間話 ミユンの休暇.5
「という事で、お見合いは無しなの」
「あの三方は、お帰りになられました」
「何処からツッコミを入れて良いのかがっ、分からぬのであるっ」
ヘラクレスが頭を抱えてるの。
こっちが出した焼菓子を、無理矢理食べさせて、色々吐かせてから、帰らせただけなのに。
「これは……っ、陛下に文を送らなければっ」
「御安心下さいっ。既に送りましたので」
「最速の犬人便で、送ったの」
「何を書いて……送ったのだ?」
「ヘラクレス様と、お見合いをさせるなら、もっと清楚な御令嬢をと、お願いしました」
「脅し文句を、送っておいたの」
あっ、ヘラクレスの顔が、凄い事になってるの。眉間の皺が無くなって、無表情……。
「気にする事は無いの。ミユンの印で、封をしたから、女王は必ず目を通します」
「うむ……過ぎた事は、仕方あるまいな」
「そうそう。それに女王的には、ヘラクレスの機嫌を取っておかないと、味方が減っちゃうだろうしね」
「むぅ……」
今の貴族のパワーバランスは、パパとの接点を持つ、あの女王に傾いてるの。
ヘラクレスも、その一人。
しかも今後、ジアストール全土の食糧を賄える予定の、広大な土地の領主だから、影響力で言うと、パパより上になるの。
「それともヘラクレスは、あの厚化粧の貴族の娘達と、お見合いしたかった?」
「したくは無いのであるな」
「でしょっ? だからそんなに、難しく考えなくても、問題ないの」
「うんうん、ミユンの言う通りです」
「……うむ」
あのお顔は、納得してないお顔なの。
「もうそろそろ、ミユンは行くね。ドゥシャと晩御飯食べるし、また来るの」
「出来ればこの件も、ドゥシャ殿に伝えてくれると、有難いのだが……」
「りょっ。しっかり伝えとくの。念の為ミウも、気を抜かない様にね」
「分かってますっ! ヘラクレス様を狙う不届者には、全力で応戦するよっ!」
あの御令嬢達は帰ったけども、これで事が収まる様なら、馬鹿な争いは起きないの。
さてさて、相手はどう出るのか……。
「念の為、ファンガーデンに居る、ミユン親衛隊にも、声をかけておくの」
「うっ、うむ……大丈夫かね?」
「ミルンお姉ちゃんや、黒姫の親衛隊よりかは、比較的まともな影だから、大丈夫っ。それじゃあ帰ります」
「うむ、また来たまえ」
「またね、ミユン」
ヘラクレスとミウに手を振り、そのまま畑へと向かって、根っこ移動。あっと言う間に、ファンガーデンの芋畑へと、到着しました。
「んーとっ、先に影達に伝えなきゃだけど、何処にいるかなぁ」
大体は、ミユンの行動範囲内に、何名か隠れているらしいけど、畑の周囲には居ない。
領主館へ行けば、見つかるだろうか?
「行けば分かるのっ」
その前に、ちょっと寄り道。
居住区を抜け、大きな湖の柵に寄りかかり、世界樹をボーッと眺める。
「……気持ち良い風なのぉ」
風の精霊が、視界の中に入るけど、そこは敢えて無視をして、ボーッとする。
すると、徐々に辺りが暗くなり始め、光鉱石を使用した明かりが、繁華街に灯っていく。
「……良しっ、また来るね」
世界樹に手を振って、領主館へ歩き出す。
偶にはこうして、世界樹とお話ししないと、拗ねちゃうから大変です。
「むっ、ミユン殿では御座らぬか」
急に後ろから、声をかけられた。
この独特な口調は、一人しか居ないの。
「御座るなの。久々に見たっ」
「日々各所を、回っているで御座るからな」
「ふーん。今日はお休み?」
「左様に御座る。あの山の温泉は、疲れが取れるので御座るよ」
丁度良い時に会ったの。この御座るに、ヘラクレスのお見合いの事を、調べて貰おう。
御座るなら、他の影より信用出来るっ。
「ねえ御座る。休みが終わってからで良いから、少し調査をお願いしたいの」
「構わぬで御座るよ。どの様な事を、調査すれば良いので御座るか?」
「えっとね────」
領主館へ帰る最中、女王からの手紙と、あの御令嬢三人組の事を説明した。
「それは何とも、可笑しな話で御座る」
「でしょ? 女王の手紙とほぼ同時に来るなんて、仕組んでなきゃ出来ないの」
「そうで御座るな。日数を考えると、御披露目パーティー前に動かなければ、北の地までは行けぬで御座るし……」
このファンガーデンから、ハーベストラヴァーまでは、マッスルホースで三月もかかる距離が有り、女王の手紙が届く、タイミングを考えれば、色々とお粗末なの。
「調査をお願いして良い?」
「承ったで御座る。明日にでも、陛下とその周辺を、調べてみるで御座るよ」
「流石で御座る。ウザ子とは大違いなの」
「あの影は……お調子者に御座るからなぁ」
「それさえ無ければ、高評価なのにね」
戦闘は勿論だけど、あのウザ子の一番の能力は、諜報だと聞いた事が有る。
「そうだ。御座るも一緒に、ご飯食べる?」
「ご飯に御座るか?」
「うん。ドゥシャと一緒に、夕御飯を食べるの。美味しい白米と、お魚の煮物っ」
「……御相伴に預かるで御座る」
「りょっ」
また明日から、セーフアースの開拓。
そこそこ遊べたし、美味しいご飯を食べて、しっかりとお仕事をするの。
「パパが帰って来たら、驚かせるのっ」
次回 4/14 07:30頃更新予定!




