンが森の中へ突撃して行った。
俺はそれを見届けて、のんびりとボロ屋の中へ入り、ふぅと一息。
「よし、ちょっと確認」
ステータス、ステータスっと。
小々波 流 35歳
レベル 4→6UP(楽しい経験値効果)
能力
STA 11→13 INT 25
VIT 12→13 AGI 65→75
DEX 56→60
(村人男性平均100とした値)
スキル
・身体強化(これで貴方もマッスルバディに)
・楽しい経験値
・空間収納(大人の本の隠し場所として)
・基本魔法(一人暮らしのお供に)
・ー 判別不能 ー
称号
・逃げ惑うニート
・崖からダイブするニート
・ケモナー(仮免許)
・種を超えた奇跡(魔物特効)
目の前で見えている、ステータスの項目を、指で触ってみる。
スキル
・身体強化(これで貴方もマッスルバディに)
レベルアップ時DEX能力プラス値補正
レベルアップ時AGI能力値プラス補正
レベルアップ時上記能力値以外の成長を妨害
・楽しい経験値リシュエルのサプライズ
行動内容によりランダムにレベルアップ
レベルアップ時の効果音
レベルアップ時のリシュエルの楽しい一言
レベルアップ時の効果音
・空間収納(大人の本の隠し場所として)
容量制限無し
防腐効果 劣化軽減
効果範囲半径十メートル以内
手に持っている物は収納出来無い
己の物と認識している物のみ収納可
取り出す際は一覧を参照
(一覧)
ハイオークの肉 119キログラム
ハイオークの皮
ハイオークの魔石
ミルンの尻尾の毛
・基本魔法(一人暮らしのお供に)
小々波 流の固有魔法
全属性魔法中級まで使用可
使用回数制限無し
心の揺らぎにより範囲威力増減
INT 150より制御可
レベルアップ時INT成長を妨害
・ー 判別不能 ー
運---捻-----ー判別不能ー--
「うんうん…悲しくなってきた」
俺って、知力ステータス、絶対上がらないよね? 何なのこれ……悪意しか感じない。
気を紛らわせる為、ミルンが帰って来るまでに、濡れパンをマシパンにしておこう。
濡れたままだと、力が出ないからね。
リュックを持って外に出た。
川の近くに、ゴロゴロと落ちている石を拾い集め、円形に並べて、雑草、木の枝を中心に詰め込み、その上に平べったい丁度良い石を置けば、焼き場完成。
「……あとは火かぁ」
ステータスをチラッと見る。
・基本魔法(一人暮らしのお供に)
小々波 流の固有魔法
全属性魔法中級まで使用可
使用回数制限無し
心の揺らぎにより範囲威力増減
INT 150より制御可
レベルアップ時INT成長を妨害
固有魔法でありながら、属性魔法使い放題という、ステキチートなんだけどなぁ。
今一、心の揺らぎってのが理解出来ないし、INT150より制御可って……頭悪い子は駄目ってか? 絶望しか無いんだけど。
「小さなぁー声でぇー火ょー」
遊び心で試してみた。
────ポッ
「おっ、火種着いたじゃん。これならっ、ここにこうしてっと」
火が消えない様に、急いで草で覆い手で包み息を吹きかけ、火が強まったら、それを焼き場の枝と合体!!
パチパチッ────「暖かい……はぁ…」
石の上に濡れパンを置いてっと。
焦げない様に、焼き加減を見ながら、ぼーっと暖をとる。
「こんなんすんの、二十年ぶりぐらいか。大人になって、社畜になって、こんな暇、無かったからなぁ……」
ミルンが帰って来ない。
というか、睾丸落としたままじゃん。
「あの睾丸……どうしよ」




