13話 天然混じりの恐怖のドジっ子.6
「戻りましたーっ。ほらっ、大臣も連れて来たんだから、うるちゃんを返してーっ」
「だっ、じゅげ……で……」
「陛下をお止めしろおおおおおおっ!」
「「「うおおおおおおおおおっ!!」」」
恐怖映像。自国の大臣の首根っこを掴み、ポキッとしかけてる女帝様と、自国の女帝に襲いかかる、屈強な騎士達。
「うわぁ……降りたくねぇ……」
例の如く、門の上から、お送りします。
何をやねん。
だってね、ちゃんと出迎えるにしても、あの近衛っぽい騎士達が邪魔で、降りたら間違い無く、巻き込まれるだろ。
「陛下っ! どうか手をお放し下さいっ!」
「このままですとっ、ペヘッホ大臣が死んでしまわれますっ! 陛下っ!」
「放されよ陛下ああああああっ!」
「押さないで下さいよーっ、あっ────」
「────嫌だああああああっ!?」
「デルボが巻き込まれたぞおおおっ! 救護班急げえええっ! 死なせるなああああああっ!」
あの女を押さえ込もうとした、一人の騎士様が、転けそうになった女に、腕を掴まれて、そのまま勢い良く、川へとグッバイ。
「……地面に落ちたら、死ぬんじゃね?」
しかも、ワザとでは無く、転けそうになったから、反射的に騎士を掴み、持ち前の馬鹿力で、投げてしまったかの様に見える。
「何も無い所でも、転けてたよなぁ。もしかしてだけど、ドジなだけなのか?」
「変態さーんっ、うるちゃん返してーっ。大臣なら、ちゃんとここに居ますよーっ」
「だーかーらーっ、変態言うなやゴラァっ!!」
「うるちゃああああああんっ!」
何だろう……天上天下唯我独尊我が道を行く的な、人の話を聞かないドジっ子?
「そっ、そこの貴様あああっ! 陛下を見下ろすとは何事かああああああっ!」
「降りてこおおおおおいっ!」
「大臣を助けろおおおおおおっ!」
ほらほら、こっちに飛び火して来たじゃん。
火消しぐらい、自分でやれっての。
「ほい強めの"威圧"っと……」
はいっ、一秒で静かになりました。
「あれっ? 皆さんどうしたんですかーっ」
「思った通り、お前には効かないか」
「何がですかーっ」
門の上から飛び降りての、初対面。
こうして見ると、背は低くて顔付きも幼く、十歳と言うのも、間違いでは無いのだろう。
「先ずは、その右手に握っている大臣を、この椅子に座らせなさいな」
空間収納から、椅子三脚とテーブルを出し、交渉の場を用意する。
「何処から出したんですかっ!?」
「そんなもん、スキルに決まってんだろ。早くその大臣を、座らせろっての」
「むぅ……ほら大臣っ! 早く座りなさーいっ!」
「へぶぅっ!?」
右手で掴んでいた大臣を、勢い良く、椅子にバキィッと叩き付け、粉々になりました。
大臣が粉々に、なった訳じゃないぞ。
「椅子壊してんじゃねえよっ。お前それ、絶対に弁償金を、支払って貰うからな」
「だっ、大臣が壊したからっ、私は関係ありませんっ! 請求は大臣にお願いしますーっ!」
「その大臣様が、失神してんだろ……って、脚ポッキリ折れてんじゃんっ!?」
椅子に座った時と、高さが同じ状態です。
昔のギャグ漫画で、骨が飛び出て痛そうな描写があったけど、生で見るとグロいわぁ。
「お前これ、どうすんの? 治療出来るのか?」
「……無理ですーっ」
「何その諦めた感。この男、大臣なんだよな?」
「無理なモノは無理ですし、大臣が亡くなるのなんて、珍しい事じゃ無いですよーっ」
その眼差しには、一点の曇りも無く、自分の行いに、疑問を感じていない様だ。
「ボソッ(チャッフ国王が言っていた、暴力の権化とか、マジでそのまんまじゃん……)」
悪意の欠片を微塵も感じず、話す分には、少し変な子供。しかし、そこに純粋な力を合わせると、暴力の権化の完成です。
「……お前はそこに座っていろ」
「うるちゃんは?」
「良いから座ってろっ!」
「怒鳴らないで下さーいっ。お耳がキンキンするんですからぁーっ」
それでもちゃんと座る辺り、皿くれお化けよりかは、マシなのだろうか?
失神しながら震えている、今にも死にそうな大臣に近付き、空間収納から世界樹の葉の薬を取り出すと、ゆっくりと飲ませる。
「薬の代金も、請求するからな」
「それって、お薬なんですかーっ? うわっ! 大臣が光ってますーっ!?」
「うげぇ……折れた脚が、逆再生してんじゃん」
世界樹の葉を使った、回復薬の原液だから、やっぱ効き目が凄いわ。
「傷も塞がったし、少し寝かせとくか。おーいっ! 黒姫さんやーいっ!」
『何ぢゃーっ!』
「このおっさんをっ! 簡易小屋の中でーっ! 寝かしといてくれーっ!」
『今そっちに行くのぢゃーっ!』
そうして、パタパタと飛んで来た黒姫に、失神中のおっさんを預け、「ふぅ……」と一息吐いて、椅子に座った。
「急に静かだな。どうした?」
「うぅっ、今の子供は何ですかーっ?」
「黒姫の事か?」
「生まれて初めて、ぶるぅって、なりましたーっ。怖かったですよーっ」
本能的に、黒姫の強さを感じ取った? 天然暴力娘の上に、野生児も混じってんの?
「取り敢えず、お前はその椅子から、立ち上がるな。大臣が起き次第、色々と話をするから、大人しくしておけよ」
「うるちゃんに会わせてーっ!」
「それも含めた話をっ、大臣とする予定だったのにっ、潰したのお前だろぉがっ!?」
「うぅ……うるちゃぁん……」
この女帝、何でそんなにも、円堂に固執しているのかねぇ。大臣が起きる前に、少しばかり聞いておくか。
次回は、4/5の朝7:30頃更新予定っ!




