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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
六章 異世界とは古き民が居る世界

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13話 天然混じりの恐怖のドジっ子.8



 簡易小屋から、叫び声。

 お茶を「ずずっ」と飲みながら、簡易小屋を見上げると、一人のおっさんが、黒姫に吊られる様にして、降りて来た。


「ほれっ、シャキッとせぬかやっ」


「先程は、叫んでしまい、申し訳御座いません。私は、ペヘッホ・トメン・ワジルと申します。どうぞペヘッホと、お呼び下さい」


 茶髪をオールバックにして、薄ら禿げを隠さんとする、物腰柔らかなこの中年が、大国ノブストンの、雇われ大臣。

 アッジスノード王国に、戦争を吹っかけて来るような、ヤバい国の要職に就いている者とすれば、驚くべき低姿勢だろう。

 

「無事だったんですねーっ、大臣っ」


「近付くなばけものおおおおおおっ! わたっ、私はまだ死にたくないんだっ!!」


「女帝に向かって、不敬ですよーっ」


「騎士達を振り切ってっ、勝手に外に出るなぞっ、許されて無いだろっ!!」


 さっきの低姿勢はどこ行った?

 自国の女帝に対して、黒姫を盾にしながら、ギャンギャンと言い合ってるけど。


「えっと、ペヘッホさんや。取り敢えず、あそこで寝ている騎士達を、どうにかしてくれ」


「っ……寝ている? 死んで無いのですかっ!」


「俺が全員気絶させたから、死んで無いぞ」


「失礼っ。貴方様のお名前を、お聞きしても?」


「流だ。立場的には、アッジスノード王国の同盟者で、この国に仕返しに来た」


「……えっ? 今、何と……?」


「この砦から向こうは、アッジスノード王国の領地だから、宜しくな」


 ペヘッホ大臣が、固まった。と思ったら、直ぐに砦を見上げ、周囲を見渡し、気絶している騎士達を見て、また固まった。


「喉が渇きましたーっ。お手伝いのプランを、連れて来ますーっ」


 空気を読まずに、女帝が席を立ち、首都へと帰って行った。が、その途中にまた転けて、気絶している騎士達を踏み付け、蹴飛ばし、川へ落としと、歩く災害と化していた。


「……なあ、ペヘッホ大臣」


「はっ! あっ、貴方は敵なのですかっ!」


「敵だけど、お前を治療したのは、俺だからな。じゃ無くて、早く騎士達を助けないと、死んじゃうぞ?」


「なっ!? あっ、あの女帝またっ! 話は後で聞きましょうっ! 待てや糞餓鬼いいいいいいいいいいっ!!」


 ペヘッホ大臣も、行ってしまった。

 女帝を糞餓鬼呼ばわりしてるし、頭のてっぺんが薄くなってたから、苦労してるんだなぁ。

 

「なあ黒姫」


「何ぢゃ?」


「この大陸の奴等……濃い奴多くね?」


「エイドノア大陸と、比べてかのぅ?」


「そうそう」


「似たり寄ったりぢゃろ」


 そうだろうか……そうだな。

 筋肉村長とか、リティナとか、ルシィとか、影さん達とか、アルテラとか、他にも沢山、変な奴が居るからなぁ。


「俺みたいにマトモなのって、少ないよなぁ」


「流やっ……御主、今の言葉は本気かや?」


「何が?」


「一番濃いのは、御主なのぢゃっ!!」


「えっ?」


「えっ?」


「「えっ!?」」


 お互いを見つめ合う事、十数分。チャッフ国王と、デンバー副団長を連れたミルンが、帰って来たのだった。




「任務完了しましたっ!」


「お帰りミルン。ドールも、ありがとさん」


「了。容易い事です」


 迅号のハッチから、今にも死にそうな兵達に紛れ、何やら笑顔のチャッフ国王と、震えているデンバー副団長が、降りて来る。


「なあミルン。兵達はふらふらなのに、何であの二人は、無事なんだ?」


「わかんないっ」


「それは私が、説明致します」


「ドールが? そんじゃあ頼む」


「座席四つはベルトがある為、揺れても問題無いですが、荷物置き場には、食料保護の安全装置しか御座いません」


「……成程、もう分かった。説明有難うよ」


 ミルンの音速ブッパを体験して、体力をごっそりと、持って行かれたって事ね。


「やあやあ、凄いじゃないか、小々波君。こんな短時間に、ここまで作るだなんて」


「待ってたぞ、チャッフ国王。迅号の乗り心地はどうだった? 楽しめたか?」


「勿論、楽しめたとも。道中に、ノブストンの兵が居たけど、凄い高さまで飛んでいたよ」


 凄い高さまでって、轢いてないよな?

 ミルンをチラッと見ると、顔をプイっと逸らしたから、ワザとノブストンの兵達に向かって、突撃をかましたっぽい。


「来て早々悪いんだけど、もう少ししたら、ノブストンの女帝と、大臣が来るから、そこでどうするのかを、話し合ってくれ」


「へぇ、あの子が来るのかい」


「ああ。少し話をしたけど、チャッフ国王の言ってた通りの、ヤバい奴だったわ」


「そうだろう。あの子は、感情の一部が欠けている所為で、命を軽く見ているからね」


 それは、聞いた称号にも有ったな。

 正しく、欠落者。

 自らの両親を亡くしても、大臣を亡くしても、ケロッとしている、あの精神状態。


「それにしても、良く話が出来たね。あの子の性格上、大人しく話が出来るなんて事は、早々無い筈なんだけど」


「処刑せず置いといた奴が、あの女帝の、お気に入りだった様でね」


「……ほぅ、連れて来てたのかい?」


 チャッフ国王の穏やかな目に、若干の怒りが見て取れたので、念の為釘を刺しておく。


「円堂とペペルーノは、貴重な手札なんだ。言っておくが、俺の庇護下に有る内は、手を出す事を許さんからな」


「小々波君がそう言うなら、今は何もしないよ。兵達にも手は出さぬ様、指示しておこう」


「そうしてくれ」


 少し離れた場所では、デンバー副団長と兵士達が、野営の為の天幕を作っており、ミルンはいつの間にか、簡易小屋へと走っていた。


「元気だなぁ……」


「ワンブルの子であれば、普通だろう?」


「そうかい。そんじゃあ、ここはデンバー副団長に任せて、会談の準備をしますかね」




 次回は、四月七日朝七時半更新っ!

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