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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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間話 ミユンの休暇.3



 椅子に座って、のんびりと。

 農耕都市で栽培されている、茶葉の香りを愉しみながら、目を閉じて、ほっと一息。

 遠くからは、移住して来た子供達の、楽しげな声が聞こえ、心温まるとは、正にこの事。


「……こんなのギルドじゃ無いのっ!?」


「うわっ、急に声を上げて、どうしたんだい?」


 冒険者ギルドになのに、人っこ一人居らず、何故かカウンターテーブルが置かれており、ここは閑散とした、ただの喫茶店なのっ。


「何でこんな作りにしたのっ! 冒険者は? 禿げ散らかしたムキムキは? 依頼書を貼る掲示板すら無いなんてっ、可笑しいのっ!」


「えっと、依頼書ならそこに……」


「何でお品書きの隣にあるのっ!?」


「いやぁ……見易いかなぁって」


「じゃ無くてっ、何でお品書きが有るのっ!?」


「家内とお店を開く事が、夢だったから、丁度良いかなぁって……ねっ?」


「……ねっ? じゃ無いのおっ!?」


 公私混同の極みっ!?

 しくじったのっ……このギルドの中に来たのは、初めてだけど、しっかりと確認する様、ミウに忠告すべきだった。


「だってねぇ、ここまで来る冒険者達って、そこそこ腕が立つからさ。ここの依頼じゃあ、お金にならないんだよ」


「そんな事無いのっ。この付近だと、変な虫さんとか、ゴブとか、魔物討伐の依頼なら、腐る程有る筈っ」


「そうなんだけどね。場所が悪いんだよ」


「場所が悪い?」


『そいつぁ、北の国境だからさねっ』


 カウンターの奥から、野太い声が聞こえたと思ったら、ヘラクレス以上ある背丈の女性が、ドスッドスッと、足音を立てながら出て来た。


「副ギルド長は、相変わらず大きいのっ」


「ははっ! アタイはこれだけが、取り柄だからね。細かい作業は、旦那に任せっきりだし、楽をさせて貰ってるよ」


「何を言ってるんだい、マリーダ。こんな北の国境まで、着いて来てくれたんだから、君には感謝しかないよ。いつも有難うね」


「あっ、あんたは弱っちいんだからっ、何かあったら困るだろっ。それに、あんたの料理を食べれなくなるのは、アタイが困るからねっ」

 

「ははっ。それじゃあ今日の夕食は、君の好物のモッサルにしようか」


「っ……ありがと」


 ミユンの胃が、もたれる程に甘々なの。

 もしかしてだけど、ここのギルドに人が来ない理由って、コレを見せられるからでは……。


「ガリ細眼鏡とゴリマッチョの、愛の巣っ」


 無視して依頼書を見るの。

 

「ふわふわパンケーキに、ゴブリンの討伐。激辛モッサルに、薬草採取。ほっとミルクと、ワイバーンの鱗採取……混乱するのおっ!」


 ふわふわのパンケーキの横にっ、ゴブリンの討伐依頼を、載せないで欲しいのっ。


「どうしたんだい、ミユン様? あぁ、お茶のお代わりかな? 少しだけ待ってね」


「違うのっ! けど貰いますっ」


「旦那の淹れるお茶は、結構旨いからね。ついでにアタイのも、淹れとくれよ」


「いつもので良いかい?」


「任せるさね」


 ギルド長は、洗練された動きで、手際良くお茶を淹れるんだけど、どう見てもただの、喫茶店の店長にしか見えないの。

 ファンガーデンにある喫茶店よりも、こっちの方が静かだから、落ち着く……。


「落ち着いちゃ駄目な場所っ」


「こう言った冒険者ギルドが、一つぐらい有っても、良いんじゃ無いかい?」


「依頼をこなさなきゃ、土地代払えないよ?」


「それは大丈夫さね。アタイが適度に、依頼をこなしてるから、土地代程度払えるよ」


「副ギルド長なのに……現場に出るとかっ」


 見た目からして、元冒険者っぽいんだけど、それで良いのか……冒険者ギルドっ。

 

「この状況、ミウは知ってるの?」


「勿論さ」


「寧ろ、この状況を見て、喜んでたさね」


 確かに。ミウは元々、冒険者ギルドを設置するの、嫌がってたから、逆にこの状況は、ミウ的に嬉しい事なの。

 ヘラクレス的には、アウトだけど。


「ミウが良いなら、もう何も言わないの。この薬草採取の依頼って、何の薬草を探してるの? 来たついでに、手伝いますっ」


「それは助かるよ。その依頼だと、スタタポサ草の採取だね。中々手に入らない薬草だけど、本当に受けるのかい?」


「問題無いの。ミユンが何の精霊か、忘れてなあい? 薬草採取なら、楽々出来るの」


 スタタポサ草なんて、魔龍の川近くに行けば、山程生えてる雑草なの。


「そうだったね。それじゃあミユン様に、お願いしようかな。期限は無いから、ゆっくりして良いからね」


「直ぐに取ってくるの────」


 ギルドを出て畑へ向かい、根っこを呼び出して、ファンガーデンに到着したら、領主館の裏手に回って、雑草を抜き抜き。


「────採取して来たのっ」


「!? 早く無いかい?」


「直ぐって言ったでしょ。はい、スタタポサ草」


「はあーっ、凄いねぇ、精霊様は」


「これぐらい楽勝ですっ。ついでに、色んな草を抜いて来たから、確認してくださいなっ」


 ウサ鞄から、山程の雑草もとい、薬草を取り出して、ギルド長に見せてみる。


「ほぉーっ、これは凄い。これがあれば、依頼の幾つかを完了出来るねぇ」


「それは良かったの。討伐系は、日数が足りないから行けないけど、役に立ったでしょ?」


「勿論だとも。感謝するよ、ミユン様」


 と言っても、討伐系が残ってるから、どうにかして依頼を達成しないと、この都市の印象が悪くなるの。


「討伐系の依頼も出来る様に、ヘラクレスと相談しておくの。お茶ご馳走様でしたっ」


「お願いするね。いつでも待ってるよ」


「領主様に、宜しく言っといてくれさ」


「分かったの。それじゃあねっ」


 冒険者ギルドを出て、ヘラクレスの家へと向かう。もうそろそろ、アレが来るだろうから。

 強制お見合いの、ご到着っ。


「ヘラクレスの、慌てふためく顔を眺めながら、どんな御令嬢が来るのかを、確認するの」


 良いネタになりそうだったら、パパに教えて、ヘラクレスを弄り倒すっ。


「面白優先です」




 次回は、4月12日、朝7時半更新予定っ。

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