3話 基本魔法とはなんぞや.3
「いやぁああああ覗きよぉおおおお!?」
「プギャアアアアアアアオヴァヴァ!!」
俺の心からの叫びと豚野郎(漢)の鳴き声がデュエットを奏で、辺りに心地よく響き渡る。
相対距離約2メートル。
おーっと豚野郎(漢)選手、ゆっくりと斧を両手に持ってフルスイングの構えですねー。これまで幾つもの獲物をそれで討ち取ってきたのでしょう。
自信のある────
ニチャァッ(涎)
────笑みがそれを物語っていますね。
えー対してこちらは足がすくんでぷるぷる震えて動けませんねーこれはまずい! まずいぞ流選手! このままでは上下別売パーツになってしまう!
豚野郎(漢)の斧が振られる。
あっマジで…これ────
スローモーション再生の様にゆっくりと。
────死ぬやん。
斧が俺の胴体を割る
「流──さん!!」
より先に背中からの万力で押されたかの様な衝撃により前方に飛ばされた。
前方にはスイング中の豚野郎(漢)
勿論前に飛ばされた俺は豚野郎に近づく。
お互いの距離が重なり合う瞬間、この世界で初めてとなる奇跡。
オークもとい豚野郎(漢)と、人種もとい小々波 流(男)との────
────種族の壁を超えた接吻が実現した────
ピンポンパンポーン(上がり調)
レベルが1上がりました(誰得乙!!!)
ピンポンパンポーン(下がり調)
※
「流さん大丈夫ですか!?」
ミルンが慌てて近づいて来る。
「何とか…生きてるよ…」
何か凄い衝撃で飛ばされて豚野郎の顔面(涎付き)が急に目の前に現れて衝突してそれからー。
それから、それから、それから、それから、それから、それから、それから、殺さねば!!
「ミルン、豚野郎(漢)はどうなった?」
「それならあそこで頭押さえてふらついてますよ! ほら、お肉です!」
豚野郎(漢)がこちらを睨み付けて叫けんで来る。
「オヴェ! プギャアアア! ゴギャアアア!」
ははっアイツも同じ事思ってるのかな。
俺はミルンに支えられながら何とか立ち上がり、何か生臭い息を吸い、今度はハッキリと、心を込めて唱えてみた。
「ウォオオオオオータアアアアアアア!!」
さぁ、お互い清らかな水で身も心も洗い流そう。今なら顔面ダイレクトでも嫌がらないからね。顔を真上に準備完了だよ。さぁ!
ブシュッ!!「プギャッ」
俺の少し前に直径一センチ程の小さな水球が現れ、豚野郎(漢)の脳天を貫き、血の雨を降らせた。
「は…?」
何が起こったのか理解出来ず、とりあえず呆然としているミルンの尻尾をモフっとして汚れた自分のマウスをウォッシュしてみた。
そう言えばミルンが豚野郎(漢)を…お肉って。